ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-577-DP36-4 内因性出血性ショックの緊急手術に際し、全身麻酔管理に大動脈バルーンオクル-ジョンが奏効した3 症例太田西ノ内病院 麻酔科・救命救急センター橋本 克彦、岩崎 夢大、伊藤 文人、石田 時也【背景】大動脈バルーンオクル-ジョン(IABO)は、出血性ショック症例において横隔膜より末梢側の一時的な止血目的に使用される。今回、危機的産科出血2症例と内因性脾動脈瘤破裂1症例の緊急開腹術の術前にIABOを予防的に用いて良好な循環動態を保ち得た症例を経験したため報告する。症例1:30歳女性。正常分娩後の癒着胎盤・子宮内反症による出血性ショックのため救急搬送された。収縮期血圧50mmHgの高度ショック状態であり、救急外来で気管挿管・輸血を開始すると共にIABOを挿入した。手術室への移動時と麻酔導入時にIABOをインフレートし、急速輸血で昇圧が得られた後にIABOをデフレートした。術中・術後共に循環動態は安定し、患者は独歩退院した。症例2:34歳女性。突然の腹痛のため救急搬送された。来院後精査で右卵管角部の子宮外妊娠と診断されたが、まもなくして収縮期血圧40mmHg のショック状態となった。救急外来で気管挿管・輸液を開始すると共にIABO を挿入した。手術開始後IABO をインフレートし、安定した循環動態が得られ、止血確認後IABOをデフレートした。患者は独歩退院した。症例3:46歳男性。高血圧、高度肥満、肝硬変の既往あり。突然の腹痛のため救急搬送された。収縮期血圧50mmHgの高度ショック状態であり、直ちに輸血を開始した。脾動脈瘤破裂と診断され、手術に先立ち透視室でIABO を挿入した。IABO インフレート下でも開腹直後に収縮期血圧60mmHgまで低下がみられたが、急速輸血にて以降の循環動態は安定した。患者は独歩退院した。【考察】IABO は比較的低侵襲で、術野の外から調整が出来るため、予防的に挿入することで開腹操作による低血圧・心肺停止の危険を回避することができた。IABOは大動脈損傷や末梢臓器虚血といった重大な合併症を起こしうるが、適性に使用されれば横隔膜より末梢側の出血性ショックへの止血術において循環動態維持に有用であると考えられた。DP36-5 急性心筋梗塞に対するPCI 中の急性ステント内血栓症に対するパーフュージョンバルーンの有用性1)同愛記念病院 循環器科、2)日本医科大学付属病院 循環器内科松田 淳也1)、高橋 保裕1)、福泉 偉1)、羽田 朋人1)、佐藤 太亮1)、清水 渉2)【背景】急性ステント血栓症は急性心筋梗塞患者の1%程度に認められ、血行動態の破綻をきたし致命的な合併症の一つである。当院において急性心筋梗塞に対するPCI 中の急性ステント血栓症に対し血栓吸引、バルーン拡張、大動脈内バルーンパンピングで改善が得られず、パーフュージョンバルーンによる長時間拡張が有用であった3 症例を経験したため報告する。【症例1】68 歳男性、非ST上昇型急性心筋梗塞(Killip III)にて救急外来で気管挿管施行後に冠動脈造影を施行し左前下行枝中間部90%狭窄を認め、胃管挿入後に抗血小板剤2 剤を投与して緊急PCI を施行。左前下行枝に薬剤溶出性ステントを留置し、直後の造影でステント内に血栓を認めた。【症例2】63 歳男性、ST 上昇型急性心筋梗塞にて左前下行枝近位部完全閉塞に対し緊急PCI 施行。血栓吸引の後に薬剤溶出性ステント留置し、ステント内後拡張後の造影でステント内に血栓が認められた。【症例3】41 歳男性、非ST 上昇型急性心筋梗塞に右冠動脈中間部完全閉塞に対して緊急PCI 施行。薬剤溶出性ステント留置しステント内後拡張後の造影でステント内に血栓が認められた。【結語】いずれの症例においてもヘパリン起因性血小板減少症は否定され、ヘパリン投与、複数回の血栓吸引とバルーン拡張にて改善の得られない難治性ステント内血栓症に対してパーフュージョンバルーンによる長時間拡張によってステント内血栓の改善が確認された。急性ステント内血栓症の主な原因としてステント拡張不十分、ステント留置によるプラーク破綻部の血栓や、血管壁の微細な損傷などによってステントストラット周囲の乱流・渦流が促進され血小板が凝集することが考えられている。本例においてIVUS によりステントの拡張は良好であることが確認され、パーフュージョンバルーンによる血栓の壁への圧着、圧排が乱流を抑制し難治性のステント血栓症に対して有効な初期効果が得られた可能性がと考えられた。DP36-6 褐色細胞腫による逆たこつぼ型左室壁運動異常を来たした2 症例聖路加国際病院 麻酔科藤田 信子、岡田 修、橋本 学、篠田 麻衣子、岡部 宏文、青木 和裕、片山 正夫症例1: 75 歳、男性。胸痛、呼吸困難が出現し、当院に救急搬送。来院時、血圧250/150mmHg、心拍数100bpm、P/F ratio 71 と肺水腫の状態だったため、気管内挿管施行。左室造影で心尖部過収縮、心基部無収縮の逆たこつぼ型左室壁運動異常の所見を認めた。 腹部CT で右副腎に腫瘍を認め、尿中VMA は陽性だったため、褐色細胞腫とカテコラミンによる心筋障害が疑われた。第2病日、循環動態が保てないため、PCPS を確立した。右副腎腫瘍に対する早期の手術療法も考慮されたが、全身状態が悪く手術はPCPS を離脱の目安がつくまで延期とした。第3 病日から、末梢循環不全、乳酸アシドーシス、急性腎不全の進行を認め、第5 病日に死亡を確認した。症例2: 24歳、女性。妊娠38週0日、呼吸困難が出現したため、当院に救急搬送。来院時、胎児は子宮内で死亡、患者は肺水腫、EF10%の急性心不全の状態であった。呼吸、循環の維持が困難だったため、気管内挿管、PCPSを確立。腹部CT で左副腎に腫瘍を認め、褐色細胞腫とそれに伴うカテコラミン心筋障害を疑った。左室造影で逆たこつぼ型左室壁運動異常を認めた。Pheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の病態が疑われ、救命には腫瘍摘出が必要と考え、全身状態は不良であったが、PCPS下で腫瘍摘出を行った。術後、出血傾向はみとめられたが、術後5 日目に心機能回復しPCPS を離脱、術後6日目に経膣的に児娩出、術後11 日目に抜管され、後遺症なく術後30日目に退院となった。褐色細胞腫による逆たこつぼ型左壁運動異常を呈した2症例を経験した。どちらも心源性ショック、肺水腫を認め、PCPSを必要とした。PMCの病態が疑われる場合、報告では腫瘍摘出がなされない場合多くは死亡している。PCPS を必要とするような状態でも、腫瘍摘出のみが救命の手段となる可能性があり、治療方針の決定を十分議論する必要がある。