ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-638-CP17-1 2015年における名古屋大学救急・集中治療部の救急・内科系集中治療室の分離菌の解析1)名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野、2)名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部高谷 悠大1)、八木 哲也2)、東 倫子1)、稲葉 正人1)、井口 光孝2)、松田 直之1)【はじめに】名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野は,2011年5 月に当講座の主治医制によるclosed systemとしてEmergency and Medical ICU(EMICU)の管理を開始した。当講座は,敗血症など全身性炎症の管理バンドルを定めており,その中で定期的培養検査や各担当医によるアンチバイオグラムの確認を一つの管理ブランチとしている。2015 年上半期のEMICUにおける検出菌の解析結果を報告する。【対象と方法】2015 年1 月1 日~6 月30日の半年間において,EMICUで提出された検体から菌が検出された66名,および薬剤感受性が測定された115 株の菌種を対象とした。期間内に同一患者から同一菌株を複数回検出している場合は,初回検出菌で判定した。 また,薬剤感受性は原則としてCLSI M100-S24で判定した。【結果】分離された菌の内訳は多い順に,Staphylococcus aureus 19株(MSSA 9株,MRSA 10株), Coaglase-negative staphylococci(CNS) 18株(MS-CNS4 株,MR-CNS 14株),Enterococcus 属 15 株(E. faecalis 9 株,E. faecium 5 株,VRE 1 株),Escherichia coli 11 株(ESBL産生株 3株),Enterobacter属 8株(E. aerogenes 3株,E. cloacae 5株),Klebsiella属6株(K. pneumoniae 4株,K. oxytoca 2株)だった。ESBL産生株はE. coliの27.3%(3株),K. oxytocaの16.7%(1株)に認めたが,いずれもカルバペネム系薬に対する感受性は良好だった。【結語】我々は耐性菌対策として,接触感染予防を感染症管理バンドルの核として徹底しており,年2回のクリーンハンドキャンペーンを展開している。今後も,EMICU内での菌の分離状況と薬剤感受性変化の動向を追跡し,診療に役立てる指針としている。ポスターCP 17 感染・感染対策② 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP17-2 胸部心臓血管手術における鼻腔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)保菌と手術部位感染(SSI)の関連1)香川大学 医学部 麻酔学講座、2)坂出市立病院澤登 慶治1)、植村 直哉2)、岡部 悠吾1)、別宮 小由理1)、浅賀 健彦1)、白神 豪太郎1)【背景】胸部心臓血管手術において、黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌は手術部位感染や創外感染の危険因子とされている。当院では胸部心臓血管手術を受ける患者が入院する循環器病棟で2008 年から入院時の監視培養を、2009 年から術後ICU入室予定患者の麻酔導入直後(術直前)の監視培養をルチンで行っている。今回、これら術前の監視培養結果とSSI、創外感染について調査した。【方法】2009年以降2013年末までに、入院時と術直前の監視培養を行っていて、術前から明らかな感染症がない予定胸部心臓血管手術を受けた患者を対象とした。入院時と術直前の監視培養結果を鼻腔MRSA 保菌の有無で2 群に分け、SSI、創外感染の有無と関連があるか観察研究を行った。カイ二乗検定を用い、有意水準を0.05とした。【結果】対象は278名、入院時の鼻腔MRSA保菌者は14 名だった。このうち13 名にムピロシン軟膏による術前除菌が試みられ、術直前で鼻腔MRSA 保菌者は4 名に減少した。入院時MRSA非保菌者のうちSSI発症者は12名(4.5%)、保菌者のうちSSI発症は2名(14.3%)で有意差はなかった。入院時MRSA非保菌者のうち創外感染発症者は55名(20.8%)、保菌者のうち創外感染発症者は4名(28.6%)で有意差はなかった。【考察】SSI、創外感染とも発症率はMRSA 保菌者の方が高かったが現時点では有意な差はなかった。ムピロシン軟膏による術前除菌がSSIや創外感染予防に有効であった可能性がある。しかしムピロシン軟膏のSSI 予防効果を疑問視する意見や耐性菌の出現を危惧する意見がある。また今後症例数が増えると有意差が出る可能性があり、検討を続ける必要がある。【結語】入院時の鼻腔MRSA保菌の有無は、胸部心臓血管手術SSI と創外感染の発症に関連しなかった。CP17-3 広域抗菌薬の使用とStenotrophomonas maltophiliaに関する検討淀川キリスト教病院 救急・集中治療科藤本 善大、則本 和伸、山本 幸治、長田 俊彦、的井 愛紗、原 悠也、堀 雅俊、三木 豊和【背景】ICU においてStenotrophomonas maltophilia(以下S. maltophilia)は広域抗菌薬に耐性を示す感染症の起炎菌として重要である。一般にS. maltophiliaはカルバペネム系薬に自然耐性を示すとされるが、ピペラシリン/ タゾバクタム(以下PIPC/TAZ)には感受性を保つものが多いとされる。【目的】PIPC/TAZの使用とカルバペネム系薬の使用でS. maltophiliaの培養の検出率に差があるかを検討する。【対象と方法】2012年7 月から2015年7月までに淀川キリスト教病院ICU に入室した18歳以上の感染症患者でPIPC/TAZもしくはカルバペネム系薬を使用し、これらの抗菌薬使用後に喀痰, 尿, 腹水等の培養検査を提出した症例のうち、術後感染予防目的の抗菌薬投与、重症急性膵炎における感染予防のための抗菌薬使用、間質性肺炎等の感染症が疑われない症例、PIPC/TAZ とカルバペネム系薬の両方を使用した症例を除外した170 例を対象とした。対象をPIPC/TAZ を使用した群(以下PIPC/TAZ群)とカルバペネム系薬を使用した群(以下カルバペネム群)との2群に分け、年齢,性別,広域抗菌薬を投与した原疾患,培養検査からのS. maltophiliaの検出率等について診療録に基づき後方視的に検討した。【結果】対象の平均年齢は71 歳であった。抗菌薬を投与した原疾患は細菌性肺炎が78例(46%)、尿路感染症が34例(20%)、腹腔内感染症が44例(26%)等であった。170例中18 例からS. maltophilia を検出した。PIPC/TAZ 群でS. maltophilia を検出した症例は46 例中1 例であるのに対し、カルバペネム群では124 例中17 例であった(2.17% vs 13.7%;p < 0.05)。【結語】PIPC/TAZ はカルバペネム系薬と比較し、S. maltophiliaの培養での検出率が低下した。