ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-616-CP6-1 胸腔内出血が持続した産科的播種性血管内凝固症候群に対し遺伝子組み換え活性型第7 因子製剤が著効した一例1)菊名記念病院 循環器内科、2)昭和大学 医学部 内科学講座 循環器内科学部門細川 哲1)、本江 純子1)、大西 克実1)、椎貝 勝1)、武藤 光範1)、浅野 拓2)、松井 泰樹2)、辻田 裕昭2)、小貫 龍也2)、小林 洋一2)胸腔内出血が持続した産科的播種性血管内凝固症候群(DIC)に対し,遺伝子組み換え活性型第7因子製剤(エプタコグ)が有効であった症例を経験したため報告する.【症例】39歳女性,妊娠第30 週で,前回妊娠高血圧症候群の既往がある.【現病歴】入院6日前より頭痛と全身倦怠感を自覚した.血圧上昇と肝機能障害を認め,子宮内胎児死亡,妊娠高血圧症候群,HELLP症候群のため,当院に搬送された.【入院後経過】搬送当日に死産となり胎盤娩出後,子宮収縮不全から大量出血し,産科DIC の状態を呈した.第2 病日に持続する子宮出血に対して子宮動脈塞栓術を施行し止血したが,終了後に施行したCTで,胸腔内出血と無気肺を認め,CCU での管理を行った.両側胸腔内からの2000ml/ 日以上の大量出血が持続し,DIC は遷延した.胸腔内出血箇所が不明で外科的止血が困難であること,新鮮凍結血漿輸血による凝固因子補充では状態改善は困難であることから,第7 病日にエプタコグを4.8mg/ 回,3 時間毎に計5回静脈投与したところ,胸腔内出血は200ml/ 日に減少し,以後出血とDICは改善した.その後の経過は良好で脳梗塞などの明らかな合併症は認めず,第34 病日に独歩退院した.内因性凝固異常は認めなかった.【まとめ】産科的DICにはエプタコグは保険適応外であるが,有効とする症例報告も散見される.本症歴のように止血困難な出血を来たした難治症例には,治療の選択枝として考慮してもよいと考えられる.ポスターCP 6 血液・凝固線溶① 2月12日(金) 9:30~10:30 CPポスター会場CP6-2 急激に進行するDIC、急性肝不全、AKIを伴うIII度熱中症の1 例1)滋賀医科大学附属病院 救急・集中治療部、2)滋賀医科大学 救急集中治療医学講座、3)滋賀医科大学 家庭医療学講座山根 哲信1)、藤井 恵美1)、加藤 隆之1)、北村 直美1)、松下 美季子1)、辻田 靖之1)、田畑 貴久2)、高橋 完1)、松村 一弘3)、江口 豊2)【症例】50歳、男性。身長17cm、体重101kg。心房細動にて循環器内科に、尋常性乾癬にて皮膚科にそれぞれ通院中。【現病歴】8月某日、朝9時頃より草刈り作業をしていたところ、11時45分頃に気分不快を訴え、その5 分後に意識消失したため、近医救急搬送となる。体温42.2℃、JCS 300、いびき様呼吸、心拍数130/分、血圧90/50mmHgであり、III度熱中症の診断にて気管挿管の後、当院転送となった。【入院後経過】入院時頭部CT では明らかな出血、梗塞は認めなかったが、脳浮腫を認めた。水冷式体表冷却を行い、輸液負荷を行うも尿量得られず、CHDF を施行した。入院3時間後で血小板7万/μl から1.6万/μl まで減少し、鼻腔、口腔からの出血を伴う急激なDICの進行を認めた。また、急激な肝酵素の逸脱、凝固因子の低下を伴う急性肝不全を認め、血漿交換、Plasma Filtration with Dialysis(PDF)を行った。しかしながら、フィブリノゲンの低下は著しく、入院8 時間後には37mg/dlまで低下し出血もコントロールできないため、フィブリノゲン製剤2g を投与した。その後、徐々に体温、循環、DIC、肝不全は改善し救命しえたが、腎不全と意識障害は遷延した。【結語】急激に進行するDIC、急性肝不全、AKIに対し、フィブリノゲン製剤、肝補助療法、CRRTなどによる集学的治療にて救命しえたIII度熱中症を経験したので報告する。CP6-3 敗血症性ショック及びDIC を呈した成人発症川崎病の一例高知医療センター 救命救急センター村西 謙太郎、山本 浩大郎、野島 剛、盛實 篤史、田村 竜、大森 貴夫、大西 広一、石原 潤子、喜多村 泰輔【はじめに】川崎病は発熱、両側眼球結膜充血、口唇口腔所見、不定形発疹、四肢末端の変化、頸部リンパ節腫脹を症状とする症候群である。約80%が4歳以下の症例で成人期には少なく、国内外でも90症例程度と稀である。今回、敗血症性ショック及びDICを呈した成人発症川崎病の一例を経験したので報告する。【症例】21歳女性。てんかんにて抗痙攣薬内服中。来院2日前より発熱が出現し前医を受診したところ肝機能障害を認めたため入院加療となったが、DIC、急性腎不全を合併し増悪を認めたため当院紹介となった。来院時vital signs はGCS14(E3V5M6)、心拍数103 回/ 分、血圧69/35mmHg、呼吸数30 回/ 分、体温36.3 度、SpO299%(経鼻酸素2L)であった。顔面浮腫、両側眼球結膜充血、両側頸部リンパ節腫脹、咽頭発赤、舌発赤、全身発赤、四肢冷感、下痢、嘔吐を認めた。血液検査にてWBC11310/ μ L、plt9.5 万/ μ L、CRP10.44mg/dL、INR1.55、FDP32 μ g/mL、PCT≧10ng/mLであった。当初、感染巣は不明であったが、最終的に敗血症性ショック、DICと診断し加療を開始した。抗菌薬、昇圧剤、IVIG製剤、rTM製剤、AT 製剤を使用し、全身状態は速やかに改善した。第11 病日に手足の皮膚落屑を認めたため川崎病が疑われ、成人発症川崎病と診断し、冠動脈の評価を行なったが異常は認めなかった。【考察】成人発症例では20 歳台が多く、膜様落屑の頻度が高い。また、頸部リンパ節腫脹、肝機能障害の頻度も高く、血小板増多や冠動脈後遺症の頻度は低いとされている。本症例のような敗血症性ショック及びDIC を呈した成人発症川崎病の報告は我々が検索する限り見つからなかった。【結語】冠動脈後遺症は致死的であり成人においても川崎病を鑑別に挙げ冠動脈評価を行うべきである。