ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-536-DP16-1 急速に進行した意識障害と両下肢脱力で精神疾患と診断されていた成人T細胞白血病の1 症例1)潤和会記念病院 集中治療部、2)潤和会記念病院 麻酔科?田 一旭1)、樋口 和宏1)、中村 禎志2)、濱川 俊朗1)、成尾 浩明1)成人T 細胞白血病(ATL)はHTLV 1 感染を原因とする疾患である.皮膚病変,リンパ節腫大,肝脾腫,高Ca 血症などがあり,中枢神経,肺,消化管などの多臓器に浸潤し,様々な症状を呈する.われわれは,当初,進行性両下肢脱力で精神疾患を疑われ,急速に意識障害となったATL患者を経験したので報告する.【患者】60歳台,男性【既往歴】なし.【現病歴】16日前より両下肢脱力が出現し,6 日前より歩行時のふらつきが強くなり整形外科を受診したが,異常は認めなかった.次第に増悪し歩行困難となり神経内科を紹介受診した.両下肢の筋力低下と腱反射消失を認めた.神経伝導速度と脊髄MRIで異常を認めず身体表現性障害を疑われた.翌日,下肢脱力と吐気,意識障害で救急搬送された.【所見】JCS:1,体温:36.7℃,脈拍:55/分,血圧:130/82mmHg,SPO2:98%. LDH:537IU/L,CK:387IU/L.頭部CT 検査で頭蓋内病変は認めなかった.【入院経過】第2 病日に見当識障害が出現し意識障害が進行した.Ca:11mg/dLで上昇していなかった.髄液検査で髄液圧の上昇,タンパク量増加,Tリンパ球系異型細胞を認めた.胸腹部CTで全身リンパ節腫脹と肝脾腫,頭部MRIで側脳室周辺の高信号があった.また,抗HTLV-1 抗体陽性,可用性IL-2 受容体:7950IU/mL,さらに末梢血に花冠状細胞(ATL 細胞)を認めATL と診断した.【考察】ATL 初発症状として,ATL 細胞の臓器浸潤による皮膚病変,リンパ節腫大,肝脾腫や,ATL 細胞の産生するサイトカインに起因する高Ca血症,正常T細胞の減少に伴う免疫不全による日和見感染症があげられる.今回,中枢神経浸潤に伴い,急性に進行した下肢脱力を初発症状とし意識障害となった非典型的なATLの1例を経験した.慢性に進行する頸性歩行障害を主症状するHTLV-1 関連脊髄症とも異なる臨床像であった.ATL は全身臓器に浸潤し,多彩な症状を呈するため,進行性両下肢脱力においてもATLを鑑別にあげる必要があると考える.デジタルポスター 16 神経② 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース6DP16-2 傍腫瘍性辺縁系脳炎の3 症例大阪府立急性期・総合医療センター紺田 眞規子、平尾 収、西村 信哉傍腫瘍性辺縁系脳炎(paraneoplastic limbic encephalitis:以下PLE)は比較的まれな疾患で、数日から3ヶ月程の経過で急性・亜急性に進行する記銘力・認知機能障害、精神症状、痙攣、意識障害などを呈する。我々は早期の腫瘍摘出術と免疫抑制療法、厳重な全身管理により改善を認めた症例を経験したので報告する。[症例1]34 歳、女性。常同行動、意識障害を認め入院した。MRIで左基底核下にT1 iso,T2 High(CE -)な病変を、CT で胸腺腫を認め、PLEと診断された。ステロイドパルス療法を開始し拡大胸腺摘出術が施行された。入院中に再発を繰り返したが、ステロイドパルス療法を反復し寛解を得た。寛解後の経過は良好で精神症状も安定し退院となった。VGKC抗体疑陽性であった。[症例2]64歳、男性。認知行動異常、大量失禁を認め入院した。MRIで辺縁系にhigh density areaを認め、4ヶ月前に縦隔腫瘍を指摘されていたことからPLE と診断された。胸腺摘出術を施行しステロイドパルス療法が開始された。見当識障害は残存したが、病棟内のADLは自立するまでに回復し退院となった。自己抗体は検出されずであった。[症例3]29歳、女性。発熱とともに不穏、幻覚妄想状態を呈し、昏睡に至った。MRIで脳梁にT2 highな病変を、CTで両側卵巣奇形腫を認めPLEと診断された。腫瘍摘出術を施行しステロイドパルス療法、血漿交換を行うも意識障害、顔面の不随意運動、頻脈、頻呼吸が持続した。術後4 日で気管切開術を施行したが、術後29 日目より徐々に意識状態の改善を認め、気管切開カニュレも抜去し高次機能障害もほぼ改善し退院となった。抗NMDA受容体抗体陽性であった。[考察]PLEが疑われる場合、感染性脳炎を否定すると同時に腫瘍検索を行い出来るだけ早く免疫抑制療法と腫瘍摘出を行う。しかし、寛解するものもいれば神経症状を残すものや死に至るものもある。我々が経験した3 症例について文献的考察を加えて報告する。DP16-3 第3 病日に頭部MRI画像所見が顕在化したインフルエンザ脳症の1 例兵庫県災害医療センター 救急部古賀 聡人、菊田 正太、井上 明彦、三木 竜介、石原 諭【症例】16歳女性。脳性麻痺の既往はあるが、意思疎通に問題はなかった。来院2日前に38度の発熱があり、来院前日に40 度への上昇を認めたため近医を受診し、インフルエンザA型と診断されラニナミビルを吸入した。その半日後、呼びかけに反応がなくなったため、当院へ救急搬送された。来院時GCS:E3V1M5の意識障害があるが、痙攣は認めなかった。血液検査や髄液検査で他の疾患の除外を行い、インフルエンザ脳症と臨床診断したが、頭部CTや頭部MRIでは所見に乏しかった。ペラミビルの点滴静注とメチルプレドニゾロン・パルス療法を開始したところ、第3病日に意識清明となったが、同日の頭部MRIの拡散強調画像では視床、海馬、放線冠、前頭葉大脳皮質に高信号を認めた。第7病日に神経学的後遺症なく転院となった。【考察】本症例では脳症発症の数時間後のMRIは画像変化がわずかであり、また経過中症状と画像の乖離が見られた。過去の報告例では、初回MRIで異常が出ない事や数日後に画像変化を来す病型があり、複数回のMRI検査が好ましいと考えられる。図:2回目の頭部MRI