ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-544-DP20-1 第一回法的脳死判定から第二回法的脳死判定まで一週間を要した脳死下臓器提供症例大阪市立総合医療センター 救命救急センター師岡 誉也、孫 麗香、山下 智也、立木 規与秀、大川 惇平、重光 胤明、福家 顕宏、有元 秀樹、宮市 功典、林下 浩士【はじめに】脳死下臓器提供の第一回法的脳死判定と第二回法的脳死判定の時間間隔は施行規則で「6歳以上では6 時間以上、6歳未満で24 時間以上」とあるのみで、ドナーの状態を考慮すれば可能な限り短い間隔で第二回を施行し臓器提供に繋げたい。厚生労働省の「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 検証のまとめ」によると、第一回と第二回法的脳死判定の間隔は平均7時間5分、最長でも24時間33 分である。我々は、第一回法的脳死判定後に臓器提供の除外基準である「全身の感染症」が判明し、1週間の抗生剤治療および全身管理を経て第二回法的脳死判定および脳死下臓器摘出に至った症例を経験した。その間の患者および家族への対応について若干の考察を加えて報告する。【症例】47 歳 女性。自転車運転中に車と衝突し受傷。救急隊到着時は心停止であったが搬送中に心拍再開。来院時 意識レベルGCS3(E1V1M1)瞳孔5mm/5mm、対光反射両眼ともなく固定。頭部CTにてTCDB分類びまん性損傷IV。患者家族と相談し積極的治療を控える方針で集中治療室に入室。第4病日 家族の申し出より脳死下臓器提供を前提とした法的脳死判定をすることとなり、同日 第一回法的脳死判定を施行。次日(第5 病日)前日採取した血液培養のGram 染色で肺炎球菌様のグラム陽性球菌陽性が判明したため当初予定していた第二回法的脳死判定を中止。再度 医療チーム内そして家族と話し合い、感染症に対する治療および臓器保護を目的とした集中治療管理をすることとした。第6病日に採取した血液培養の最終報告が陰性と確定した第11 病日 第二回法的脳死判定を行い、第12 病日 臓器摘出となった。【結語】第二回法的脳死判定まで1 週間という長期間 臓器温存を目的とした集中治療を経て脳死下臓器提供に辿り着いた症例を経験した。当初の積極的治療を控える方針から積極的に全身管理する方針に切り替え乗り越える難しさを医療チームおよび患者家族と共有した。デジタルポスター 20 脳死・移植 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース10DP20-2 小児脳死事例に対して長距離搬送を行った一例1)富山大学 医学部 小児科、2)富山大学附属病院 集中治療部種市 尋宙1)、澁谷 伸子2)【はじめに】小児の脳死事例に対する医療のあり方は、現在も現場で混乱が続いている。小児終末期医療のあり方について、医療者間における議論、情報共有の不足がその一因であろう。当科では、小児脳死事例に対して、その診断と明確な病状説明を心がけ、家族とできる限り時間をかけて話し合い、ICU スタッフ間の議論、情報共有を通して方針を決定している。【症例】他県から当地へ遊びに来ていた際に不慮の事故に遭い、心肺停止に陥った。1 時間後に心拍再開し、当院へ搬送。積極的な集中治療を行うも脳死とされうる状態と判断した事例を経験した。脳死判定後に、「患児が長期間生存することは不可能な状況であること」「臓器提供の道があること(オプション提示)」「厳しい条件になるが地元での看取りについてもできる限り対応していきたいこと」を伝えた。家族が「地元で看取りたい」という答えにたどりつき、「できるだけ多くの友人たちと会わせてあげたい」と思いを述べた。これらの希望を受けて、搬送先病院の手配と搬送手段についての検討を始めた。その後、患児の循環動態は不安定であり、高いリスクがあることは理解していたが、家族と思いを共にし、医学的判断のもと、搬送を決断した。搬送中、尿崩症の再発など問題はあったが、4時間の搬送を遂行した。患児は転院2週間後に死亡確認となった。転院時にグリーフカードを渡し、当科の連絡先を伝えていた。家族は、事故の1年後に事故現場を訪れるとともに遠方より主治医のもとに来院し、感謝の意を述べられた。【考察】家族、主治医の関係を含め小児終末期医療のあり方において必要なこととは何か、その問題について本事例を通して考察し、議論していきたい。救命出来ないと分かっている状況でも、われわれ医療者が患児、家族に提供できるものは医療であり、オプション提示を含めて、その選択肢をどれだけ提示できるかが重要ではないかと考えている。DP20-3 救命救急センターの集中治療下における脳死・心停止下臓器提供の現状と問題点1)東京医科大学 八王子医療センター 救命救急センター、2)東京医科大学八王子医療センター 臓器移植コーディネーター櫻井 将継1)、弦切 純也1)、櫻井 悦男2)【背景・目的】救急医は、診療患者の最期の望みを叶えるという目的で臓器提供に携わる頻度が高い。今回、自施設における臓器提供の推移と問題点について検討した。【方法】2008年から過去8年間で、当院救命救急センターの臓器提供の推移を記録し、臓器移植法改正前後にわけて分析した。そこから現在の臓器提供の問題点について検討した。【結果】法改正前に13例の臓器提供が行われ、うち12 例(92%)が心停止下提供であった。法改正後から現在まで15 例の臓器提供が行われ、脳死下11例(73%)、心停止下提供4 例(27%)であった。法改正後、19 例に心停止下臓器提供の意思表示確認を行い、11 例(58%)が口答同意し、うち6例に書類承諾を得た。しかし、実際に臓器提供に至ったのは4 例で、提供に至らなかった理由は、入院中の腎機能低下2 例、血圧低下の遷延1例、考え直し2例、手続き面倒で辞退2 例であった。【考察】臓器提供の選択肢を家族が知ることは、患者や家族の意思を尊重する契機としても重要である。当救命センターはその理念のもと、患者の救命が困難な状況では臓器提供の意思確認を行ってきた。その結果、法改正以降、脳死下提供件数は増加し、心停止下提供件数は有意に減少していた。これは、心停止下臓器提供に求められる患者条件の複雑化、脳死下臓器提供の条件との重複、手続きの複雑さなどが考えられる。尊重すべき臓器提供の意思表示があるにも関わらず、提供に至らない症例も増加しており、種々の問題は臨床現場をより混乱させている。