ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-622-CP9-1 大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術の早期成績(80歳以上 vs 80 歳未満)紀南病院 心臓血管外科阪越 信雄高齢者大動脈弁狭窄(AS)対する大動脈弁置換術(AVR)の早期成績について検討。対象は最近3年半のAVR44例で、80歳以上の26 例をO 群(80~91 歳、平均84 歳)、79 歳以下の18 例をY 群(54~79 歳、平均77 歳)とした。術前合併症は、O 群で血液透析(HD):1 例・冠動脈硬化症(CAD):6 例、Y 群でHD:7 例・CAD:4 例・骨髄異形成症候群(MDS):1 例。O 群の10 例は手術拒否していたが、うち8例が症状増悪で手術を決意(緊急手術:4例)、Y群の3例は手術拒否していたがすべて症状増悪で手術を決意した。生体弁使用はO群:88%・Y群:89%。O 群では自宅退院21 例・転院5例(紹介元:4 例・対麻痺リハ:1 例)で、入院死亡なし。Y群では自宅退院14 例・転院1例(脳梗塞リハ)、入院死亡3例(HD例の腸管壊死2例・MDS例の肺炎1 例)。80 歳以上でもAVRの早期成績は良好。手術拒否例における緊急手術とHD 例が今後の課題であった。ポスターCP 9 心臓・循環・体液管理① 2月12日(金) 9:30~10:30 CPポスター会場CP9-2 術前に経皮的大動脈弁拡張術(PTAV)を行った重症大度脈弁狭窄症(AS)を合併した非心臓手術の2 症例大阪市立大学大学院 医学研究科 麻酔科学山田 徳洪、辻川 翔吾、末廣 浩一、土屋 正彦、西川 精宣重症大動脈弁狭窄症(AS)に対して、PTAVを行い大動脈弁口面積(AVA)が増加した後に実施された非心臓手術症例を2例経験した。【症例1】84歳男性。重症AS(AVA 0.69cm2)で経過観察中に人工股関節周囲骨折を受傷した。PTAVを行いAVA 0.86cm2と増加してから、4 日後に全身麻酔による人工股関節再置換術を予定した。術中は観血的動脈圧測定と経食道心エコー検査を指標にフェニレフリンの持続投与を行った。手術時間4時間51分、IN-OUT バランス575ml で循環動態が安定していたため、一般病室に帰室した。術後は輸液負荷や昇圧薬等のサポートは必要なく、安定した循環動態が得られた。120日後に軽快退院した。【症例2】66 歳女性。心房細動、重症AS(AVA 0.66cm2)によるうっ血性心不全にて入院中に転倒し、大腿骨頚部骨折を受傷した。PTAVを行いAVA 0.86cm2 と増加してから、18 日後に全身麻酔による人工骨頭置換術を予定した。術中は観血的動脈圧モニタリングを用いたが高用量のフェニレフリン持続投与を要する状態であった。手術時間1時間21分、IN-OUT バランス385ml であったが、術前の心不全状態を考慮して抜管後にHCUに入室した。手術2日後に非持続性心室頻拍を認めたが、輸液負荷や昇圧薬によるサポートは必要なく経過した。132日後に転院した。【考察】高齢化に伴いAS合併非心臓手術症例が増加しており、周術期は侵襲的モニタリングを指標に昇圧薬によるサポートや厳重な前負荷のコントロールを余議なくされる。今回の2 症例では重症ASの合併と早期手術目的からAVRの代替にPTAVが選択されたが、PTAVではAS の重症度までは改善しなかった。周術期管理の負担軽減が期待されるが、適応、費用負担において議論の余地があるものと考えられた。CP9-3 手術適応外の重症大動脈弁狭窄症に対してバルーン大動脈弁形成術後に大動脈弁置換術を行い救命し得た一例大阪市立総合医療センター 救命救急部孫 麗香、山下 智也、重光 胤明、森本 健、師岡 誉也、福家 顕宏、石川 順一、有元 秀樹、宮市 功典、林下 浩士重症大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis、以下AS)に対する治療の第一選択は大動脈弁置換術(Aortic valve replacement、以下AVR)だが、高齢やリスクにより適応外となるケースも多い。我々はAVR 適応外の重症AS に対して、バルーン大動脈弁形成術(Balloon aortic valvuloplasty、以下BAV)後にAVR を実施して救命し得た症例を経験したので報告する。症例は高血圧症、2 型糖尿病の既往がある75 歳男性。来院1 週間前からの黒色便と意識消失発作を主訴に救急搬送された。来院時、意識清明、血圧144/44mmHg、脈拍数120 回/ 分、呼吸数30 回/ 分、SpO2 79%(酸素10L 投与下)、体温35.8℃と頻脈および低酸素血症を認めた。血液検査ではpH 7.192の代謝性アシデミア、Hb 6g/dlの貧血があった。緊急気管挿管し、上部内視鏡検査を行ったが胃潰瘍からの微小出血以外に有意所見はなかった。その後、低酸素血症の進行およびショック状態となりノルアドレナリン持続投与を開始した。心臓超音波検査では圧格差40mmHg 以上の重症AS を認め、貧血および重症AS による急性心不全、低心拍出症候群と考えられた。緊急冠動脈造影において#7 90% 狭窄に対して経皮的冠動脈インターベンションを行ったが循環動態の改善が乏しく、遷延する呼吸不全およびショック状態に対して経皮的心肺補助法(Percutaneous cardio-pulmonary support、以下PCPS)を導入した。重症ASの改善にはAVRが必要と考えられたが、全身状態不良のため断念し、代替療法として第3 病日にBAVを施行した。施行後は循環動態が著明に改善し、第4病日にPCPSを離脱、第5病日にAVRを実施した。術後状態安定していたが、痰の喀出不良により第12 病日に気管切開術を施行、第16 病日に人工呼吸器を離脱し、第19 病日にカテコラミン投与を終了した。第90 病日に見守り歩行下で転院となった。結語:手術適応外の重症大動脈弁狭窄症に対して、手術加療までの代替療法としてバルーン大動脈弁形成術は有用である。