ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-526-DP11-1 外傷性脳底動脈絞扼による閉じ込め症候群神戸市立医療センター 中央市民病院 救急部桑原 佑典、朱 祐珍、浅香 葉子、瀬尾 龍太郎【はじめに】頭部外傷による斜台の骨折は非常に稀であるが、椎骨脳底動脈や脳幹を損傷した場合致死的と報告されている。今回我々は、斜台骨折による脳底動脈絞扼のため橋梗塞を発症し、閉じ込め症候群に至った症例を経験したので報告する。【症例】50歳台の男性。船内でコンテナを動かす仕事中に、高さ5.5m のコンテナから地面へ転落し当院へ搬送された。全身CT で外傷性くも膜下出血・気脳症・急性硬膜下出血・左側頭骨骨折・顔面骨骨折があったが、頚椎に骨傷はなかった。入室後は開眼でき、眼球は左へ偏倚していたが上下方向のみの運動は可能だった。四肢は完全麻痺を示していた。四肢麻痺が残存したため第2病日に頭部・全脊椎MRIを撮影したところ橋の梗塞像を示した。第8 病日に行った血管造影では脳底動脈が狭窄し血流が遅延していた。血行再建術の適応はなく抗凝固薬で経過観察した。その後も開眼と眼球の上下運動で意思表示し、四肢の疼痛も訴えることができたが、それ以外の運動は消失し閉じ込め症候群の状態だった。【考察・結語】斜台骨折による椎骨脳底動脈絞扼は、これまで十数例しか報告さていない稀な病態で多くは剖検で診断されたものである。本症例では四肢麻痺があったため当初は頸髄損傷を疑ったが、その後の画像検査で橋梗塞が判明した。MRA で脳底動脈が腹側に屈曲しており、同部位のCT で斜台に垂直方向の骨折があった。血管造影でも同部位で血管が狭窄していたことから骨折部位に脳底動脈が巻き込まれたことで血流が低下し、橋梗塞に至ったと推察された。斜台骨折を伴う頭部外傷において、脳底動脈損傷による脳幹梗塞の可能性を考慮する必要がある。デジタルポスター 11 外傷・熱傷 2月12日(金) 13:30~14:30 デジタルポスターブース1DP11-2 前頭部打撲を契機に発症した外傷性後後咽頭間隙血腫により遅発性上気道狭窄をきたした1 例大阪府済生会野江病院 救急集中治療科鈴木 聡史、清水 導臣、増茂 功次【症例】80歳代男性。脳梗塞と腰部脊柱管狭窄症を基礎疾患としてもつが、日常生活動作に問題はなかった。2次予防目的にバイアスピリン・プレタールの抗血小板薬を内服していた。1 月某日に自宅近くの路上で足をすべらせ転倒し、前額部挫傷を認め当院に救急搬送された。来院時、右肩から前腕にかけての疼痛を認めていたが明らかな打撲痕は認めていなかった。定型的に前額部の創傷処置を施し帰宅の方針となっていたが、受傷約2時間後より呼吸苦を認めはじめ経過観察をしていたところ約4時間後の14時に窒息状態になり、緊急で気管内挿管による気道確保を行った。Airwayの安定化を図ったのち頭頸部・胸部CTを撮影したところ咽頭間隙と椎前間隙にそった軟部組織の濃度上昇と腫大を認め下咽頭から気管にかけての圧排があり窒息の原因病変と考えられた。MRIや造影CTによる精査では感染や腫瘍性病変を示唆する所見は認めず、経時的に消退することより血腫であると考えられ最終診断は外傷性後咽頭間隙血腫(咽後血腫)と判断した。第6病日に抜管し、嚥下撮影により食事のクリアランスを評価しながら経口摂取の形態をアップし第32病日に自宅退院となった。【考察】抗血小板薬など血栓止血系の抑制下での高齢者の転倒はERにおいてcommon な病態であるが、外傷性後咽頭間隙血腫はuncommon である。致命的な転帰が来すことがあり文献的な考察を加え本症例について報告する。DP11-3 多発外傷後に肺血栓塞栓症を発症し、抗凝固療法が奏功した1 症例順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科伊藤 櫻子、高見 浩樹、坂本 壮、小松 孝行、水野 慶子、関井 肇、野村 智久、杉田 学多発外傷患者の治療中には,静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクと出血リスクの双方を考慮して,VTE 予防の方法を選択する必要がある.今回我々は、交通事故に伴う多発外傷の経過中にVTEを発症した症例を経験したため,文献的考察を交え報告する。【症例】41 歳男性,バイクで走行中に乗用車と接触して受傷 .Primary Survey では蘇生を要する問題は認められず,SecondarySurveyでは左右多発肋骨骨折,右血気胸,左気胸,縦隔気腫,肝・腎損傷,右肘関節脱臼を認めた.胸腔ドレーンを挿入後にICUに入室して経過観察した.本症例はVTE発症の高リスク群であり,出血性合併症のリスクを考慮して間歇的空気圧迫法(以下IPC)を行っていた.しかし第7病日に臓器損傷の経過観察目的で施行した胸腹部造影 CTで,下大静脈および右総腸骨静脈に約2cm,右肺静脈にも細かい造影欠損域を認め,VTEの発症を確認した.未分画ヘパリンの持続投与を開始し,以後大きな問題無く経過してワーファリン内服に漸次切り替えた.第26病日に退院,第46病日のCTでは血栓は消退傾向であり,6ヶ月間の内服で投与終了予定としている.【考察】本邦の肺血栓塞栓症/ 深部静脈血栓症予防ガイドラインでは,多発外傷はVTE の高リスク群であり,IPC あるいは低用量未分画ヘパリンの使用が推奨されている.しかし臨床現場では既に起きている外傷に対して,高リスクとはいえ出血を助長する治療は躊躇されることが多い.本例の如くVTEは潜在的に発症している可能性があり,肺血栓塞栓症のリスクを考慮すれば,モニタリング下に予防的な抗凝固療法を施行する事が必要だと考える.