ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-623-CP9-4 急性心不全を伴う外傷性大動脈弁逆流症の1 例天理よろづ相談所病院 心臓血管外科恩賀 陽平、山中 一朗、仁科 健、廣瀬 圭一、水野 明宏、吉田 幸代、矢田 匡【症例】37歳男性。生来健康で健診で心電図異常や心雑音の指摘なし。受診10日前より仕事中の息切れあり。徐々に症状の増悪を認め、5日前より夜間起座呼吸を認め、当院受診。胸部レントゲンで著明な心拡大、肺うっ血あり、経胸壁心エコーにて重症大動脈弁逆流症(AR)を認め精査加療目的に入院となる。精査ではForrester4の重症心不全および経食道心エコーでは左冠尖の逸脱によるARを認めた。利尿剤にて心不全症状は軽快し、同時に感染性心内膜炎、大動脈炎、先天性奇形等の検索が行われたが、いずれも陰性であり、弁置換術の適応の判断にて手術加療の方針となった。【手術】術中所見として左冠動脈入口部直上から右冠動脈入口部直上にかけて約三分の一周に限局性の解離があり、内膜がずれ落ちていた。そのため左冠尖が落ち込み、逆流を生じていたと考えられた。その後4-0 フェルト付にて5 針で内膜を吊り上げ再逢着したのち、機械弁25mm にて弁置換術を施行した。術後経過は良好であり、軽快退院となった。術後胸部打撲の既往を聞くと、4か月ほど前、運転中に時速約80kmで追突事故を起こしたが、症状なく、病院未受診であった。【考察】胸部の非穿通性鈍的外傷によるAR は稀であり、本邦でも症例報告が散見されるのみである。また弁尖のtearに伴うAR より本症例のような交連部のdetachment に伴う損傷形態は稀とされ、症状も外傷の数年後に心不全症状で診断される場合がある。治療は弁置換術と自己弁を温存した弁形成術があるが、本症例は若年性であり、抗凝固療法が不要な弁形成術も考慮されたが、交連部のdetachment が高度であったこと、外傷に伴う形態異常であることは想定しておらず、弁形成の適応についての術前考察が不十分であったことから機械弁による弁置換術の方針となった。【結語】若年性の急性心不全症状を伴う大動脈弁逆流症の原因については鈍的外傷も念頭に起き、治療方針を決定する必要があると考えられた。CP9-5 Bartonellaによる血液培養陰性感染性心内膜炎の1 例天理よろづ相談所病院 心臓血管外科矢田 匡、山中 一朗、仁科 健、廣瀬 圭一、水野 明宏、吉田 幸代、恩賀 陽平症例は74 歳男性。38 度以上の発熱を1 年3ヶ月前から1ヶ月に1、2 度認め、4ヶ月前からは月に4、5 度認めた。1ヶ月前よりの労作時呼吸苦、下腿浮腫を認め受診された。歯科治療歴なし、猫の飼育歴あり。血液培養は陰性であった。経胸壁心エコー検査にては大動脈弁に疣贅あり中等度の大動脈弁逆流症を認めた。長期の経過であり血液培養陰性感染性心内膜炎の精査の結果Brtonell抗体陽性と判明した為ceftriaxoneおよびgentamicinによる抗生剤加療を開始した。治療開始後21日目の心エコー検査にて疣贅の拡大、可動性を認める為、準緊急的に大動脈弁置換術を施行した。左冠尖および無冠尖に疣贅を認め、右冠尖にperforation を認めた。摘出弁検体におけるPCR 法にて起因菌はB.quintana であった。術後はgentamicin およびmynomicin にて抗生剤加療を施行した。Bartonella属は血液培養陰性IE の起因菌として認識されているが、本邦での報告は少なく文献的考察を含めて報告する。CP9-6 Fabry病患者の僧帽弁置換術における周術期全身管理の経験1)弘前大学 医学部 麻酔科、2)弘前大学 医学部 集中治療部木村 太1)、櫛方 哲也1)、廣田 和美1)、斎藤 淳一1)、丹羽 英智2)、橋場 英二2)【はじめに】Fabry 病はライソゾーム病の1 種でα - ガラクトシダーゼA の欠損または活性低下によりスフィンゴ糖脂質代謝異常が生じる。古典型Fabry病ではグロボトリアオシルセラミドなどが全身に蓄積して、思春期までに周期的な四肢の激痛発作、血管皮膚病変、角膜・水晶体混濁、減汗症などが生じ、中年以降に腎不全、心血管病変が進行する。1990 年頃より心臓、腎臓に限局した病変が生じる亜型が報告され、古典型に比して頻度が高く、発症年齢は遅い。【症例】60歳、女性。18年前より不整脈を指摘。9年前に尿蛋白陽性から精査してFabry 病と診断され、酵素補充療法を受けていた。6年前より僧帽弁逆流、肥大型心筋症と診断され、昨年より動悸が強くなり、僧帽弁置換の適応とされた。【経過】術前検査では1秒率69%、血中尿素窒素36mg/dl、クレアチニン1.5mg/dlが異常値であった。全身麻酔下に僧帽弁置換、Maze 手術を施行、手術時間7時間32分、人工心肺時間3時間50 分で術中の呼吸・循環は安定していた。ICU入室後もペーシング下に循環は安定し、尿量も保たれていたが、手術翌朝のクレアチニンが2.3mg/dl と上昇していたため、CHDF を導入した。酸素化不良のため気管チューブ抜管が入室5 日目となり、鎮静にデクスメデトミジン0.4 μg/kg/h とプロポフォールを併用したが、プロポフォール0.5mg/kg/h でBIS値が30 代であった。抜管後の意識状態に問題はなく、CHDFは6 日間施行、血液浄化終了後も腎機能悪化がないことを確認してICUを退室した。【まとめ】Fabry病患者に対する僧帽弁置換術の周術期管理を経験した。術前より腎機能障害を認めたため、早めにCHDFを導入し、腎機能悪化を免れた。BISを指標に人工呼吸中の鎮静を行い、プロポフォール使用量が通常より少なかったが、Fabry病との関連は不明である。