ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-640-CP18-1 突然の筋硬直により呼吸停止し挿管・換気不能となり、輪状甲状靭帯切開にて救命しえた破傷風の1 例高知赤十字病院 救命救急センター 救急部山崎 浩史、島津 友一、本多 康人、泉 江利子、藤本 枝里、安岡 やよい、廣田 誠二、原 真也、西山 謹吾破傷風は開口障害、顎から頚部へのこわばり、痙攣性の呼吸障害等を来し、確実な気道確保が必要となることが少なくない。しかし、意識・気道・呼吸状態が安定している場合の破傷風の挿管・気管切開適応については定まった見解がなく、挿管・気管切開を行うべきか迷うことも多い。今回、入院加療中に突然筋硬直から呼吸停止し、輪状甲状靭帯切開を行い救命しえた症例を報告する。【症例】59歳男性、BMI33と高度肥満あり、糖尿病、高血圧で加療中。ボルトが足に刺さり、その2週間後腰背部痛、嚥下困難が出現し他院受診、後弓反張も認めため破傷風疑いにて当院紹介となる。来院時意識清明、開口1.5横指だが呼吸状態は安定していた。病状経過より破傷風と診断、創傷処置およびテタノブリン、抗生剤投与を開始しICU入院とした。安静のためデクスメデトミジンにて鎮静を開始、後頚部~背部痛が強いためフェンタニルおよびプロポフォール投与し自制内に改善していた。高度肥満もあったため、直ちに確実な気道確保ができる準備を整え経過をみた。入院3日目、病状安定し開口も1.5横指可能であったが、清拭直後突然全身硬直・呼吸停止し急激に酸素化悪化、すぐに経口気管挿管を試みるが開口不可能で、用手換気も不可能でこの間に意識消失したため、直ちに輪状甲状靭帯切開を施行し、酸素化・循環改善、意識も指示に応じるようになった。入院67日後呼吸器離脱、102日後リハビリ目的に転院となった。【考察と結語】破傷風は開口障害まで出現した場合、軽微な刺激で呼吸停止となる事が想定されるが、気管切開の絶対的基準は文献を探したところ見当たらない。今後気管切開の適応につき明らかにする必要がある。ポスターCP 18 気道・呼吸・呼吸管理③ 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP18-2 長時間腹臥位術後の舌浮腫が原因で抜管後に上気道閉塞を来し、経皮的輪状甲状膜穿刺を施行した1 例久留米大学病院 集中治療部新山 修平、佐藤 晃、有永 康一、坂本 照夫57 歳、女性。身長146 cm、体重31 kg。頭蓋底陥入症、キアリ奇形にて脳幹圧迫症状が徐々に進行しADL低下傾向にあったため、大後頭孔減圧術、小脳扁桃切除術、頭蓋頸椎後方固定術が予定された。全身麻酔導入時は特に問題なく気管挿管施行された。術中体位は腹臥位で、手術は予定通り施行された。全身麻酔時間12時間38分、手術時間10時間47分、総出血量2,135 g、総輸液量3,650ml、総輸血量2,380 ml、総尿量2,400 mlであった。術後は気管挿管のままICU入室となった。術翌日覚醒状態は特に問題なかった。後屈制限が予想されたため抜管後の気道確保困難に対する準備を行い、抜管を試みたところ、直後より奇異性胸郭運動と口唇チアノーゼが出現した。バックバルブマスクによる換気を試みたが、後屈制限、開口障害のため十分な換気が得られず、また経口エアウェイ挿入困難、経口気管挿管困難であったため、直ちに経皮的輪状甲状靭帯穿刺法を施行し、一旦気道を開通させたのちに経口気管挿管を施行した。一時的に心拍数20/分まで低下したたが、心停止には至らなかった。今回の上気道閉塞の原因は舌浮腫が原因と考えられた。長時間の腹臥位術後の患者の抜管は、舌浮腫による上気道閉塞も念頭に慎重に抜管のタイミングと気道確保困難に対する準備が必要である。とくに気道確保困難症例では躊躇することなく、経皮的輪状甲状靭帯穿刺法などの外科的気道確保に速やかに移行できるようoff the job trainingを行い習熟することが重要と考えられた。CP18-3 当科における輪状甲状靭帯切開術の検討大阪市立大学 大学院医学研究科 救急医学寺田 貴史、武貞 博治、森岡 貴勢、山本 朋納、内田 健一郎、加賀 慎一郎、晋山 直樹、西村 哲郎、山本 啓雅、溝端 康光【目的】輪状甲状靭帯切開はマスク換気不能・気管挿管不能(Cannot Ventilate Cannot Intubate : CVCI)状況における緊急気道確保の最終手段であるが、実際に必要とする状況に遭遇する頻度は少なく、技術的困難性よりも、必要であるという状況判断に困難さを認めることがある。当科では気道緊急・困難気道に対するプロトコールを策定し、適応判断の基準としている。今回当科での輪状甲状靭帯切開術につき後方視的に検討したので報告する。【方法】過去5 年間に当センターに入院し、緊急気道確保として輪状甲状靭帯切開を施行した症例を対象に、診療録より患者背景、搬送理由、気道状況や輪状甲状靭帯切開を施行した理由、転帰などを抽出した。【結果】対象期間に当科にて輪状甲状靭帯切開を施行した症例は11例であった。8例が男性、平均年齢51 歳、搬送理由は外傷8例(うち来院時心肺停止7 例)、疾病3 例(来院時心肺停止1 例)であった。切開前に試みた気管挿管回数は0回5 例、1回2例、2回1例、3回以上2例で、輪状甲状靭帯穿刺を先行したものが2例あった。CVCIの原因となった上気道の状態は口腔内出血持続4例、下顎骨骨折2例、吐物による閉塞2例などであった。1例では換気は可能なものの気管挿管不能のため輪状甲状靭帯切開を施行した。9例は輪状甲状靭帯切開後施行にて換気可能となったが、切開施行するも換気不能であった例が2 例あった。1例は吐物による下気道閉塞によるもので、残り1 例は肥満のため切開施行もチューブ挿入不能によるものであった。【結論】救急搬送され、気道確保を要する患者では、外傷症例を中心に輪状甲状靭帯切開を要する症例に遭遇している。迅速に適応を判断し、気道確保を施行しており、必要な状況の予測と準備が重要であると考えられた。一部には上気道以外の問題による換気困難症例や体格によりチューブ挿入困難であった症例も経験しており、留意が必要である。