ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-534-DP15-1 腋窩動脈大腿動脈バイパス術により救命し得た急性大動脈閉塞の一例1)新潟市民病院 救命救急循環器病脳卒中センター、2)魚沼基幹病院池上 かおり1)、田嶋 淳哉1)、佐藤 信宏1)、吉田 暁1)、井ノ上 幸典1)、関口 博史2)、宮島 衛1)、田中 敏春1)、熊谷 謙1)、広瀬 保夫1)【症例】60代男性。【既往歴】なし。【現病歴】某日夕方、入浴時に突然、激しい両下肢から腰部の疼痛を自覚し、歩行できなくなり救急要請。【経過】来院時、意識清明、顔面蒼白、BP 205/105 mmHg、HR 132 /min、洞調律、頻呼吸、SpO2 96%、BT 36.1度。腹部は膨満だが軟で圧痛なし。両下肢の冷感著明、暗紫色、両側大腿動脈・足背動脈は触知できず、麻痺、感覚脱失を認めた。造影CT で上行大動脈内に血栓あり。腹部大動脈は腎動脈下から総腸骨動脈に至るまで完全血栓閉塞を認めたが、左右ともに内外腸骨動脈分岐部から再び造影された。すぐに手術室へ搬入し、大腿動脈よりFogarty バルンカテーテルによる血栓除去を行ったが、開通得られず、発症5時間後に左腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行し、発症6時間後に血行再建した。直後より再灌流障害による横紋筋融解、急性腎障害を発症し、CPK 262.691 U/l まで上昇した。集学的治療を行い、第27 病日に透析を離脱した。下肢の筋力低下は残存したが、受動的に立位が可能な状態まで回復し、第69病日にリハビリ目的に転院した。血栓性素因については精査したが明らかな原因は特定できなかった。【考察】急性大動脈閉塞症は、集中治療領域の進歩などにより死亡率は低下しているが、いまだ予後不良とされる。本例では非解剖学的バイパス術を選択したが、腸管虚血や皮膚壊死などの合併なく、両下肢温存のうえ救命し得た。非解剖学的バイパス術は、文献的にも有用性が報告されており、低侵襲で予後の改善を期待できる治療方法と思われた。デジタルポスター 15 心臓・循環・体液管理③ 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース5DP15-2 修正大血管転位症に対する三尖弁置換術後に中心静脈圧上昇を伴わない心タンポナーデを認めた一例1)鹿児島大学 医学部 麻酔科、2)鹿児島大学 医学部 集中治療部長嶺 嘉通1)、原田 浩輝1)、岩川 昌平1)、中原 真由美1)、長谷川 麻衣子1)、安田 智嗣2)、垣花 泰之2)、上村 裕一1)【症例】患者は48歳の女性。15歳時に修正大血管転位症と診断された。数ヶ月程前から体心室側房室弁逆流(解剖学的三尖弁逆流)によるうっ血性心不全が増悪してきたため、今回人工弁による三尖弁置換術が施行された。【術後経過】ICU入室後の循環動態は比較的安定しており、CCI > 2.2L/min/m2、SvO2>65%が維持された。術後2日目に人工呼吸器を離脱し、順調にカテコラミンを減量していたが、術後3 日目の朝から徐々に血圧が低下し、末梢冷感も出現した。収縮期血圧は60mmHg まで低下し、CCI 1.5L/min/m2、SvO2 53%と低心拍出量症候群が疑われた。肺動脈カテーテルの圧所見はPAP 28/18mmHg、CVP 8mmHgであった。経胸壁心エコー検査では全周性に心嚢液貯留を中等量認め、機能的右室の圧排はごく軽度であったが、機能的左室のEF は著明に低下を認めた。心嚢ドレーンをローラーでミルキングしたところ、約200mlの血性排液を認め、その直後にEFと循環動態の明らかな改善を認めた。【考察】本症例の低心拍出量症候群の原因は心タンポナーデと思われた。通常、心タンポナーデはまず右心系が圧排され、CVP 上昇を伴う血圧低下をきたすことが多い。しかし、本症例のような修正大血管転位症では解剖学的には右室である機能的左室が心嚢液による圧排を受けやすく、機能的右室よりも機能的左室に拡張障害が強く現れた結果、CVPは上昇せず、EFが低下した可能性が考えられた。【結語】心臓血管外科術後において最も注意すべき合併症のひとつに心タンポナーデがある。今回、我々は修正大血管転位症患者のCVP上昇を伴わない心タンポナーデの一例を経験した。心臓血管外科術後のショックでは肺動脈カテーテル所見と心エコー検査を組み合わせ、積極的に心タンポナーデを除外し、心タンポナーデと診断した場合は迅速に介入すべきである。DP15-3 持続性心室頻拍で来院し、早期に体外循環導入を行い、救命し得た劇症型心筋炎の一例東京都立多摩総合医療センター 循環器内科小木曽 正隆、田中 博之、山田 千翔、大野 睦記、巴里 彰吾、磯貝 俊明、加藤 賢、手島 保症例は29 歳、女性。入院二日前に発熱を自覚し、当院救急外来受診し感冒の診断で対症療法で帰宅となった。その後、解熱は得られたものの動悸、めまいを認めたため、当院救急外来受診。心電図で持続性心室頻拍を認めており、血圧も収縮期血圧80mmHgと低下を来していたため電気的除細動150J で停止させた。停止後の心臓超音波検査では左室駆出率は10% とび漫性左室壁運動低下を認め、採血で心筋逸脱酵素の上昇を認めたため、緊急冠動脈造影検査を行ったが、冠動脈に有意狭窄はなく、心筋炎の診断に至った。カテーテル検査中も持続性心室頻拍が頻発したため、循環動態不安定と判断し、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)を挿入し、右室生検を行い、集学的管理を行った。第5病日までは心機能の改善乏しく、補助人工心臓の導入なども検討されたが、第6 病日に顕著に心機能は回復した。経時的に左室壁運動の改善を認め、順次PCPS、IABP、人工呼吸器を離脱し、合併症もなく、独歩にて退院となった。退院時の左室駆出率は60%まで回復しており、第1病日に行った右室生検の結果では心筋細胞にリンパ球浸潤と心筋細胞の変性・消失を認め,ウイルス性心筋炎に矛盾しない所見であった。劇症型心筋炎の治療において補助循環の適応は、致死的不整脈と心ポンプ失調による低心拍出状態とされているが、導入時期を誤ると状態は急激に悪化し、死に至る可能性もあるため、導入時期は慎重に選択されるべきである。今回、我々は来院後心肺停止となる前に体外循環導入することで、救命し良好な転帰をたどった劇症型心筋炎の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。