ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-575-DP35-4 本邦小児集中治療領域における敗血症性ショック管理の現状1)長崎大学病院 小児科、2)長野県立こども病院 小児集中治療科、3)国立病院機構京都医療センター 救命救急科横川 真理1)、笠井 正志2)、志馬 伸朗3)【背景・目的】小児重症敗血症は致死率の高い重要病態であるが、診療ガイドラインにおいて明確な根拠に基づく推奨が行われている介入は少なく、実践も施設間差違が大きい可能性がある。PICUを対象としたフランスの先行研究(Miriam 2013)では、全施設で敗血症性ショックの診断後1時間以内の抗菌薬投与と積極的輸液が行われていた。本邦の小児集中治療領域において、小児の敗血症性ショックの管理実態に関する横断的調査を行い、管理実践の改善に繋がる基礎的資料を得ることを目的とした。【方法】小児の集中治療を行っている大学病院や小児病院など国内29 施設のICU およびPICU の施設長を対象に、提示した敗血症性ショックの症例に対する診療状況について調査した。【結果】回答を得た27 施設のうち、PICU が24 施設(89%)、総合ICU が1施設、Cardiac ICU が2 施設であった。抗菌薬投与前に全例で血液培養を1 セット採取しているのは96%であったが、2 セット採取していたのは33%に過ぎなかった。敗血症の診断後4時間以内に抗菌薬を投与すると回答したのは96%であったが、1 時間以内に抗菌薬を投与していたのは52%にすぎなかった。全体の59%が40-60ml/kgの輸液に反応しない場合に昇圧薬の投与を考慮しており、選択する昇圧薬はドパミン(38%)、ノルアドレナリン(33%)、アドレナリン(29%)、であった。敗血症性ショックの重症度は、乳酸値、動脈血ガス値、中心静脈酸素飽和度を指標に評価されており、CRPやプロカルシトニンを指標とする施設は少なかった。【結論】本邦の小児集中治療領域における小児の敗血症性ショックについての現状を把握し得た。血液培養複数セット採取とより早期の適切な抗菌薬投与が、今後の重要な診療改善点であると考えられた。DP35-5 当院で経験した心臓術後の乳糜胸水腹水を合併した症例への検討千葉県こども病院 集中治療科杉村 洋子、松永 綾子小児心疾患術後には、乳糜胸水腹水を合併し治療困難となり不幸な転帰を辿る症例がある。【目的】当院で経験した先天性心疾患術後の乳糜胸水腹水合併症例を検討し、当院における実情を把握するとともに、治療困難となる要因について検証する。【対象・方法】2010年1 月から2015年6月末までに当院小児集中治療室に入室した心臓術後症例のうち、術後に乳糜胸水腹水を確認した症例に対し、後方視的に診療録から疾患、術式、体重あたりの最大流出量(ml/kg/ 日)、ドレナージ期間、治療法、転帰等の検討を加えた。【結果】乳糜胸水腹水の合併例は42 例で心臓術後795例のうち5.2%を占めた。42 例のうち19 例(45%)が新生児で、平均年齢は8.5ヵ月だった。入室時体重の中央値は4.1kgだった。疾患の内訳は大動脈関係が22例(52.4%)と最も多く、術式もそれに関係したものが上位を占めた。体重あたりの最大流出量は中央値47.6ml/kg/day で、ドレナージ期間の中央値は8 日だった。ほぼ全例に食事療法導入されており、年齢に応じてMCT ミルクまたは低脂肪食が選択されていた。オクトレオチドは10 例(使用期間平均16.3日)に投与された。死亡は3例で、いずれも一旦は乳糜胸水腹水量が減少したが、中心静脈内血栓形成や心機能低下、著明な呼吸負荷等の原因で、静脈圧が上昇し、乳糜胸水腹水が再発した。流出量も増加し続け、感染を契機に死亡している。【考察】当施設の乳糜胸水腹水の出現率は、他施設からの報告に比べて非常に多い。手術手技に起因するところが大きいのは言うまでもないが、転帰不良の3症例については術後管理に寄与するところが大きい。小児の場合、リンパ管造影は難しく、胸管結紮も現実的ではない。γグロブリンや凝固因子の定期的な補充および、経静脈的な脂肪製剤投与をしつつ、早期に血行動態を積極的に評価し静脈圧を下げる手段において外科的に介入できる可能性を探っていく必要があると考えた。DP35-6 当院における術後乳糜胸発症症例の検討東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部中山 祐子、居石 崇志、渡邉 伊知郎、本村 誠、新津 健裕、齊藤 修、清水 直樹【背景】乳糜胸は、小児の縦隔腫瘍や先天性心疾患術後合併症としてしばしば経験される。内科治療として絶食、MCTミルク、オクトレオチド投与などが行われるが、治療に難渋することも多い。【目的】小児における術後乳糜胸発症の危険因子を明らかにし、治療介入の時期や方法を再検討すること。【対象と方法】2011年1月から2015年8月までに当院集中治療室に入室した術後患者のうち、乳糜胸と診断された10 例について、疾患背景や術式など、乳糜胸発症の危険因子及び発症後の治療介入、経過について後方視的に検討した。【結果】術後乳糜胸と診断された10例のうち、心臓血管外科術後症例が8例、一般外科術後症例が2例であった。手術時月齢の中央値は4 か月(0-22か月)、手術時体重の中央値は5.3kg(1.7-11.5kg)、心臓血管外科術後症例の心疾患の内訳はTOF 3例、TAPVC 2例、AVSD 2例、TGA 1例であった。術式はTAPVC 修復 2例、BT シャント 2例、TCPC 1例、Jatene 1例、その他 2 例であり、大動脈弓や左房背面など、胸管周囲を操作する術式に加え、肺静脈圧が高くリンパ管拡張をきたしやすい病態で発症リスクが高いと考えられた。一般外科術後症例は縦隔腫瘍 1 例、食道閉鎖 1 例であった。乳糜胸は術後6日目(1-14 日目)で発症し、ドレーン留置期間の中央値は13日(3-30日)であった。初期治療介入として、全例で絶飲食とし、中心静脈栄養を併用していた。経腸栄養再開時は全例MCT ミルクを投与し、オクトレオチド投与が5例に行われたが、うち3例では無効であり、1例に胸管結紮術を行った。経過中、カテーテル関連血流感染を4 例に認め、乳糜胸遷延に伴う合併症と考えられた。【結語】乳糜胸は、治療抵抗例では低蛋白血症、低栄養、感染合併などから死亡に至る場合もある重大な合併症である。術前から危険因子を予測し、早期に診断し治療介入を行うことで、治療抵抗例においてもより良い転帰が得られる可能性があると考えられた。