ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-559-DP27-4 AN69ST膜によるFGF-23 吸着の優位性1)国立病院機構大阪医療センター臨床工学室、2)同センター腎臓内科峰松 佑輔1)、倭 成史2)、池宮 裕太1)【目的】リン利尿ホルモンである線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)は、血中レベルの上昇が慢性腎臓病患者の心、腎予後のみならず、近年急性腎障害(AKI)の生命、腎予後とも相関することが報告されている。また、in-vitro実験で炎症性サイトカインの刺激により骨細胞でのFGF-23産生が増加することが知られている。さらに、FGF-23の上昇は単球での局所的ビタミンD発現低下をもたらし、免疫応答不全の一因になる可能性が示唆されている。したがって、敗血症性AKIにおける血中FGF-23レベルの制御は従来の抗サイトカイン療法とは異なる新たな治療戦略になると推察する。血中FGF-23除去では、これまで維持血液透析患者を対象にon-line HDF によるFGF-23除去の報告はあるが、吸着除去の可能性については未知である。しかし、我々は分子量が炎症性サイトカインHMGB1 と同じ約30 kDa であることに着目し、CRRTの使用膜のFGF-23 吸着能について、バッチ法による以下のin vitro 実験を施行した。【方法】PS、PMMA、AN69ST の3 種類の膜素材を用いて、FGF-23 濃度を実験1: 5,000 pg/mL、実験2: 50,000 pg/mL の2 種類に分け、開始から240 分後までの経時的濃度変化を調査した。【結果】実験1: 60分後までは3群間で有意差は認めなかったが、240分後には他の膜に比べAN69STで有意に低下した。(p<0.01)。実験2: 60分後、240後ともにAN69ST膜で有意に低下した(p<0.05)。一方、Alb値については両実験ともほぼ不変であり、FGF-23 吸着にはAlb を介した影響はないと考えられた。【結論】AN69ST膜によるFGF-23 の吸着能の優位性が示された。敗血症性AKI におけるAN69ST 膜の治療効果には抗サイトカインのみならず、直接的および炎症性サイトカイン吸着を介した間接的な抗FGF-23 療法としての臨床効果を期待しうる。DP27-5 直並列法を用いたPMX-DHP施行症例の検討1)手稲渓仁会病院 臨床工学部、2)手稲渓仁会病院 麻酔科集中治療室千葉 二三夫1)、多田 亮祐1)、鈴木 学1)、齋藤 大貴1)、今野 裕嗣1)、菅原 誠一1)、渡部 悟1)、横山 健2)【はじめに】急性血液浄化療法においてポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)はsepsisに対する重要かつ有用な治療法の1つである。当院においても現在まで179例にPMX-DHPを施行しており、2008年からは直並列法を用いたPMX-DHPを行なっている。今回、直並列法を用いたPMX-DHP 施行症例の検討とその有用性について報告する。【対象および方法】2008 年6 月から2015年5 月までの過去7 年間にPMX-DHP に直並列法を用いた30例を後方視的に検討した。【結果】平均年齢66.8歳(16~91歳)、男女比21:9、疾患別では、消化器疾患群18例、呼吸器疾患群6 例、心・大血管群4 例、その他群2 例であった。浄化方法は、19 例にCH(D)F+PMX、9 例にHF-CHDF+PMX、2 例にHD+PMX の直並列法を用いた。30 例中18 例(60%)を救命し得た。【考察】長時間PMX-DHP施行時にCH(D)F及びHF-CHDFなどを直並列で同時に治療を行うことにより、アシドーシスの改善やHumoral mediatorの除去など迅速な対応が可能となり循環動態の改善に有用と思われた。また直並列専用回路を用いることで簡便に回路の脱着が容易となった。【まとめ】長時間PMX-DHP 施行時には直並列法を用いた血液浄化療法は有用な方法と考えられた。DP27-6 ROTEMRを用いて評価したALSにおける合成能補助療法としてのPDFの有用性1)琉球大学 医学部 附属病院 ME機器センター、2)琉球大学 医学部 附属病院 麻酔科 集中治療部平山 千佳1)、神里 興太2)、照屋 孝二2)、渕上 竜也2)、垣花 学2)【目的】近年、血液凝固機能検査のpoint of care monitorとして注目されているトロンボエラストメトリー(ROTEMR)を用いて、人工肝補助療法(Artificial Liver Support ; ALS)におけるPDF(Plasma Filtration with Dialysis)の有用性を検討した。【症例】54歳、68.9kgの男性。劇症肝炎亜急性型(HBVキャリアの急性憎悪)にて、ALS としてSHEDD-fA+PDFを脳死肝移植までのbridge use として連日10 日間施行した。【方法】PDF はSHEDD-fA に直並列に接続し、膜型血漿分離器Evacure2A10R、FFP10Uを用いて連日8 時間施行した。治療前・4時間・8時間経過時に採血し、ROTEMR を用いて内因系・外因系凝固・フィブリノゲン値やその機能を、フィブリン形成が開始するまでの時間(clotting time ; CT)、クロット形成の初期速度を反映するクロット形成時間(clot formation time ; CFT)およびアルファ角(Alpha angle ; α)、凝血塊の強度(maximum clot firmness ; MCF)で評価し、合成能の補助療法としてのPDFの治療効果を検討した。【結果】臨床症状として消化管出血が改善した。フィブリノゲンは初回PDF 開始4 時間でMCF : 7mm から12mm[正常参照値 : 10-24]へ早期に改善がみられ、PDF10 回終了時には22mm、また、その他、全ての評価項目においても止血能はほぼ正常化された。【考察】Evacure2A10R におけるPDFでは、アルブミンの篩係数は0.3であることから、施行中に中から大分子領域に存在する凝固因子の喪失を抑制しつつ、FFPで効率的に補充することができた。そのためPDFを連日施行した結果、止血能を改善させ、維持することが可能であった。ROTEMRは数値データだけでなく波形から視覚的にも容易に評価できると思われた。【まとめ】PDF はbridge to transplantationとして、合成能障害による凝固異常の改善に有用であった。