ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-613-CP4-4 脳深部刺激装置埋め込み術後に発生した陰圧性肺水腫の2 症例1)旭川医科大学病院 救命救急センター、2)名寄市立総合病院 救命救急センター丹保 亜希仁1,2)、川田 大輔1)、西浦 猛1)、小北 直宏1)、藤田 智1)陰圧性肺水腫は,上気道狭窄に伴う過度の吸気努力によって胸腔内圧が低下し肺毛細血管透過性が亢進することが原因とされる。喉頭痙攣,急性喉頭蓋炎,窒息,気管チューブの狭窄などが陰圧性肺水腫の原因として報告されている。今回,脳深部刺激装置埋め込み術後に発生した陰圧性肺水腫の2例を報告する。2例とも,覚醒下に脳深部刺激電極(deep brain stimulator;DBS)を埋め込み,その後全身麻酔下に刺激装置を留置した。【症例1】64歳,女性。154cm,41.5kg。術中特に問題なく経過し,ICU入室となった。手術時間6時間45 分,術中の水分バランスは+1986ml であった。入室後に低酸素血症,胸部X線写真にて両側肺門部陰影の増強を認めた。ネーザルハイフローシステムによる酸素投与,利尿薬投与で経過を見ていたが胸水の増加を認めたため,術後5日目に右胸腔ドレナージ施行。その後は順調に経過した。【症例2】77 歳,女性。149cm,45kg。覚醒下手術中より呼吸苦とSpO2低下を認めた。手術終了時の胸部X線写真にて両側肺門部陰影の増強を認めたが,抜管されICU入室となった。手術時間は4 時間24分,術中の水分バランスは+ 586ml であった。ネーザルハイフロー療法を施行したが酸素化の改善は見られず,また胸水貯留を認めたため術後2 日目に両側胸腔ドレナージを施行した。その後は順調に経過した。【考察】症例1 では,主治医科が輸液過剰による肺水腫と考え加療していたが治療に反応しなった。低アルブミン血症(術前4.9 → 術直後1.9 g/dL)を認め,肺毛細血管透過性亢進が背景にあった可能性が後から考えられた。症例2では,頸部前屈位による呼吸苦があったとの訴えがあり,体位による上気道狭窄が原因の陰圧性肺水腫と考えられた。両症例とも胸腔ドレナージにより順調に経過したが,胸水の蛋白濃度を測定し病態を評価すべきであった。【結語】手術体位による上気道狭窄が原因と考えられる陰圧性肺水腫2 例を経験した。CP4-5 巨大腺腫様甲状腺腫による上気道狭窄を契機に発症した陰圧性肺水腫の一例藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座山添 泰佳、早川 聖子、勝田 賢、高木 沙央里、前田 隆求、小松 聖史、内山 壮太、中村 智之、柴田 純平、西田 修【はじめに】陰圧性肺水腫は急激な上気道閉塞と吸気時に過大な陰圧をかかることで発症する肺水腫で、肺水腫全体の0.1%の稀な病態である。多くは手術麻酔、気管チューブ抜去後の喉頭痙攣や浮腫等、周術期に発症し若年成人に多いとされる。今回我々は巨大腺腫様甲状腺腫による上気道狭窄と強い呼吸努力から、陰圧性肺水腫と急性心不全を合併した中年症例を経験したので報告する。【症例】50 代男性。168cm、68kg。【既往歴】2014 年に高血圧を指摘されるも放置。【家族歴】弟と叔母に甲状腺腫大あり。心疾患や突然死なし。【現病歴】2015年6 月頃から感冒様症状が出現、夜間湿性咳嗽と呼気性に喘鳴を認めるようになった。近医にて甲状腺腫による気道狭窄が疑われ、当院耳鼻咽喉科入院となった。甲状腺はびまん性に腫大(IV度)、縦隔内へ突出し気管は圧排され、気道狭窄音を聴取したが、SpO2 は98%(室内気)であった。入院翌日に仰臥位で甲状腺針生検を施行したところ、呼吸困難が出現、呼気時に犬吠様呼吸を認めた。酸素投与を行うもSpO2 が90%未満であったためMedical Emergency Teamコールとなり、気管挿管後にICU入室となった。水溶性泡沫状痰と胸部X線写真上両側肺野の透過性低下を認めた。心エコーでは、びまん性の左室壁運動の低下を認めたが、Asynergyは無く、心電図や生化学検査所見上も、急性冠症候群は否定的であった。陰圧性および心原性肺水腫と診断し、人工呼吸器管理、フロセミド、ニトログリセリン、カルペリチド等の薬物治療を開始した。ICU入室第2 病日には酸素化は改善、第9 病日に巨大腺腫様甲状腺腫に対し甲状腺全摘、気管切開術を施行。その後、人工呼吸器を離脱。第12病日にICU 退室となった。【まとめ】本症例は周術期でも若年者でもなく稀な発症例である。背景に未治療の高血圧や心機能低下等があり、気道狭窄を伴う巨大な甲状腺腫と、検査時の体位や吸気努力により、陰圧性肺水腫が発症したと思われた。CP4-6 低侵襲僧帽弁形成術後に再膨張性肺水腫を契機として発症した急性呼吸窮迫症候群の一例慶應義塾大学 医学部 麻酔学教室出野 サトシ、鈴木 武志、若宮 里恵、奥田 淳、御園生 与志、上田 朝美、香取 信之、森崎 浩61歳男性が労作時呼吸苦を主訴に入院し、重度僧帽弁閉鎖不全症と診断され、低侵襲僧帽弁形成術が施行された。術中は二腔気管チューブ(DLT)を用いた左片肺換気で呼吸管理を行った。403分間の片肺換気後、両肺換気に戻し、手術終了後にDLT から単腔気管チューブに入れ替えたところ、気管チューブ内腔から淡血性の泡沫状分泌物が大量に噴出した。胸部単純X線写真で右肺野に限局する著しい透過性低下を認めた。肺動脈楔入圧の上昇はなく、経食道心エコー検査の所見でも異常は認めず、心原性肺水腫は否定的であった。再膨張性肺水腫と診断し、再度、DLTへ入れ替えた上で集中治療室へ搬送した。 フロセミド、ステロイド、シベレスタットによる薬物的治療に加え、右肺はbilevel airway pressure mode、左肺はAssist/Controlmodeで分離人工呼吸管理を行った。しかし、心陰影拡大や肺動脈楔入圧の上昇はなく、心原性肺水腫は否定的であるにもかかわらず、術後1日目には左肺からも泡沫状分泌物を認め、酸素化の維持が困難となり、体外式膜型人工肺を導入した。体外式膜型人工肺は右内頚静脈経由の右房脱血、左大腿静脈経由の右房送血とした。ScvO2 とSvO2 およびSpO2 をモニター下に体外式膜型人工肺の流量や人工呼吸器設定を調整した。術後3 日目には分離肺換気を終了し、術後5日目に体外式膜型人工肺を離脱した。術後10日目に気管切開をし、術後14 日目に集中治療室を退室した。術後27 日目に人工呼吸器から離脱した。 再膨張性肺水腫は24-72 時間で自然軽快することが多いが、本症例では肺傷害が両側におよび重症化した。右肺の再膨張性肺水腫により急性呼吸促迫症候群が惹起され、両側の肺傷害に至ったと考えられる。低侵襲心臓手術後の再膨張性肺水腫は稀な合併症であり、重症化をきたす要因は明らかになっておらず、症例の蓄積による解明が必要である。