ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-633-CP14-4 呼吸器外科術後の積極的治療中に集中治療室で死亡した4 症例に対する終末期医療の検討1)大阪医科大学麻酔科学教室、2)大阪医科大学呼吸器外科、3)大阪医科大学附属病院集中治療部出口 志保1)、駒澤 伸泰1)、日下 裕介1)、市橋 良夫2)、佐藤 澄2)、花岡 伸治2)、梅垣 修3)、南 敏明1)当院ICUにおける呼吸器外科術後死亡症例の現状把握と問題点を明らかにするために、症例について後方視的に検討した。【対象】2010年から2014年の5 年間で、ICUで終末期を迎えた呼吸器外科術後4症例。【方法】入室理由、入室時の状態、治療内容、積極的治療中止の有無、死亡するまでの経緯を診療録より後方視的に検討した。【結果】4症例全てが気管挿管され鎮静下に人工呼吸器管理となった。4 症例中3 症例はカテコラミンを使用し、4 例中2 症例はVV-ECLS を使用していた。4 症例中1 症例のみフェンタニルによる鎮痛が行われていた。ICU 入室から死亡までの期間は平均21 日であった。ICU 入室時に家族に対して危険な状態であることを説明された3症例では、患者死亡時に家族の動揺を認めなかったが、説明されなかった1症例では患者死亡時に家族の動揺を認めた。【考察】救急・集中治療における終末期医療に関するガイドラインでは、患者や家族に対して終末期と判断した際の対応として、1:患者病状が絶対的予後不良、2:治療継続で救命の見込みが全くない、3:これ以上の措置は患者にとって最善ではない、却って患者の尊厳を損なう可能性があることを説明し、理解を得ること、とある。今回の検討において、ICU入室時の説明内容が患者死亡時の家族動揺に関連する可能性が示唆された。また、入室時の状態に関わらず、患者本人への説明や鎮痛などの苦痛緩和処置の必要性も今後、検討する必要があると考える。【結語】呼吸器外科術後の積極的治療中に集中治療室で死亡した4 症例に対する終末期医療の検討を行った。CP14-5 終末期における決定に関するアンケート調査済生会山口総合病院 麻酔科・集中治療部田村 高志、柴崎 誠一、工藤 裕子 終末期における決定では、臨床倫理上、患者の自己決定を尊重することは当然であるが、実際の決定において自己決定がどのように扱われているのかを調査した。【対象と方法】 当院の医師47名を対象に、終末期において自己決定がどのように扱われているか、書面による質問形式で調査した。【結果】 回収率は78.7%であった。全員が医療上の決定に関して患者の自己決定を尊重することは、倫理上重要であると考えていたが、73.0%が実際の終末期における決定に際し、自己決定を尊重することは困難であると感じていた。その理由に、事前に明確なリビング・ウィル等を表明しているケースが少ないこと、終末期となった時点での意思確認が困難なこと、患者の意思よりも家族の希望が優先される場合もあることを7割以上の人が挙げた。【考察】 終末期において逡巡なく決定できるケースは少ない。この度の調査で、全員が自己決定を尊重することは重要であると考えていたが、7 割以上の医師が実際の終末期の決定に際し、自己決定を尊重することは困難であると感じていた。Torke の研究でも、自己決定が最優先の因子となると考える医師は30%であり、その理由として医師が患者の最善の利益を考慮する与益の原則(beneficence)を上位に置くからだと考察されている。しかし本研究では、与益の原則を理由に挙げた医師はそれほど多くはなかった。一方、終末期の決定に家族の希望を考慮せずにはいられない日本の家族関係の持つ特殊性が明示された。しかし患者自身が家族の希望を叶えてあげたいという希望を持っている場合もあり、家族の希望を考慮することと患者の意思や利益が必ずしも対立するわけではないという見方もできる。 臨床倫理ではあくまでも自己決定の尊重が重視されるが、現実的にはやや違った傾向が認められた。そうであれば、臨床倫理教育においても現状に即した内容を考慮する余地があるものと考える。CP14-6 外国籍無保険の劇症肝炎患者の集中治療の経験松戸市立病院 救命救急センター庄古 知久、千田 篤、遠藤 英樹、漆畑 直アジア某国在住の34歳男性。自国病院にて3月にB型肝炎と診断され、11月から腹部膨満感と黄疸出現し2週間入院。12月末に親戚1名同伴し短期就労ビザで来日。来日当日に市内2次救急当番病院を受診。亜急性型劇症肝炎の疑いにて当院救命救急センターに紹介となった。来院時血圧109/70mmHg 、JCS 1、日本語理解不能。全身の黄染著明、腹部膨満あり。血液データはPlt 8.5x104/μ l, PT-INR 1.92, T-Bil 27.1mg/dl, AST 424U/l, ALT 106U/l, HBsAg陽性, HBeAg 陽性, HBeAb 陽性, IgM-HBc Ab 陽性, IgG-HBcAb陽性。患者は無保険であったが帰国は頑なに拒否し、日本での治療を強く希望した。ICUに入室しB型肝炎ウイルス治療としてエンテカビルの投与、肝性脳症に対してアミノレバンの投与、FFPによる補充をおこなった。人工肝補助療法として血液透析ろ過および血漿交換が必要なことを説明。1日40万円の治療費用が追加でかかる事に家族が同意し、第6病日より3日間、計2クール実施した。その後も肝機能は改善せず、救命のための選択肢として、約2千万円の費用がかかる大学病院での生体肝移植を説明。日本在住の実兄、来日した妻にドナーの意志を確認したが移植治療は希望せず。第31病日に肝不全で死亡された。入院費用は保険診療でかかる公定医療費のみ支払いとなった。短期就労ビザの外国人は国民健康保険を取得できず、個人で任意保険に加入していない限り日本での医療費は全額自己負担となる。医事課と綿密な連絡を取り治療内容を決定していった。無保険の重症外国人患者の治療に関しては様々な問題をはらんでいる。今回の集中治療の選択の経過を報告し、今後の同様のケースに対する対応を考察する。