ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-555-DP25-4 Stanford A型慢性大動脈解離に、真腔狭窄から急性肺水腫、心原性ショックを来した1 症例1)久留米大学病院 集中治療部、2)久留米大学 心臓血管外科佐藤 晃1)、新山 修平1)、有永 康一1)、和田 久美子2)、飛永 覚2)、赤須 晃治2)、高瀬谷 徹2)、平田 雄一郎2)、明石 英俊2)、田中 啓之2)背景)Stanford A型大動脈解離の合併症としての上行大動脈の真腔狭窄に伴う急性心不全はまれである。今回慢性大動脈解離(Stanford A型)に、心原性ショック、肺水腫を発症し、上行大動脈-遠位弓部大動脈間での圧較差(147mmHg)より、真腔狭窄による急性心不全と診断し、上行全弓部大動脈置換術を施行し救命し得た1 症例を経験したので報告する。症例)77 歳女性、Stanford A型慢性大動脈解離の診断で手術待機中であったが、突然の呼吸困難、意識レベルの低下を認め当院へ救急搬送された。来院時、意識レベルE4 V4 M6で、血圧78/43mmHg、心拍数134 回/ 分、呼吸数32 回/ 分、ショックおよび急性呼吸不全を呈しており直ちに気管挿管を行った。胸部単純レントゲン写真にて著明な肺うっ血所見を認めていたが、造影CT検査では、明らかな大動脈解離の進行、破裂所見は認めなかった。冠動脈ステント留置術の既往があることより、心原性ショックの原因精査目的にて緊急心臓カテーテル検査を施行した。結果として冠動脈病変はなく、上行大動脈- 遠位弓部大動脈間での圧較差(147mmHg)が認められた事より、真腔狭窄による急性心不全と診断し、上行全弓部大動脈置換術を施行し救命し得た。考察)Stanford A 型大動脈解離における偽腔またはinitimal flap による上行大動脈の真腔狭窄に伴う急性心不全の合併は極めて稀であり、現在まで数例の報告があるのみである。結語)大動脈解離に伴う重篤な合併症として、報告頻度は少ないものの真腔狭窄に伴う急性心不全の発症も考慮する必要がある。DP25-5 CT では診断に苦慮した、全周性内膜剥離を呈したStanford A型急性大動脈解離東京都立墨東病院 救命救急センター山岸 利暢、中田 一弥、湯川 高寛、横山 太郎、重城 未央子、柏浦 正広、田邉 孝大、杉山 和宏、明石 暁子、濱邉 祐一【症例】未加療の高血圧を既往にもつ58 歳女性。突然の胸苦しさと意識消失発作で当院救命センターに救急搬送された。搬入時、JCS-III-200、瞳孔径は両側3mmで対光反射は両側迅速、脈拍72回/分、血圧60/42mmHgで腹痛や四肢麻痺はなかった。胸背部痛を訴え、意識の改善と悪化を繰り返し、時折左共同偏視が見られた。心臓超音波で心嚢液の貯留や壁運動異常はなかったが、重度の大動脈弁逆流(AR)と拡張期にflapの左室内腔への陥入、収縮期にflapの動揺が見られた。心電図では有意なST変化は見られなかった。造影CTで腕頭動脈遠位から両側総腸骨動脈まで及ぶ偽腔開存型の解離腔を認めた。大動脈基部から上行大動脈には解離腔は確認できなかったが、超音波所見と合わせて上行大動脈の全周性内膜剥離を呈したStanford A型大動脈解離と診断し、緊急手術を施行した。術中所見で上行大動脈のsinotublar junction から15mm ほど遠位に全周性の内膜剥離を認め、解離腔の近位は左右の冠動脈入口部付近まで及んでいた。大動脈弁尖の変化はなかったが、弁輪は拡大し、上行大動脈のみグラフト置換し弁輪縫縮した。術後、大動脈弁逆流は消失した。経過中、院内肺炎を合併し抗菌薬治療を要したが、後遺症を残すことなく第58 病日に独歩退院となった。【考察】全周性内膜剥離によるStanford A型大動脈解離は、上行大動脈に解離腔を認めず診断に苦慮することが多い。また、flap が中枢側に嵌入した場合、冠動脈入口部を塞ぎ心筋虚血を惹起する、いわゆる’flap suffocation’ を呈したり、flap が左室に入り込み重度のAR を呈したりする。末梢側でのflapの嵌入による重積により脳血流低下や循環虚脱を呈したりする。本症例では早期診断、早期治療により良好な転機を辿った。DP25-6 BT シャント閉塞により心肺停止となり経皮的バルーン拡張術で救命し得たファロー四徴症の成人例中頭病院安富 き恵、仲村 尚司、米丸 裕樹【症例】29 歳女性.ファロー四徴症極型に対してBlalock-Taussig シャント術を2回施行され,他院にてフォロー中であった.既往歴に原田病がありプレドニゾロン内服中.数日前から感冒症状,下痢,体重減少があった.受診当日胸部絞扼感と呼吸困難感を認め,タクシーで病院へ向かう途中に心肺停止状態となり救急搬送された.経皮的心肺補助装置(PCPS)導入し体外循環確立後,蘇生を得られ,挿管下での意思疎通も良好であった.第二病日にPCPS離脱を試みたが,離脱後徐々に酸素化の悪化と血圧の低下を来たしたため再導入した.発症前の脱水の病歴や,酸素化悪化からの心肺停止よりシャント不全が疑われた.造影CT検査でシャント狭窄を認めたが,既に複数回の手術を経ており外科的処置は困難が予想されたため,第7病日に経皮的バルーン拡張術を行った.拡張後はSpO2 の改善が得られ,第8病日にPCPS 離脱,第9病日に抜管し,その後もバイタルサインは安定していた.【考察】近年外科手術の進歩やデバイスの発達により手術成績が向上し,先天性心疾患を持つ成人患者が増加しているが,解剖および血流動態が通常とは異なっており,特異的治療が必要となることが多い.小児の先天性心疾患の診療においてはシャント閉塞に対する経皮的血管形成術が行われているが,成人での報告は少ない.今回我々は,成人の人工血管シャントに対して,バルーン拡張術を行い良好な転帰を得た一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.