ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-550-DP23-1 頸部超音波検査により抜管前に食道癌術後の両側反回神経麻痺を診断し得た1 例横浜市立大学附属病院 集中治療部山本 夏啓、山口 嘉一、堺 結有、西周 祐美、吉田 輔、出井 真史、高木 俊介、野村 岳志、山口 修、後藤 隆久[はじめに]近年、頸部超音波検査で声門を観察し、反回神経麻痺の有無を評価する方法の有用性が報告されている。抜管する前に頸部超音波検査で食道癌術後の両側反回神経麻痺を疑い、安全に管理することができた症例を経験したので報告する。[症例]68 歳男性。食道癌に対し、食道切除、胃管再建、3領域郭清の手術を受けた。術中所見として、左反回神経周囲のリンパ節に浸潤を認め、剥離を行った。また、右反回神経は術中に確認、温存していた。手術終了後、手術室で抜管したが、抜管約5分後に気道狭窄音が聴取されるようになった。咽頭ファイバーで右声帯固定、左声帯軽度固定の所見を認めたため、再挿管された。ICUで経口気管挿管、人工呼吸管理を継続した。術後2日目に自発呼吸テスト、カフリークテストに合格し、抜管の方針となったが、抜管前に実施した超音波検査では、自発吸気時に声帯の動きを認めず、両側反回神経麻痺が遷延している可能性が高いと考えられた。チューブエクスチェンジャーを留置して抜管した。抜管直後より上気道狭窄症状を認め、ファイバーで両側声門固定の所見を認めたため、留置していたチューブエクスチェンジャーを使って酸素化・再挿管を行い、同日気管切開術を行った。気管切開術後は人工呼吸器を離脱し、術後3 日目にICU を退室した。[考察]頸部超音波検査による咽頭、声帯の観察が頸部手術後の声帯麻痺の診断に有用であると報告されている。本症例では経口気管チューブ抜管前に声帯を観察したことにより、あらかじめチューブエクスチェンジャーを留置して抜管することで安全に抜管および再挿管することができた。頸部手術後など、反回神経麻痺のリスクが高い症例に対し、超音波検査による声門の評価が有用である可能性が示唆された。[結語]経皮エコーにより頸部手術後の反回神経麻痺を抜管前に評価することができた症例を経験した。デジタルポスター 23 気道・呼吸・呼吸管理④ 2月13日(土) 11:00~12:00 デジタルポスターブース3DP23-2 超音波ガイド下鎖骨下静脈穿刺に際し、気胸の合併を超音波で迅速に診断した一例1)名寄市立総合病院 麻酔科、2)名寄市立総合病院 救急科衛藤 由佳1)、舘岡 一芳1)、丹保 亜希仁2)【諸言】小型で解像度の高い超音波診断装置の普及により、超音波ガイド下中心静脈穿刺が浸透している。穿刺針や静脈周囲の構造を確認しながら穿刺できるため、安全性が高いという報告が多いが、過信による合併症は発生している。また、超音波診断装置は肺疾患の診断にも利用される。今回、全身麻酔下での中心静脈(CV)ポート留置術による気胸を超音波で迅速に診断した例を経験したので報告する。【症例】60 代女性、全身麻酔下での診断的腹腔鏡およびCVポート留置術が予定された。助手がリニア型プローブで右鎖骨下静脈短軸像を描出し、術者が交差法で穿刺を行ったが、針先が描出されない状態で穿刺針の根元まで刺入されていた。2回目の穿刺でも針先は描出されなかったが、鎖骨下静脈が圧迫されている像が得られ、貫通法で外筒を留置した。その後、定型的にCVポートを留置した。換気量や酸素化に変化はなかったが、医原性気胸を懸念し肺エコーを施行したところ、右前胸部でlung slidingの消失、Mモードでバーコードサインを認め、気胸と診断した。気胸の程度を評価するためlung pointを検索したが、側胸部でも認めないため高度の気胸と判断、胸腔ドレーンを挿入した。気胸は徐々に改善し、第11病日に抜去した。【考察】超音波ガイド下中心静脈穿刺の際、穿刺針先端が描出できない状況で針を進めると重篤な合併症を引き起こす可能性があり、超音波ガイド下穿刺の特徴をよく理解していなければ、安全な穿刺は不可能である。手元のプローブと穿刺針の刺入角度や深さ、得られた画像との整合性を確認することが重要で、画像のみに集中することは大変危険である。【結語】超音波ガイド下中心静脈穿刺であっても、正しく施行しなくては気胸などの合併症を引き起こすことに留意するべきである。また、気胸は超音波で簡便に診断することができ、中心静脈穿刺後における気胸合併の有無を検索することは有用であると考える。DP23-3 輪状甲状間膜切開と肺エコーを施行した困難気道管理の1 症例岩手医科大学 医学部 麻酔科山田 直人、鈴木 健二【はじめに】一般病棟で輪状甲状間膜切開を行い、両肺の換気状態を肺の超音波画像(肺エコー)で確認した困難気道の1 症例について報告する。【症例】40 歳女性、165cm、85kg、急性膵炎の入院治療中であった。多発性硬化症の既往歴があり、急性増悪による呼吸困難を発症した。気管挿管が必要となったが、挿管困難のために麻酔科医が病棟に呼ばれた。マスク換気を2人がかりで行っていたが、SpO2 60%、HR 140bpm、BP 80/60mmHgであった。また、下顎後退、頭部後屈不能、開口困難の上、複数回の気管挿管施行による口腔内の浮腫、出血を認めた。ビデオ喉頭鏡で気管挿管を試みたが、喉頭鏡の口腔内の挿入が困難かつ、血性分泌物により喉頭蓋の視認が困難であった。SpO2 が更に低下し、徐脈となったため、輪状甲状間膜切開を行った。肥満体型のため、輪状甲状間膜より気管挿管後も呼吸音は聴取困難であったが、肺エコーにより視覚的に換気状態が確認出来た。【考察】緊急時の輪状甲状間膜切開を行う機会は少ない。本症例は通常の手技による気管挿管が不可能であり、SpO2 低下、徐脈となったために輪状甲状間膜切開を行った。病棟にあった縫合セット内のメスとペアン鉗子を用いて手技が可能であった。必ずしも気道確保の道具が充実しない一般病棟においても、気道確保の最後の手段となりうると思われた。手技が迅速に行われるためには適応を含めた病棟スタッフの理解が必要であり、困難気道管理症例の評価方法、気道確保器具の使用方法に加えて、輪状甲状間膜切開について病院内での情報共有の必要性を感じた。また、気管挿管後に呼吸音聴取が困難な場合でも、肺エコーによる視覚的な換気の確認は同時に複数名で行う事が可能であり、有用と思われた。