ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-595-DP45-4 ハイブリッド治療により選択的腸管切除にて治療した小腸出血の1 例済生会横浜市東部病院 救急部明石 卓、倉田 早織、中道 嘉、吉田 浩輔、小林 陽介、佐藤 智洋、折田 智彦、山崎 元靖、北野 光秀【はじめに】小腸出血の頻度は消化管出血の中の3~5%程度であり、しばしば診断に苦慮する疾患である。治療法には内科的、外科的治療があるが、外科的治療の場合は出血点が不明の場合切除部位に悩む。今回はカテーテル治療と手術によるハイブリッド治療により、必要最小限の腸管切除で治療した1 例を経験したので報告する。【症例】抗血小板薬内服中の85 歳女性。下血を主訴に救急搬送となる。受診1ヶ月前より下血、黒色便を自覚しており、貧血にて当院外来で精査中の状態であったが、いずれの検査においても異常所見は見られていなかった。腹部Dynamic CT検査にて動脈相で回腸からのExtravasation がみつかり小腸出血と診断した。【経過】小腸出血に対してIVR治療を選択し造影を施行。上腸間膜動脈の第2、3回腸枝の末梢にExtravasation を疑う所見が見られたが、それぞれ選択造影しても有意な所見がないため手技を終了とした。しかし帰室後ショックとなったため再度造影を行った。第3回腸枝領域で腸管内へと思われる血管外漏出像あり。しかしマイクロカテーテルで超選択している際に漏出像は消失し、末梢枝への同定は困難となった。第2回腸枝にマイクロカテーテルを留置し、開腹手術にて腸管染色を行うことで切除範囲を決定する方針とした。カテーテルよりインジゴカルミンの投与を行い腸管を染色した。染色された腸管の肛門側に出血源があると判断しているため、同部位を中心に約40cm 切除した。切除腸管を確認するとデュラフォイ潰瘍と思われる微細な出血点を確認することができた。【考察】手術時の出血部位同定に小腸内視鏡を用いる報告は見られるが、カテーテルからの造影で同定する報告は検索しうる限りみられない。TAE 治療ができる症例は限られるが、今回両者を補う形で最善の治療を行うことができた。【結語】TAEにて治療できなかった小腸出血もカテーテルをうまく利用することで、低侵襲の治療を行うことができる。DP45-5 胸部操作を開胸及び胸腔鏡補助下で行った食道がん手術の周術期経過1)独立行政法人四国がんセンター麻酔科、2)愛媛大学医学部麻酔周術期医学首藤 誠1)、正岡 光智子1)、越智 美緒1)、泉本 恵理2)当院ではでは2013年より胸部中部食道がん手術の胸部操作を胸腔鏡下で行っている。今回それ以前の開胸食道がん手術(開胸群)と、最近行われた胸腔鏡補助下食道がん手術(胸腔鏡群)の周術期経過を比較検討した。【症例と方法】開胸群は2011 年3 月から7月に施行された胸部中部食道がん手術9 例で、全身麻酔と胸部硬膜外麻酔の併用で行い、術後は持続静脈内fentanyl投与を追加した。胸腔鏡群は2014年11月から2015年8月に施行された胸部中部食道がん手術7例で、全身麻酔と硬膜外麻酔の併用で行い、術後は患者制御硬膜外鎮痛を行った。検討項目は手術時間、麻酔時間、ICU退出、硬膜外カテーテル抜去、尿道カテーテル抜去、胸腔ドレーン抜去、胃管抜去、食事開始、CVC抜去と退院時期とした。 統計学的検討はStudent-t Testを用いた。【結果】手術時間と麻酔時間(平均±SE)はそれぞれ開胸群6時間22分± 14分、胸腔鏡群7 時間57分±23 分と開胸群7時間48分±12分、胸腔鏡群9 時間47分± 25 分でどちらも有意に(P<0.05)胸腔鏡群の方が長かった。患者背景と他項目についてはいずれも両群間に有意差は無く、術後日数(平均POD ± SE)は開胸群と胸腔鏡群でそれぞれICU退出:1.8± 0.1と2±0、硬膜外カテーテル抜去:4 ± 0.7 と5.3 ± 0.3、尿道カテーテル抜去:3.4 ± 0.4 と3.5 ± 0.2、胸腔ドレーン抜去:5.3 ± 0.3 と4.8 ± 0.2、胃管抜去:4.8 ± 0.4 と4.8± 0.5、食事開始:9.8 ± 1.1 と8.3 ± 1.1、CVC 抜去:15.6 ± 1.3 と22.1 ± 7.8、退院:20 ± 1.6 と30 ± 9.4 であった。【考察】食道がんに対する鏡視下手術は一般に低侵襲手術と考えられている。しかし今回の調査では手術時間、麻酔時間が従来の開胸開腹手術に比べて有意に長く、その他の回復経過は両者に差が無かった。麻酔時間が長かったのは腹臥位による分離肺換気が要因と考えられる。また鏡視下手術は創が小さく患者満足度は高いと考えられるが、長時間手術は合併症リスクを増す可能性がある。DP45-6 当院ICUにおけるチェックリストの効果 ストレス潰瘍予防の観点から名古屋市立大学 大学院医学研究科 麻酔科学・集中治療医学分野小笠原 治、宮津 光範、岡野 将典、上村 友二、冨田 麻衣子、藤掛 数馬、田村 哲也、森島 徹朗、草間 宣好、祖父江 和哉【背景と目的】ICUにおけるストレス潰瘍予防に関して、当院では元々、ICU入室患者ほぼ全員に潰瘍予防薬をルーチン投与していた。ところがチェックリスト導入により毎朝潰瘍予防薬の要不要を患者ごとに検討する習慣がついたため、それに合わせルーチン投与を禁止した。その前後において、消化管出血発生率が変化したかどうかを調べることにより、チェックリストの効果と潰瘍予防薬の必要性を検討することを目的とする。【方法】2014年9月22日から2015年7月31日までにおいて、当ICUに入室した小児も含めた全患者を後方視的に調査した。潰瘍予防薬ルーチン投与禁止は2014 年12月22 日以後であるため、それ以前と以後とで患者を2 群に分け、潰瘍予防薬の投与割合と、消化管出血発生率を調査した。潰瘍予防薬は静注または内服のH2ブロッカーまたはPPIとし、消化管出血の有無は、胃管排液または便の性状で少しでも黒色または血性であれば出血有りとした。ICU入室理由が胃切除術・食道亜全摘術・膵頭十二指腸切除術後、消化管出血である患者は除外した。それぞれの群における患者背景は、性別・年齢・ICU在室日数・APACHE2スコア・PIM2スコア予測死亡率で検討した。【結果】289症例が該当し、ルーチン投与群は90症例、禁止群は199症例であった。2群間の患者背景に有意差を認めなかった。潰瘍予防薬使用率は、ルーチン投与群88.9%、禁止群26.6% と明らかに有意差を認めた(p <0.001)が、消化管出血発生率は17.8%対19.6% と、有意差を認めなかった(p=0.715)。【考察】潰瘍予防薬をルーチン投与せずとも、チェックリストを用いて適切に投与することによって、消化管出血発生率を増やさずに無駄な投薬を減らせることが示された。