ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-540-DP18-1 敗血症関連のバイオマーカから見た菌血症(Bacteremia)と敗血症(sepsis)の比較東京医科大学八王子医療センター 特定集中治療部池田 寿昭、泉谷 義人、須田 慎吾、上野 琢哉、小野 聡はじめに:集中治療室(ICU)に入室してくる患者の多くは、高度侵襲を伴った多臓器不全症例や重症敗血症・敗血症性ショック症例であり、ICUでの死因の多くはこれらの病態で占められている。また、重症症例では、炎症性メデイエーター等により血管内皮細胞での透過性亢進が間質の浮腫を引き起こし組織酸素代謝障害から多臓器不全(MOF)につながるとされ、敗血症診断および治療は早期から行われるべきと考えられる。目的:敗血症を理由にICU入室した症例で、血液培養が施行された症例を血液培養にて細菌が検出された群(陽性群、31例)と検出されなかった群(陰性群31例)に分類し、敗血症関連のマーカ(プロカルシトニン:PCT、Interleukin-6:IL-6、プレセプシン:Pres、endotoxin activity assay:EAA)および背景因子、重症度(APACHE2スコア、SOFA スコア)、28 日後の転帰について検討した。結果は、mean ± SD(median)で表し、統計処理はMann-WhitneyU-test 及びChi square test、Fisher's test を用い、危険率< 0.05 にて有意差ありとした。結果:年齢、性別及び重症度は群間に有意差は無かった。血液検査所見では、有意差は無いものの、陽性群は陰性群より低値を示す傾向にあった(12.2±10.9(9.1)vs18.1± 10.1(15.9)。腎機能障害は両群とも認められていたが群間には有意差は無かった。乳酸値は、陽性群は陰性群に比して高値を呈していた。PCT 値は、陽性群35.9 ± 75.3(7.8)、陰性群17.1 ± 30.9(2.0)で陽性群が高い傾向にあった。EAA は、陽性群0.54±0.20(0.58)、陰性群0.37±0.26(0.34)で陽性群は陰性群に比して有意(p<0.05)に高値を呈した。28日後の生存率は、陽性群90.9%、陰性群87.1%で有意差は無かった。結語:血液培養陽性群でEAA 値は有意に高値を呈したが、28 日後の転帰には影響を及ぼさなかった。デジタルポスター 18 多臓器不全・敗血症② 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース8DP18-2 CD4 陽性T 細胞でのPD-1 発現からみた術後感染性合併症のリスク評価に関する検討1)東京医科大学 八王子医療センター 特定集中治療部、2)防衛医科大学校 外科学小野 聡1)、久保 徹2)、須田 慎吾1)、泉谷 義人1)、上野 琢哉1)、池田 寿昭1)【目的】消化器癌待機手術症例を対象に術前あるいは術直後の免疫機能評価から術後感染性合併症の発症が予測可能か否かについて検討した。尚、免疫機能の評価としてCD4 陽性T 細胞の機能を抑制するprogrammed death 1(PD-1)に注目した。【方法】待機的に開腹手術を行った消化器癌手術101 例(大腸癌63例、胃癌25例、その他13 例)を対象とした。尚、術前に炎症所見を認める症例は除外した。術前および術直後に末梢血を採取し、flowcytometryを用いてCD4+T細胞数、CD4+T細胞でのPD-1 発現率を測定した。同時にNLR比(Neutrophil/Lymphocyte)も測定した。術後感染性合併症は、皮膚切開創感染、臓器・体腔感染、遠隔部位感染に分類し検討した。【成績】1.術後感染性合併症例では非合併例に比べ、術直後のCD4+T細胞数が有意に低値であった。また、CD4+T細胞でのPD-1発現率は術前、術直後において感染合併例で有意に発現率が増加していた。2.臓器・体腔感染では、CD4+T 細胞でのPD-1発現率が術前、術直後において非感染例に比べ有意に高値であった。一方、皮膚切開創感染や遠隔部位感染ではいずれも非感染群と差を認めなかった。3.CD4+T細胞でのPD-1発現率とNLRとの間には有意に正の相関関係を認め、NLRが3以上ではPD-1 発現率が有意に高値であった。【結論】術前後のCD4 陽性T細胞におけるPD-1発現率は、術後感染性合併症の発症と深く関連しているため、術前のリスク評価や感染性合併症の早期診断に有用である可能性が示唆された。DP18-3 敗血症性DIC 治療において臓器障害の改善に寄与する因子は何か信州大学 医学部 救急集中治療医学教室望月 勝徳、森 幸太郎、八塩 章弘、竹重 加奈子、城下 聡子、新田 憲市、今村 浩【背景】本邦の敗血症診療ガイドラインでは、敗血症性DIC は臓器不全発症の一因ととらえられている。臓器障害の重症度を表すSOFAスコアは、ICU 入室時の重症度評価だけでなく、48時間後に低下していない場合は高い死亡率が予測されるため、治療効果の判定にも用いられる。本研究の目的は敗血症性DIC治療において、治療開始48時間後のSOFAスコア低下に寄与する因子を明らかとすることである。【方法】2009 年4 月から2015 年3 月の信州大学医学部附属病院高度救命救急センターの診療録を後方視的に解析し、敗血症性DIC症例の患者背景、感染臓器、重症度、治療内容、転帰について調査した。第1・第3病日のSOFAスコアに基づいて、SOFAスコア改善群と非改善群に分け各項目を比較した。統計処理はSPSS にて行い、有意水準はP < 0.05とした。【結果】対象症例は45例であった。平均年齢は69±13歳、男性:女性は22:23、易感染性の基礎疾患は26例にあった。感染臓器は、呼吸器系7例、心血管系4例、消化器系11例、腎泌尿器系12例、筋骨格系11例、不明4例、重複4例であった。SIRS スコアは2.9± 0.7、急性期DIC スコアは5.4 ± 1.4、SOFA スコアは8.9 ± 3.7、APACHE2 スコアは16.8 ± 7.6 であった。手術療法が11%、腎代替療法が40%、エンドトキシン吸着療法が31%、rh-TM投与が64%、AT-3投与が31%で行われていた。28 日死亡率は27%、院内死亡率は38%であった。SOFAスコア改善群と非改善群の比較では、患者背景・感染臓器・重症度に差はなかったが、SOFAスコア改善群においてrh-TM投与率(81%vs42%、P=0.012)が有意に高く、28日死亡率(12%vs47%、P=0.015)、院内死亡率(23%vs58%、P=0.029)が有意に低かった。ロジスティック回帰分析の結果、rh-TM投与はSOFAスコア低下に対する独立因子であった。【結語】敗血症性DIC 治療において、rh-TM投与は臓器障害の改善に寄与した独立因子であった。