ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-629-CP12-4 体外式膜型人工肺(ECMO)が奏功した急性薬物中毒に伴う急性呼吸促迫症候群(ARDS)の1 例1)弘前大学 大学院 医学研究科 救急・災害医学講座、2)弘前大学 医学部附属病院 卒後臨床研修センター矢口 慎也1)、小田桐 有沙2)、斎藤 淳一1)、伊藤 勝博1)、山村 仁1)【はじめに】ECMOは従来の治療では救命困難な重症呼吸不全や循環不全のうち, 可逆性の病態に適応され, ARDS に対する有効性が報告されている。今回, 急性薬物中毒に対しECMOを導入し救命できた1例を経験したので報告する。【症例】患者:22歳, 男性。経過:自殺目的に塩素系洗剤と塩酸系洗剤を混合して口腔内に含有, 発生したガスを吸引し受傷。前医搬送時JCS30, 肺水腫を認め,気管挿管後に当院紹介となった。初診時, 鎮静下でJCS10, 呼吸数 40 /min, 血圧 90/50 mmHg, 脈拍 120 /min, 体温 37.9℃。動脈血ガス分析で低酸素血症(P/F比100),混合性アシドーシス, 高乳酸血症を認めた。多量の泡沫状痰を認め, 胸部X線写真は両側肺に広汎な浸潤影を認めた。洗剤誤嚥・塩素ガス吸入によるARDS および循環血液量減少性ショックと診断し, 輸液負荷, ノルアドレナリン投与, 人工呼吸器管理とした。第2病日にはP/F比66と酸素化が増悪したため, V-V ECMOを導入した。その後、循環安定し,第4 病日にノルアドレナリンを中止。酸素化は改善したが, 肺のコンプライアンスは不良だった。第6 病日よりrefilling を認め,第7病日に酸素化(P/F比310), 一回換気量, 胸部X線写真の浸潤影も改善し,第8病日にECMOを離脱。第9病日に抜管したがMRSAによる VAPを併発。第16病日には全身状態改善し, 精神科へ転科。第48病日独歩退院となった。【結語】急性薬物中毒に伴うARDS にECMO を導入し救命できた症例を経験した。高濃度の塩素ガス吸入に伴う肺障害による呼吸不全は可逆性であり、ECMO を用いた集学的治療を考慮すべきである。CP12-5 4 週の経過で回復したアセトアミノフェン中毒による急性肝不全の一例東京都立 墨東病院 救命救急センター横山 太郎、明石 暁子、宮崎 紀樹、湯川 高寛、山岸 利暢、重城 美央子、柏浦 正広、田邉 孝大、杉山 和宏、濱邊 祐一【はじめに】アセトアミノフェン中毒は、一般に服薬後96 時間程度で肝障害は改善し肝不全に至っても救命例は遅くとも2-3 週の経過で肝機能は完全に回復するとされる。今回肝機能の正常化まで4週にわたる集中治療を要した症例を経験したので文献的考察を交えて報告する。【症例】39歳、女性。3月某日、精神科処方薬と共にカフコデN 配合錠180錠、ルルゴールド40 錠(計アセトアミノフェン22g)を自殺目的に服薬。服薬4日後、意識レベルの改善がなく救命センター搬送となった。来院時IV度の肝性脳症、PT < 5%、直接/ 総ビリルビン濃度比 0.73 等のデータが得られ、肝移植適応ガイド ライン(2008 年厚生労働省)スコア3 点の重症急性肝不全と診断した。以後血漿交換や血液透析など集学的な治療や出血、感染などの合併症への対処を続け、入院後4週経過したところでPT80%程度に回復した。【考察】本例のように肝不全に至り、肝移植の適応とならない場合は集中治療を継続するが、一般に考えられるより長期の経過で回復を示す症例が存在し、重症度によらず肝障害が可逆的である可能性が示唆された。【結語】アセトアミノフェン中毒による急性肝不全は、重症度や罹病期間を問わず肝機能正常化が図られる可能性がある。CP12-6 遅発性に症状が出現し、服毒告知がないため診断困難であったが良好な経過を得たフェニトロチオン中毒の一例刈谷豊田総合病院 麻酔科・救急集中治療部後藤 真也、三浦 政直、辻 達也、辻 菜々子、渡辺 文雄、岡本 泰明、鈴木 宏康、井口 広靖、黒田 幸恵、中村 不二雄【症例】 70歳女性、既往:糖尿病。2日前からの倦怠感、下痢にて受診。入院時現症:GCS13点、脈拍80/分、血圧100/50mmHg、呼吸回数40/ 回、瞳孔3/3mm、両側対光反射あり。神経学的異常なく、頭部CT では異常認めず、胃内容に有機リン特有の刺激臭もなかった。白血球数、エンドトキシン値の上昇がみられた。感染性腸炎、それに伴う敗血症、下痢、高度脱水に対する全身管理目的でICU 入室となった。入室後も多量の下痢・頻呼吸は改善せず、意識レベルが緩徐に低下し、縮瞳・流涎が出現した。第5病日にはGCS3点、呼吸抑制・循環障害が高度となったため、人工呼吸管理とした。頭部MRIでは症状を支持する異常所見を認めなかった。遷延性意識障害の鑑別を勧めていたところ、第14病日に血中Ch-E 1U/l 以下(基準値:214~466)が確認され、ACh 作動性クリーゼと診断、鑑別のため農薬検査を提出した。第17病日より呼吸、筋緊張は徐々に改善し、発症から1ヶ月以上を経て人工呼吸器を離脱し、神経学的障害なく意識は回復した。後日、農薬フェニトロチオンが検出されたが、患者は服毒を否定した。リハビリ継続し、入院より4か月で独歩退院した。【考察】 本例は数日の経過で意識障害が進行し、呼吸抑制が出現した。服毒告知がなく、胃内容にも異常がなかったため、有機リン中毒を診断するのに時間を要した。低ChE血症の診断の遅れもあり、有機リン中毒の特異的治療や血液浄化を行わなかったが、呼吸・循環障害に治療介入し、良好な経過を得た。 また、本例は意識障害、自律神経症状の遷延から多量のフェニトロチオンを服用したと思われる。にもかかわらず、中毒症状の発現は遅延し、軽快傾向に転じるまで時間を要した。急性中毒遅延の機序はいくつか考えられるため、文献的考察を含めて報告する。