ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-572-DP34-1 出血傾向・舌の著明な腫脹を契機にビタミンK欠乏症を合併した後天性血友病Aと診断した1 例大阪府泉州救命救急センター野間 貴之、山田 茉美、安達 晋吾、布施 貴司、水島 靖明、松岡 哲也一般的に後天性血友病A とは、出血傾向の既往がないにも関わらず自己免疫性疾患・悪性腫瘍・薬剤・分娩を契機に凝固第VIII因子に対する自己抗体が産生され、凝固第VIII因子活性低下による出血傾向を来す疾患である。今回、出血傾向・舌の著明な腫脹を契機にビタミンK欠乏症を合併した後天性血友病Aと診断した症例を経験したので報告する。 症例は81歳女性。大腸癌術後、狭心症、2 型糖尿病の既往があり、2014年11 月にアテローム血栓性脳梗塞を発症し、左片麻痺・嚥下機能障害のため2015年1 月よりリハビリ目的で他院に入院中であった。2015 年5 月17 日に嘔吐を契機に腸閉塞と診断され、右内頚静脈に中心静脈路が確保された。この頃より出血傾向が出現しカテーテル刺入部から持続的に出血し、カテーテル周囲に皮下出血を認める様になった。5 月28日に舌が著明に腫脹していたため精査目的で当院に入院となった。入院時の血液検査でPT 21%(INR 3.46)、APTT 109.7 秒と著明な延長を認め、ビタミンKの補充、新鮮凍結血漿の補充で凝固障害の補正を行ったところ、第2病日にはPTは正常化したがAPTTは77.7秒と依然高値のままであった。APTT クロスミキシング試験でインヒビターパターン、第VIII因子活性の低下と第VIII因子抑制因子が高力価であった事より後天性血友病Aと診断した。また、ビタミンK1が低値であった事よりビタミンK欠乏症を合併していた事が判明した。今回の症例では後天性血友病AとビタミンK欠乏症という2 つの凝固障害を来す疾患が合併しており、補充療法後のAPTT異常より後天性血友病Aと診断する事ができた。デジタルポスター 34 血液・凝固線溶 2月13日(土) 13:30~14:30 デジタルポスターブース4DP34-2 診断と初期治療に難渋した血球貪食症候群の1 例1)九州労災病院 重症治療部、2)九州労災病院 内科松本 泰幸1)、増田 徹2)、立川 義倫2)集中治療を要する重篤なショック状態の患者は、外傷や心不全を除けば敗血症を念頭に置いて加療に当たることが多いが、敗血症性ショックを強く疑う病歴と臨床所見にも関わらず、消化管手術後に血液疾患によって重篤な経過となった1例を経験したため報告する。【症例】60 代男性。大腸癌術後に経過良好で自宅退院していたが、術後14日目に発熱、下痢が出現、術後18日目に当院を受診した際にはショックバイタルであった。画像検査で特に所見はなく、発熱、DIC、下痢、PCT強陽性、消化管術後の経過から感染巣不明の敗血症として加療を開始した。当初敗血症性ショックとして大量輸液(初日10.5L)とノルアドレナリン投与を行い、50mmHg前後であったsBPはどうにか70mmHgを維持。併せて人工呼吸器管理、MEPM投与、FFP投与、アンチトロンビン製剤、rTM投与、CHDF、エンドトキシン吸着療法が行われていたが、エンドトキシンは陰性であったため吸着療法は初日のみの施行とし、尿量が確保できたためCHDFも2日間で終了、3日目の段階で血液培養も陰性であったため抗生剤も中止した。線溶亢進型DIC、尿量増加に矛盾した腎機能増悪、フェリチン高値、抗核抗体陽性、LA抗体陽性の経過から膠原病または血球貪食症候群やStill病の増悪による経過を疑いステロイドパルス療法を施行したところ、循環動態及び全身状態は著明に改善した。血液内科に転科しステロイド加療を継続し、気管挿管10 日目には抜管、週3 回継続していた間欠透析も入室17 日目に終了できた。本症例はウイルス感染による血球貪食症候群が疑われ、現在各種検査については提出中であるため学術集会ではその結果を踏まえて考察する。本例では各種培養が陰性、尿量確保後も腎機能増悪しDIC が線溶亢進型でフェリチンも異常高値であり診断に結びつくことが出来た。敗血症らしくない所見を認めたときは、膠原病や血液疾患を一考することが重要であると認識させられた1例であった。DP34-3 テイコプラニンによる免疫性血小板減少性紫斑病で肺胞出血を来した1 例東京慈恵会医科大学附属病院 集中治療部阿部 建彦、瀧浪 將典、内野 滋彦、齋藤 敬太、遠藤 新大、飯島 正紀、小林 秀嗣、齋藤 慎二郎、吉田 拓生、横田 泰佑薬剤による免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)はβラクタム系、バンコマイシンなどで多く報告されているが、テイコプラニン(TEIC)によるITPは本邦での報告はない。本症例は、コントロール困難な感染と腹膜透析により血中濃度が下がらず血小板減少が遷延したため、診断に苦慮した一例である。【症例】65歳男性、右下腿蜂窩織炎で入院中、創部感染に対しTEICを投与したところ、投与後4日目より血小板数が35.8万/μLから2.2万/μLまで低下した。血小板輸血にて対応したが、投与後12日目より発熱を伴う低酸素血症を認め、ICU 入室。その後も低酸素血症が進行し、ICU入室2 日目に挿管管理となったが、その際、血性の分泌物が吸引でき、血小板減少による肺胞出血の診断に至った。血小板減少症の原因として、骨髄は過形成の状態であり、IVIG を投与することで血小板数の劇的な回復を得たため、TEIC によるITP と診断。血小板上昇後は血痰の量も減少し、ICU入室5日目に抜管し、6日目に退室となった。【考察】薬剤性ITPの症例報告レビューでも1)抗生剤ではピペラシリン、ST合剤、リファンピシン、バンコマイシンでの報告のみである。治療として血漿交換やステロイド、IVIG など様々な方法が試みられているが、一定の効果は得られていない。薬剤によるITPは通常、被疑薬の中止から1週間程度で回復してくることが多く、被疑薬の再投与をしないよう注意を要する。潜在性に薬剤性ITPを起こしている可能性があり、投薬時期と血小板数の関連を念頭に置き、鑑別診断に入れておく必要がある。1)Blood 2010, 116: 2127-33