ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-593-DP44-4 当ICUにおける超高齢者の検討1)済生会横浜市東部病院 集中治療科、2)済生会横浜市東部病院 麻酔科木村 慎一1)、金尾 邦生1)、大村 和也1)、星野 哲也1)、秋山 容平2)、佐藤 智行2)、高橋 宏行1)【背景】当ICUは救命病棟ICU とは別部署として存在し、年間約900例の入室がある。患者内訳としては約600例が開心術、開頭手術を含む高度侵襲手術の術後管理のための入室であり、約300例は入院患者の容体急変の結果生命維持装置の使用や集中治療管理が必要となった症例の入室である。また、近年では日本は超高齢社会を迎え、麻酔技術の進歩や低侵襲手術の普及の結果、集中治療管理を必要とする超高齢者が増加することが予想される。【目的】当ICUに入室した90歳以上の超高齢患者について調査し、転帰について検討した。【方法】2012年1月から2014年12月までの3年間にICU入室した90歳以上の患者の転帰について後方視的に検討した。【結果】3年間で90~103歳までの89例の入室があり、54例は予定手術患者、35例は緊急入室患者であった。予定手術群では1例(1.8%)の死亡例があり、生存53例中37例(68%)は自宅退院、16例(29%)はリハビリ病院などへの転院となった。2012年と比較して2013~2014年と入室症例が増加しており、約半数がステントグラフトやTAVIといった低侵襲血管内治療であった。また、緊急入室群ではICU死亡が3例(8.6%)、退室後院内死亡が7例(20%)、生存例では13例(37%)が自宅退院、12例(34%)が転院となった。【結論】予定入室では低侵襲手術の普及に伴い今後も入室増加が予想される一方、転院となる患者もあり術後合併症を減らし機能を維持する必要がある。緊急入室患者では高い死亡率と生存後も機能低下に伴い自宅退院不可能から転院となる傾向があった。近隣病院との連携も含めた対応がより必要となると思われた。DP44-5 高齢化が進んだ地域のICU における高齢集中治療患者の疫学:単施設後方視記述的観察研究1)医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 集中治療科、2)東京医科歯科大学 医学部附属病院救命救急センター笹野 幹雄1)、白石 淳2)、山本 良平1)、藤内 まゆ子1)、野木 一孝1)、佐藤 仁信1)、松本 敬1)、小林 宏維1)、麻生 将太郎1)、林 淑朗1)【背景】ICUの多くの患者が高齢(65 歳以上)者である。日本の高齢化率は2050年代に40%近くに達すると見込まれるが、当院のある千葉県鴨川市の高齢化率は既に32.4%に達している。【目的】高齢化の進んだ地域の高齢ICU 患者の疫学の記述【デザイン】単施設後方視記述的観察研究【セッティング】千葉県鴨川市の3 次医療機関のclosed-ICU【対象】2013年4 月~2015年3 月の期間ICU 入室した成人患者【方法】ICUデータベース及び診療記録からの情報収集【主要評価項目】ICU 死亡率、院内死亡率、ICU滞在日数、入院日数【結果】約70%の患者が高齢者であった。加齢に伴い予定入室に比して緊急入室が増え、ICU 死亡率も増加していた(Table 参照)。【結論】高齢化に伴い集中治療サービスへの負荷が大きくなると予想される。超高齢化社会でも持続可能な医療政策を立案するために、高齢ICU 患者の疫学をさらに研究する必要がある。DP44-6 脊髄くも膜下麻酔が術後認知機能に与える影響について独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 麻酔科安村 里絵、佐藤 奈々子、杉浦 孝広、山崎 治幸、和田 浩輔、小林 佳郎高齢者では術後認知機能障害(POCD)が問題となるが, 高齢者で選択される事の多い脊髄くも膜下麻酔とPOCDの関係については明らかではない事も多い.またPOCDの診断には統一された評価法がないが,認知機能評価項目を含む術後回復の質を評価するスケール(Postoperative quality of recovery scale:PQRS)が発表された. 本研究では脊髄くも膜下麻酔が術後認知機能に与える影響についてPQRS を用いて検討した. 対象は65 歳以上で, 脊髄くも膜下麻酔下の手術が予定されている患者とし, 術中のオピオイド鎮痛薬使用や全身麻酔に移行した症例は除外した.基準として麻酔施行前のPQRSを評価し,術後評価のため術後1日目,3日目にPQRS評価を行った.統計学的検討はPQRS各項目について平均値と標準偏差を求め,単変量解析にはFisher正確確率検定を用いた. 平成27 年7 月までに40 名が研究に参加したが,全身麻酔への移行や患者拒否により除外され, 術後1 日目は29 名が, 術後3 日目は24名が評価対象となった.対象患者の年齢は76.9±7.1歳で男性26人女性3人であった.基準となる麻酔前のPQRS各項目は見当識:3± 0, 数字順唱:4.2 ± 0.9, 数字逆唱:2.4 ± 0.9, 単語記銘:3.9 ± 1.6, 語想起:6.4 ± 2.4 であった. 術後1 日目のPQRS 各項目は基準と比し, 見当識:0 ± 0, 数字順唱:0.2 ± 0.8, 数字逆唱:0.1 ± 0.8, 単語記銘:0.6 ± 1.9, 語想起:-1.5 ± 1.9 であった. 術後3 日目のPQRS 各項目は基準と比し,見当識:0±0,数字順唱:0.3±1.0,数字逆唱:0.5±0.8,単語記銘:0.5±1.3,語想起:-0.5±2.0であった.過去の報告に基づき,術後のPQRS 各項目が基準に比し見当識:0 以上, 数字順唱:-2 以上, 数字逆唱:-1以上, 単語記銘:-3以上, 語想起:-3以上であった場合に認知機能が回復していると定義すると,術後1 日目は13.8%, 術後3 日目は12.5%の患者がPOCDと診断された. 脊髄くも膜下麻酔後のPOCD 発生率は過去に報告されている全身麻酔後のPOCD 発生率と大きな差はないが, 今後更なる検討が必要である.