ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-546-DP21-1 壊死性軟部組織感染症に対するデブリドマン後の創管理1)岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター、2)兵庫医科大学病院 救命救急センター中野 志保1)、加藤 久晶1)、水野 洋佑1)、北川 雄一郎1)、田中 卓1)、神田 倫秀1)、中野 通代1)、白井 邦博2)、豊田 泉1)、小倉 真治1)【背景】当施設では、壊死性軟部組織感染症に対する十分なデブリドマン後、創閉鎖術までの創管理に局所陰圧閉鎖療法(negativepressure wound therapy:NPWT)を用いている。【対象と方法】2007 年3 月~2015 年5 月に当施設に入院した壊死性軟部組織感染症20例のうち、来院後3時間で死亡した1例を除く、19 例(Fournier’s gangrene 5 例、四肢・体幹部壊死性筋膜炎・筋炎14例)を対象とし、NPWT使用率、NPWT開始時期と使用期間、創閉鎖方法、手術回数について検討した。【結果】全例当センター入院当日または翌日に初回デブリドマン手術が施行された。初回手術後、19例中13例(68.4%)にNPWTが使用され、使用されなかった6例は、術後1週間以内に創部を縫合閉鎖できた2例と壊死の進行により患肢切断もしくは死亡した4例であった。NPWT開始時期は入院後7(0 - 33)日目、使用期間は28(3 -125)日間であった。創閉鎖方法に関しては、13 例は縫縮および植皮術で創閉鎖が可能であったが、アキレス腱が露出した1例と、坐骨骨髄炎により創治癒が遷延した1例に対しては皮弁術を必要とした。また2 例に対して切断術を施行した。創閉鎖に要した手術回数は3(2 - 8)回であった。8回の手術を要した2 例は、背部から頸部におよぶ広範な皮膚欠損を生じた1例と坐骨骨髄炎を併発した1例であり、これらはNPWTを各32・125日間使用されていた。【考察】開放創へのNPWTの使用は、良好な肉芽形成の促進効果が報告されており、当施設においても多数の症例で縫縮および植皮による比較的簡便な方法で創閉鎖が可能であった。しかし、広範な腱の露出や骨髄炎の併発など、NPWTを漫然と施行するのではなく、早期の皮弁術を考慮すべき症例もあると考えられた。デジタルポスター 21 感染・感染対策① 2月13日(土) 11:00~12:00 デジタルポスターブース1DP21-2 当院における壊死性軟部組織感染症への取り組み1)東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学病院 救急医学講座濱口 純1)、清水 敬樹1)、笠原 道1)、荒川 裕貴1)、鈴木 茂利雄1)、萩原 祥弘1)、金子 仁1)、光銭 大裕1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【背景】皮膚・軟部組織感染症は表在に限局した軽症な疾患から,皮下組織や筋膜にまで達する蜂窩織炎,壊死性筋膜炎のように生命予後に関わる重症な疾患まで多岐に渡る。治療には抗菌薬の投与を行うが,特に壊死性筋膜炎を代表とする壊死性軟部組織感染症の予後は悪く,早期の外科的デブリードメントによるsource controlが重要となる。しかし発症早期には,身体所見や画像所見からは蜂窩織炎との鑑別が難しく,under triageにより治療介入が遅れ,致死的となることがある。そのため,当院では壊死性軟部組織感染症かどうかの判断が難しい場合には,積極的に外科的デブリードメントを行う方針としている。【方法】2013年4月から2015年6 月に当院救命救急センターへ入院となった, 重症軟部組織感染症9 症例を対象とした。1. 壊死性筋膜炎の診断(蜂窩織炎との鑑別)にはLRINEC score が用いられるが,その有用性について検証した。2. 壊死性軟部組織感染症に対する外科的デブリードメントの治療効果判定として,処置前後のshock index やその他パラメーター変化を評価し検証した。【結果】1. LRINECscore は5-10点と,一部の症例で壊死性軟部組織感染症であるにも関わらず,点数を満たさないものがあった。2. ほぼ全ての症例で外科的デブリードメントによりバイタルサインや採血データの著明な改善を認めた。【考察】壊死性軟部組織感染症の治療の要は,早期に外科的デブリードメントを行うことにある。治療介入の遅れは致死的になるため,疑わしい場合には身体所見や画像所見,LINEAC scoreで診断に至らない場合でも,壊死性軟部組織感染症として早期治療介入が必要となる。DP21-3 2015年における胆道系分離菌の解析1)名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野、2)名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部高谷 悠大1)、八木 哲也2)、東 倫子1)、稲葉 正人1)、井口 光孝2)、松田 直之1)【はじめに】名古屋大学病院救急科は,救急外来およびICUで,胆道系感染症を管理する機会が多い。Tokyo Guidelines 2013 にも言及されているように,施設における胆道系感染症の起炎菌と薬剤感受性を定期的に評価することで,胆道系感染制御に役立てることができる。2015年上半期の当院の胆道系から検出された菌の特徴について報告する。【対象と方法】2015 年1 月1 日~6 月30日に当院に入院していた患者で,胆汁検体が提出された107 名を対象とし,各患者の胆汁から検出された計282 株の分離菌種とその薬剤感受性について解析した。期間内に同一患者から同一菌株を複数回検出している場合は初回検出菌で判定した。薬剤感受性はCLSI M100-S24で判定した。【結果】検出された上位菌種の内訳は順に,Enterococcus faecalis 28株, Enterococcus faecium 24株,Klebsiella pneumoniae 24 株,Enterobacter cloacae 23 株,Escherichia coli 21 株,Klebsiella oxytoca 21 株などであり,Enterococcus属,腸内細菌科細菌が多い結果だった。腸内細菌科細菌の一部には,第3世代セフェム系薬に耐性を示す高度耐性菌が検出され,Enterobacter aerogenes の60.0% (3 株)Enterobacter cloacae の17.4% (4 株),Citrobacter freundii の45.5% (5 株),Serratia marcescensの18.2%( 2株)が高度耐性株だった。MRSAはS. aureusの25%( 2株)に認めた。ESBL産生株は検出されなかった。【結語】当講座は,胆道系感染症の治療方針として,ドレナージを優先すること,検出菌の薬剤感受性に基づいて抗菌薬をde-escalation することを重視している。今回の結果からは,敗血症性ショックなど胆道感染症の重症例では,empirical therapyとして広域抗菌薬及び抗MRSA 薬の使用は妥当であると評価した。今後も院内全体の胆道系分離菌種の解析をもとに,集中治療室での胆道系感染症に対する抗菌薬の使用指針を各年で見直していく方針である。