ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-538-DP17-1 ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈しICU管理を要したAicardi-Goutieres症候群の1 例名古屋市立大学大学院 医学研究科麻酔科学・集中治療医学分野松本 梓、伊藤 秀和、寺島 良幸、河野 真人、吉澤 佐也、仙頭 佳起、平手 博之、杉浦 健之、笹野 寛、祖父江 和哉【はじめに】Aicardi-Goutieres症候群は、重症心身障害をきたす常染色体劣性遺伝の早期発症型脳症である。特徴は、頭蓋内石灰化、髄液細胞数・インターフェロンα・ネオブテリンの増加であり、国内患者数100名前後の稀な疾患である。【症例】1歳5ヶ月の男児。在胎39週5日、3388gで出生。日齢2より哺育障害、筋緊張低下のためTORCH症候群が疑われたが、頭部CTで脳室石灰化、髄液中のリンパ球増加・インターフェロン高値を認め、Aicardi-Goutieres 症候群と診断。1 歳1ヶ月時、ネフローゼ症候群(Nephroticsyndrome:NS)を発症。NSはステロイド抵抗性であり、メチルプレドニゾロン(mPSL)パルス療法4クールとシクロスポリンにより完全寛解。1歳5ヶ月時プレドニゾロン減量中に再発、急性腎障害(Acute kidney injury:AKI)と重度浮腫による呼吸不全となり、ICUに入室。【ICU経過】NSに対してmPSLパルス療法2クール、ミコフェノール酸モフェチル投与、浮腫の管理目的に腹膜透析を開始した。低蛋白血症による膠質浸透圧低下にはアルブミン製剤、高血圧に対してはβ遮断薬とCa拮抗薬の投与を行った。その後徐々に腎機能は改善、34 日目に抜管、NS は入室42日目頃に不完全寛解となり、50 日目に退室した。なお、腎生検の結果は、Minor glomerular abnormalities であった。【考察と結語】ステロイド抵抗性NS を呈したAicardi-Goutieres 症候群症例を経験した。AKIと重度浮腫に対する腹膜透析により良好に管理し得た。本症例に対する腹膜透析カテーテル挿入は、限外ろ過による腹水排泄と透析液による腹膜透析を同時に行えるという利点があった。小児用の血液透析デバイスが充実した現在でも、症例によって腹膜透析は有用である。デジタルポスター 17 腎臓・腎機能・血液浄化② 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース7DP17-2 小児先天性代謝異常症に対し急性血液浄化療法を施行した3 症例の検討藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座小川 慧、河田 耕太郎、大槻 藍、若子 尚子、竹田 彩香、磯部 恵里、柳 明男、小松 聖史、山下 千鶴、西田 修先天性代謝異常症(IEM)では、アミノ酸投与制限、糖負荷と輸液に反応しない場合、迅速な急性血液浄化療法が選択肢となる。我々はIEMを5 症例経験し、3 例に急性血液浄化療法を施行した。施行上の工夫や導入のタイミング、各部署の連携の観点からも報告する。【症例1】7ヶ月男児。オルニチントランスカルバミナーゼ欠損症でフォロー中、痙攣、意識障害で転院搬送されICU入室。輸液療法にて血中NH3 値887 μ g/dL から272 μ g/dL に低下したが、6 時間後1227 μ g/dL まで再上昇し、入室12 時間後CHDF をQF:600 ml/h、QD:300ml/h、QB:30ml/min(血流20ml/min、前希釈10ml/min)で開始した。開始後、順調にNH3 値は低下した。食事療法のみとし入室3 日目に一般病棟に転棟した。【症例2】2ヶ月男児。哺乳不良、呼吸不全にて転院搬送しICU 入室した。BE:- 20mmol/L であった。小児科の意向で糖負荷のみで対応するも改善せず、入室3 日目にCHDF をQF:300ml/h、QD:300ml/h、QB:20ml/min(血流15ml/min、前希釈5ml/min)で開始した。入室5日目から広範な腸管壊死を認め2度の緊急手術を施行するも7日目に死亡した。【症例3】日齢3日女児。生後3 日に痙攣を認め転院搬送、NH3値4030 μg/dLと異常高値のため迅速な血液浄化の導入をめざし各部署で連携を図った。右房まで脱血管を挿入し、ICU にてQD:600ml/h、QB:8ml/min でCHD を開始し、QD:1200ml/h、QB:10ml/min まで効率を上げた。徐々に効率を下げ、入室5 日目に離脱し、NH3の再上昇を認めず9日目にNICUへ転棟した。【考察】IEMに対する急性血液浄化療法は、侵襲も大きくブラッドアクセスと血流量の確保、プライミングの量と質、回路交換時の返血、施行中の体温保持などといった問題点があり導入には慎重な判断と経験豊富な施設での施行が必須であり、病院間搬送などの問題も伴う。しかしながら、導入のタイミングが遅れると重篤な結果を招くため、地域を含む小児科医と集中治療医の密な連携が必要である。DP17-3 新生児における持続的血液濾過透析および腹膜透析中の薬物動態の検討1)大垣市民病院 薬剤部、2)大垣市民病院 第二小児科、3)大垣市民病院 集中治療室種田 靖久1)、孫田 みゆき2)、伊東 真隆2)、山口 均3)、吉村 知哲1)【目的】新生児への薬物動態情報については従来から不足が指摘されている。今回、新生児における持続血液濾過透析(以下CHDF)中のフェノバルビタール(以下PB)および腹膜透析(以下PD)中のバンコマイシン(以下VCM)の薬物動態について1症例から得られた知見について報告する。【症例】在胎37週2日、MD twin のため予定帝王切開にて出生。出生体重1914 g。出生後徐々に陥没呼吸が出現し、room airにてSpO2低下ありNICU入室となる。新生児一過性多呼吸および呼吸窮迫症候群から気胸および縦隔気腫を合併。その頃から無尿の状態が持続し、急性腎不全を認めた。症状の急激な増悪もあり、ICU 入室の上CHDFを開始した。膜はCH-1.0(PMMA膜)を用い、流量はhigh flow(Qb 40 mL/min、Qd 300 mL/min、Qf 300 mL/min)で開始し、経過中にslow flow(Qb 40 mL/min、Qd 200 mL/min、Qf 100 mL/min)に変更した。全身状態が落ち着いた後にCHDF 離脱、PD導入にて水分管理を行った。PDは15 mLを注入し、30~45分間貯留した後、15分で排液することを1サイクルとして繰り返し行った。【結果】本症例より得られたCHDF 中のPB クリアランスはhigh flow で0.170 L/kg/hrおよびslow flow で0.083 L/kg/hrであり、治療域の15 μg/mLを達成するのに必要な投与量はそれぞれ150 および50 mg/kg/dayと推定された。また、PD中のVCMクリアランスは0.0086 L/kg/hrであった。治療域の10μg/mLを達成するのに必要な投与量は3日に1 回12.5 mg/kgと推定された。【結論】新生児における薬物動態について有用な知見が得られたと考える。