ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-588-DP42-1 ICUにおけるアデノシン三リン酸拭き取り検査を用いた環境清浄度調査1)潤和会記念病院 感染対策管理室、2)潤和会記念病院 集中治療部、3)潤和会記念病院 看護部永迫 望1)、田中 友康2)、坂本 加代子3)、川野 マキ2)【背景】環境整備は,これまで培養検査で清浄度を計測していたが,時間と経費,手間がかかっていた.アデノシン三リン酸(ATP)測定は,測定時間10秒で費用もかからず手間も少ない.ICU における環境整備は,感染対策上重要である.当院ICUでは1日1回の環境整備を行っているが,箇所が統一されておらず指標もなかった.そこでATP拭き取り検査を行い,環境整備を見直し前後で清浄度評価を行った.【方法】ATP測定にはルミテスターPD-30とルシパックPen(キッコウマン,東京)を用いた.手指高頻度接触表面11箇所の環境整備見直し前後に清浄度調査を行った.ATP 基準値は,前後でそれぞれ2 回測定し平均500 RLU 以下で清浄と判断した.【結果】環境整備見直し前のATP測定で基準値を上回った箇所は,輸液ポンプ(1087RLU),シリンジポンプ(588),中央テーブル(588),ベッド柵縁(4538),ベッド柵内側(1334),ベッド柵外側(1096),汚物室ドアノブ外側(1178),汚物室ドアノブ内側(1185),パソコンのマウス(595)の9箇所であった.ATP測定結果をICUスタッフへ報告しATPについて説明した.また環境整備実施時間や整備箇所,清拭の方法などを見直し統一した.見直し後ATP値が低下したものの基準値を超えた箇所は,ベッド柵縁(3555),ベッド柵内側(748),ベッド柵外側(963)汚物室ドアノブ外側(741),汚物室ドアノブ内側(1093)だった.パソコンのマウス(652)は上昇していた.【考察】ATP測定で清浄度を数値化することで環境整備の指標とすることが可能で,不十分な箇所を明らかにできた.ATP 測定は簡便かつ短時間で結果を得ることができ,その場でフィーバックすることができる.また再評価することも簡便になり,短時間で対策を立てなおすことができる.ATP測定は環境整備の有用な指標となると考えた.デジタルポスター 42 感染・感染対策③ 2月14日(日) 11:00~12:00 デジタルポスターブース2DP42-2 ICU における手荒れ予防効果のある手指消毒剤の使用は手指衛生遵守率を向上させるか1)埼玉医科大学国際医療センター、2)埼玉医科大学国際医療センター集中治療科、3)埼玉医科大学国際医療センター救命救急科杉本 直樹1)、相庭 克行1)、中村 真巳1)、新山 和也1)、佐伯 有香2)、磨田 裕2)、古田島 太2)、根本 学3)【はじめに】感染対策の方法として手指衛生が簡便で最も効果的な方法とされているが、アルコールによる手荒れを気にして手指衛生を怠る看護師は少なくなく、遵守率が低下する要因の一つとして考えられる。そこで、手荒れ予防を目的とした高機能保湿成分リピジュア配合の手指消毒剤を導入し、既存の手指消毒剤との遵守率を比較した。【目的】リピジュア配合手指消毒剤を使用することで、ICU看護師の手指衛生遵守率向上に有効性があるか検証する。【方法】対象は救命救急センターICUに従事する看護師。定点ビデオカメラを患者のプライバシーを侵害せず、対象者の手指衛生場面が写る場所へ設置し午前9 時から午前12 時まで撮影した。手指衛生遵守状況はWHOの5つのタイミングを観察するためのチェックリストを独自に作成し、研究者全員が同様の観察ができるようWHOの提供する「トレーナー、オブザーバー、そして医療従事者のための教育セッション」を用いて訓練を行った。撮影したデータより場面毎に各100例を目標にデータを収集後、無作為に半数を抽出し遵守率を算出した。【結果】救命救急センターICU に従事する看護師で男性12名、女性23 名から同意を得た。総撮影時間約3,680分であった。アルコール手指消毒剤の手指衛生を必要とした場面数は315 回であり遵守率は27%であった。リピジュア配合手指消毒剤の場面数は317回で遵守率は30%であった。【考察】両剤の手指衛生遵守率に差は認めず、手指衛生を実施していない割合も差はなかった。手荒れを予防するために消毒剤を変更するだけでは、手指衛生に対する意識に変化を与える事は難しく、手指衛生遵守率向上に直接的な影響は少ないことが示唆された。手荒れに悩まず手指衛生を実施できる環境を整備することは、手指衛生に対する煩わしさを軽減し、スタッフへの意識付けに対する指導効果が期待できる可能性がある。DP42-3 多剤耐性アシネトバクターの感染拡大防止に向けた取り組み1)三重大学 医学部付属病院 総合集中治療センター、2)三重大学 医学部付属病院 救命救急センター伊藤 真実1)、森井 杏奈1)、濱口 美咲1)、正木 香苗1)、水谷 典子1)、鈴木 圭2)、今井 寛2)【背景および目的】多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(以下MDRAB)のアウトブレイクを経験した。早期収束にむけ手指衛生遵守率向上にむけた取り組みの効果を検討したため報告する。【実際の取り組み】アウトブレイク判明後の2014年9月から翌年1月まで、1)患者周囲の高頻度接触部位とスタッフゾーンの継続的な清掃(3回/ 日)、2)手指衛生遵守率を向上させるための啓発活動、3)当該病棟の看護師を対象に手指消毒のタイミングを細分化したアンケート調査の実施、4)当該病棟全入院患者および退棟前のMDRABスクリーニング、5)当該病棟スタッフゾーンを含めた環境培養の実施結果をスタッフ全員に周知、6)MDRABが検出された患者と担当スタッフのゾーニング、を行った。なおゾーニングはMDRAB 患者が1 名になった時点で廃止し個室管理とした。【結果】清掃はチェックリストを用いて全スタッフで行った。啓発活動は手指消毒や個人防護具の着脱方法の普及、擦式消毒剤携帯の義務化等を行い、活動により患者一人当たりの擦式消毒剤使用量(ml/患者延べ人数) は21→83 →143 →110 →86 →112 と漸増し、アンケート調査による手指衛生遵守率は啓発活動前と比べて増加し、41項目中28 項目で有意差がみられた。清掃と擦式消毒剤使用量増加に伴い環境培養によるMDRAB陽性数(/箇所)は3→19→30→0→1→3と著明に減少した。擦式消毒剤使用量は同月の環境培養陽性数と正の相関、翌月の環境培養陽性数とは負の相関が認められた。患者・担当スタッフのゾーニングにより非感染患者区域からの環境培養陽性はみられず、個室管理になってからは患者の病室外の環境から散発的にMDRABが検出されたが、新規発生患者はなかった。【結語】種々の取り組みによりMDRABアウトブレイクの早期封じ込めに成功した。特に、定期環境培養検査は擦式消毒剤増加につながり、アウトブレイク早期収束に寄与する可能性が示唆された。