ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-620-CP8-1 急性腎孟腎炎による敗血症性ショックの遷延によりNOMIを合併したが,集学的治療により救命し得た一例1)京都民医連中央病院 救急科、2)京都民医連中央病院 外科、3)京都民医連中央病院 消化器内科、4)京都民医連中央病院 総合内科河本 晃宏1)、鶴岡 歩1)、鳥取 洋昭2)、川島 市郎2)、木下 公司3)、岡井 康葉4)、井上 賀元4)、本田 正典2)、三浦 拓郎4)、四方 典裕1)【現病歴】78 歳,女性.神経因性膀胱にてもともと尿道カテーテルが留置されていた.来院前日の夜間に発熱を来たし,翌日往診医により救急要請され当院へ搬入された.【初療経過】来院時vital sign GCS E2V1M3 BP 78/56mmHg HR162/min SpO2 98%(O2 4L)RR 42/min BT39.6℃.腹部エコーにて膀胱内に大量の尿貯留を認めたためカテーテル閉塞を疑い交換すると大量の膿尿排出を認めた.lactate 4.38mmol/Lと上昇しており,種々の検査結果と併せて急性腎孟腎炎による敗血症性ショックと診断,SSCG2012に従い初期蘇生を開始しICUに収容した.【入院後経過】入室時SOFAscore 12 点,APACHE2score 36 点,急性期DICscore 8 点.抗生剤加療,大量補液とノルアドレナリンによる循環補助継続にて一旦はlactate 2.84 mmol/Lまで低下したが,その後再上昇しショック状態は遷延した.第2 病日,腹膜刺激徴候を認めたため腹部造影CTを撮影したところ,腸管壊死所見がありNOMIを疑い同日緊急手術施行した.開腹すると淡々血性の腹水と左側腹部に分節状に壊死した小腸(約150cm)を認めたため,腸切除し人工肛門を造設した.2nd look operation は予定せず,術後管理としては人工肛門の色調観察および人工肛門からの内視鏡検査にて追加切除の必要性を評価する方針とした.術後,SMAより塩酸パパベリンの動注療法併用とEV1000R を用いたモニタリングにて厳格な水分管理を行い,腸切除の追加なく管理可能であった.その後,短腸症候群,CLABSIなどの管理に難渋したが,リハビリ継続にて全身状態は徐々に安定し,約6ケ月後に生存退院となった.【考察】NOMIの診断に至ったポイント,管理について若干の文献的考察を加えて報告する.ポスターCP 8 消化器① 2月12日(金) 9:30~10:30 CPポスター会場CP8-2 体外式膜型人工肺離脱後に非閉塞性腸管虚血を発症した2 症例1)千葉大学大学院 医学研究院 救急集中治療医学、2)千葉大学医学部附属病院 臨床栄養部高橋 希1)、高橋 和香1)、服部 憲幸1)、今枝 太郎1)、島居 傑1)、佐藤 由美2)、織田 成人1)【はじめに】非閉塞性腸管虚血(NOMI)は急性腸管虚血の一つであり,上腸間膜動脈などの血管攣縮による腸管の低灌流状態が発症に関与していると考えられている.発症リスクとして循環不全状態や末梢血管疾患,心疾患,不整脈や高用量の血管作動薬使用などが挙げられているが, 体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする症例はこれらのリスクを多く有している. しかしECMO離脱後にNOMIを発症した報告は少ない. 今回我々は,ECMO離脱後にNOMIを発症した症例を2例経験したので報告する.【症例1】既往に肝硬変のある81歳男性.腹部大動脈瘤の予定手術のため入院.ステントグラフト挿入術を行った翌日の第6 病日に急性冠症候群から心肺停止に至り,VA-ECMO導入となった.第10病日にECMO離脱,第11病日に抜管.第15病日には血管作動薬も終了できたため,第17病日に経腸栄養を再開したが, 第20 病日に突然乳酸値が上昇しショック状態に陥った. 造影CT 検査で腸管壊死が疑われたため緊急開腹術を施行した.NOMI の診断で拡大右半結腸切除および人工肛門造設術を行ったが, 呼吸不全および肝不全が進行し, 第35 病日に死亡した.【症例2】特に既往のない71 歳男性. 急性心筋梗塞による心肺停止状態で救急搬送され,VA-ECMO導入後に経皮的冠動脈形成術を施行した.第10病日にVA-ECMO離脱,第16病日に抜管, 第19病日には血管作動薬も終了できた.第12 病日からは経腸栄養も再開し,腎不全からも回復過程にあり経過良好と考えていたが,第22病日に下血しショック状態に陥った.NOMIの診断で右半結腸切除および人工肛門造設術を施行したが,手術直後に生じた不整脈を契機に循環不全がさらに進行し,第24 病日に死亡した.【考察】NOMI の発症リスクはECMO を必要とする循環不全のリスクと多く共通するが,2 症例はともに血管作動薬は使用しておらずNOMIの発症に関与していないと考えられた.一方で経腸栄養や血管内脱水傾向, 腎機能障害などその他の因子が関与している可能性が示唆された.CP8-3 複数回手術を要した非閉塞性腸管虚血4 症例の検討千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学橋田 知明、渡邉 栄三、安部 隆三、中田 孝明、服部 憲幸、大網 毅彦、児玉 善之、岡 義人、小倉 晧一郎、織田 成人非閉塞性腸管虚血(Nonocclusive mesenteric ischemia,NOMI)は腸間膜血管に器質的閉塞が存在しないにも関わらず,腸管に虚血性変化を起こす疾患である.NOMIはその診断はさることながら,腸管壊死を合併した場合,救命自体も非常に困難な疾患である.そこで,NOMIに対し,複数回の外科手術を要した4症例を提示する.【症例1】78歳女性.重症急性膵炎からNOMIを発症した.小腸大量切除術を施行し,その後Open abdominal management(OAM)とした.小腸追加切除術を経て,腸管吻合術を施行し,生存退院した.【症例2】34歳女性.妊娠を契機とした耐糖能異常から糖尿病性ケトアシドーシスを生じ,NOMIを発症した.小腸亜全摘及び右半結腸切除術を行いOAM としたが,術後心停止し,V-A ECMOを導入した.その後,循環動態は改善し,ECMOを離脱した.その後,繰り返す縫合不全や後腹膜出血を認めたが,最終的に腸管吻合術を施行し,生存退院した.【症例3】70 歳女性.重症急性膵炎からNOMI を発症した.またAbdominal compartment syndrome(ACS)を合併しOAM としたが,NOMIの進行を認め,4回の腸管切除術を施行したが,多臓器不全にて死亡した.【症例4】75歳男性.肺炎球菌感染による電撃性紫斑病からNOMIを発症した.ハルトマン手術を施行した.しかしその後,多発小腸潰瘍を生じ小腸部分切除を施行するも,残存腸管からの出血を制御できず死亡した.この4症例について,外科的治療介入の時期や方法・管理,術中所見につき検討し,文献的考察を加え,報告する.