ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-591-DP43-4 拘束性障害で著明な高二酸化炭素血症を合併した呼吸不全に対してHFOV が有効であった1 例沖縄県立南部医療センターこども医療センター制野 勇介、八坂 有起、藤原 直樹【はじめに】ARDS などの低酸素血症に対してHFOV の有用性は報告されているが、高二酸化炭素血症に対する報告は少ない。今回基礎疾患により拘束性障害を持つ児の呼吸不全に対してHFOV を導入し、高二酸化炭素血症の改善を得た症例を経験したので報告する。【症例】13歳男児、体重16kg。毛細血管拡張性小脳失調症の基礎疾患があり、呼吸機能検査では%VC 16%と著明な拘束性障害を認めていた。感染を契機に呼吸不全となり、前医で挿管となったが、呼吸不全の改善なく、当院PICUに搬送となった。PICU 入室時ABG: pH 7.00 pCO2 116mmHg pO2 92mmHg(FiO2 1.0)で、CMV では換気不全が進行し、HFOV(初期設定:MAP28  Amp70 SV 135 振動数8Hz)を施行した。変更直後のABG ではpH 7.17 pCO2 76mmHg、変更6 時間後にはpH 7.30pCO2 58mmHg と改善した。10 日間のHFOV 管理後、CMV に変更し、PICU 退出となった。しかし5 日後にMRSA 肺炎に罹患しPICU 再入室となった。再入室時のABG;pH7.09 pCO2 > 250mmHg でCMVでは二酸化炭素のコントロールがつかず、HFOVを導入し直後にはpH7.31 pCO2 81mmHgと改善を認めた。【考察】本症例は、免疫不全により繰り返す呼吸器感染から気管支拡張症と著明な拘束性障害を合併していた。CMVでは二酸化炭素の管理に難渋し、HFOVに変更後改善を認めた。拘束性障害により一回換気量が制限されている上に気管支拡張症や感染により生理学的死腔が増加し、通常の換気様式では高二酸化炭素血症を呈したと考える。しかしHFOVによる振動を用いた換気様式では高二酸化炭素血症の改善を認めた。通常の管理では難渋する致死的な高二酸化炭素血症に対して、換気様式の異なるHFOV が有効な場合があることが示唆された。HFOV; high frequency oscillatoryventilation, ABG: arterial blood gas analysisCMV: conventional mechanical ventilation, MAP: mean airway pressureAmp:amplitude, SV: stroke volumeDP43-5 Guillain-Barre症候群に対してNAVA modeが有効であった1 症例1)鹿児島県立大島病院 救命救急センター、2)鹿児島大学医学部 麻酔・蘇生学服部 淳一1)、櫻井 絵里2)人工呼吸におけるNAVA(Neurally Adjusted Ventilatory Assist)mode とは呼吸中枢から横隔膜への神経シグナルを利用した補助換気を行う自発呼吸モードである。今回Guillain-Barre症候群の症例において人工呼吸適応となりNAVA modeにて有効な呼吸管理が出来たので報告する。(症例)66才男性、既往に高血圧、夜間睡眠時無呼吸症候群があった。近医より紹介されGuillain-Barre 症候群の診断にて当院ICU へ入院となった。入院後、NPPV にて呼吸管理していたが誤嚥性肺炎を併発し経口挿管による呼吸管理となった。この際、NAVA mode を使用して呼吸管理した。(結果)鎮静はプレセデックス、プロポフォールで管理したがEdi peakは鎮静/睡眠により有意に低下した. 挿管初期と後期においてEdi peakに明らかな差を認めなかった. NAVA levelを変化させてもPIP, VT は影響を受けなかった。NAVA lv を変化させてもetCO2, pH は生理的変化にとどまった。(考察)NAVAlevel 2.5におけるEdi peak の平均は6.0 μV と報告されている. 本患者の平均は6.2 μ V であり矛盾しない結果であった. 一般的にNAVA levelを下げるとEdi peakは上昇する. 同様の傾向は他グループによるGuillan-Barre症候群例でも認めた. 一方で、呼吸不全状態では一般的にEdi は上昇し、健常に近づくほどEdi が低下すると報告されている. 本症例ではNAVA level を低下させたがEdi peakの上昇はなく呼吸不全の評価に難渋した.(結論)Guillan-Barre症候群に対してもNAVA modeを適応できる. Ediは呼吸不全の程度をより詳細に把握するための貴重な情報である. NAVAに関する報告は限られており、今後の報告が望まれる.DP43-6 Neurally Adjusted ventilator Assistが有用であった慢性肺疾患の乳児例国立成育医療研究センター 集中治療科阿部 迪子、壷井 伯彦、後藤 祐也、青木 一憲、松本 正太朗、井手 健太郎、西村 奈穂、中川 聡【はじめに】Neurally Adjusted ventilator Assist(NAVA)は横隔膜活動電位(electrical diaphragmatic activity; Edi)変化を利用し呼吸補助のタイミングや吸気圧、換気量を制御する人工呼吸モードである。小児においてもEdiを利用したトリガーは圧トリガーやフロートリガーよりもトリガーの遅れが有意に短く、さらに呼吸回数および気道内圧が低値であったと報告されており、人工呼吸との同調性が悪い症例はNAVA の良い適応である。今回、NAVA が人工呼吸との同調性改善に有用であった症例を経験したので報告する。【症例】生後10か月、体重4.4kgの男児。既往に横隔膜ヘルニア術後、慢性肺疾患、肺高血圧、短腸症候群があり、感染等による呼吸不全増悪によりICU入退室を繰り返していた。気管切開術後も人工呼吸との同調が悪く、鎮静薬増量や一時的な筋弛緩薬の使用により対応するも管理に難渋していた。患児が呼吸窮迫状態にある時点でのEdi変化から計測した患者呼吸努力による吸気時間は0.3秒、呼気時間は0.5秒と非常に短かった。フロートリガー下ではトリガーされないことも多く、トリガーされている時でもEdiの吸気変化から実際にフローアシストが開始されるまでに0.2秒要していた。NAVA の導入により非同期時間が短縮することで人工呼吸との同調性が改善し、静注鎮静薬の中止が可能となった。また、患児の見た目の呼吸努力とEdi値が良く相関しており、呼吸器設定の際にEdi 値を指標とすることが有用あった。【考察】呼吸数が多く吸気時間が短い症例において、トリガーの遅れは非同期の主要な原因と考えられた。【結語】小児の呼吸管理において非同調が問題となる症例は多い。NAVAにより自発呼吸を温存しながら人工呼吸との同調性を改善させ、呼吸努力の軽減を図ることが可能である。