ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-522-DP9-1 譫妄評価におけるCAM/ICUと3D/CAMの検討潤和会記念病院 集中治療部田中 友康、新見 拓也、池田 亜里沙、川野 マキ【目的】当ICU では,譫妄評価にConfusion Assessment Method ICU(CAM/ICU)を用いている.2014年に3 minute DiagnosticInterview for CAM Defined Delirium(3D/CAM)が発表された. 両評価法は,A. 急性発症または変動性の経過,B.注意力欠如,C.無秩序な思考,D.意識レベルの変化の4項目からなる.大きな違いは,3D-CAM は注意力欠如に関して応答に発語もしくは記述を要する.また,CAM/ICU は意識レベルの変化にRichmond Agitation Sedation Scale(RASS)が必要な点である.両評価ツールの違いを検討した.【対象】ICU 入室患者32 人(平均62 歳).【方法】担当看護師が0・6・18・21 時に,3D/CAM とCAM/ICUで評価した.疾患,術式,APACHEII,バイタルサイン,鎮静剤使用の有無,Visual Analog Scale(VAS),RASS を調査した.CAM/ICU または3D/CAM で「譫妄群」と「非譫妄群」に分類した. 【結果】CAM/ICU または3D/CAM で,1 回でも譫妄と評価された患者は6 人(平均74 歳),3D/CAM:5人とCAM/ICU: 5 人で全例外科手術後であった.譫妄群と評価されたのは延べ102回中21 回(20.5%)だった.そのうち1.CAM/ICU と3D/CAM 両方で譫妄と評価されたのは10 回,2.CAM/ICU のみは5 回,3.3D/CAMのみは6回であった.それぞれのAPACHEIIの平均は,1:9.5,2:13,3:7で平均9.8だった.また,鎮静剤使用ありは1:7/10回,2:2/5 回,3:1/6 回だった.RASS は1:-1.1,2:-1.2,3:-0.6 で,VAS は1:2 2:8 3:16.6 だった.【考察】3D/CAM とCAM/ICU では譫妄の評価方法に違いがある.しかし,検出率の差はなかった.3D/CAMは譫妄の診断が困難な認知症の患者でも,診断精度が高いとされている.しかし,3D/CAMは応答に発語もしくは記述を要し,鎮静中の患者や人工呼吸器装着患者には困難である.また,看護師は,RASS が必要であるがCAM/ICU が使用しやすいという意見が多かった.以上より,患者の状況に合わせて2 つの評価ツールの使い分る事が重要であると考えた.デジタルポスター 9 鎮静・鎮痛・せん妄・早期離床① 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース9DP9-2 せん妄に対する看護師の意識変化 ~ICDSCを導入して~金沢医科大学氷見市民病院 3階東病棟集中治療室庄谷 和真、酒井 一匡【目的】A病院集中治療室では,せん妄の早期認識のため2014 年にIntensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)を導入した。今回,ICDSC導入が看護師のせん妄に対する意識を向上させたかを明らかにする。【研究方法】「せん妄の要因に対する意識」14項目と「せん妄への看護介入に対する意識」20項目について5段階尺度で,ICDSC導入前,導入3ヵ月後,導入1年後にアンケート調査を実施し結果を比較。ICDSC導入前にはせん妄とICDSC の勉強会をスタッフ全員へ実施した。【倫理的配慮】A病院倫理委員会の承認を得て,対象者に研究の趣旨・結果の公表について口頭と文書で説明し,回答をもって同意を得られたものとした。参加は自由意思であり,参加拒否により不利益がないこと,データ保管および研究終了後の破棄を保証とした。【結果】せん妄の要因に対する意識は,「している」「ときどきしている」と答えた割合が導入前と比較し導入3ヵ月後では8項目で上昇し,低下はなかった。1 年後では,3ヵ月後と比較し3 項目で上昇,7 項目で低下し,「あまりしていない」「していない」と答えた割合が4 項目で増加した。せん妄への看護介入に対する意識は,「している」「ときどきしている」と答えた割合が導入前と比較し導入3ヵ月後では10 項目で上昇し,低下は1 項目であった。3ヵ月後と比較し1 年後では5項目が上昇し,6 項目が低下,「あまりしていない」「していない」と答えた割合が5 項目で増加した。【考察】ICDSC導入とせん妄の勉強会の実施は,看護師のせん妄に対する意識向上へとつながった。1 年後には導入前と同水準ほどではないが意識の低下がみられたことより,ICDSC の導入のみでは意識向上の維持は困難であり,患者側要因とスタッフ側要因の現状と課題を分析し, ケア体制づくりをしていく必要性が示唆された。【結語】ICDSC 導入は看護師のせん妄に対する意識を向上させるが,維持にはケア体制づくりが必要である。DP9-3 当センターICUにおけるCAM-ICUを用いたせん妄評価の実態調査自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部吉田 直人、増山 智之、中嶋 いくえ、大城 国夫、神尾 直、飯塚 悠祐、小室 哲也、小林 雅矢、八木橋 智子、讃井 將満【はじめに】当センターICU ではCAM-ICU を2013 年5 月に導入した。今回、ICUにおけるせん妄評価法(CAM-ICU)の実施状況および看護師のせん妄に対する意識の経時的な変化を調査した。【方法】2013年および2014年のそれぞれ1月と7月、2015年1 月から6月までの連続した6ヶ月においてICUに72時間以上入室した患者を抽出し、CAM-ICU施行患者割合およびせん妄の発生割合を後向きに調査した。またICU看護師41名に対し、せん妄に対する意識に関して無記名・6項目の選択式アンケートを2014年8 月と2015 年8 月に実施し、結果を比較した。【結果】2013年5 月から2015年6月までの総対象患者は207 例であった。CAM-ICUを施行した患者割合は72.3%で、すべて自主的に行われた。せん妄の病型別の内訳は低活動型が49.8%と最も多く、ついで活動型29.6%、混合型20.0%であった。CAM-ICU 施行患者割合の経時変化をみたところ、2013年5月から12月は44.4%、2014年は57.4%、2015年1月から6月は81.9%と施行割合が増加した(p< 0.01)。特に2015 年6 月は96%であった。せん妄の発生割合は2013 年50.0%、2014 年40.0%、2015年60.3%であった(p=0.60)。アンケート(回収率92.6%、有効回答率100%)の結果では、「受け持ち患者全員に施行している」看護師の割合が2014年に0%(0/42 人)であったのに対し、2015年には55.2%(21/38 人)と有意に増加した(p< 0.01)。【結論】当センターICUでは、自主的なCAM-ICUの施行割合が経時的に上昇した。原因として、多施設研究への参加、勉強会の実施、データの可視化などの介入によってせん妄に対する看護師の意識が変化したことが大きい。せん妄の発生割合は諸家の報告と同様であった。今後はせん妄予防・治療に対して非薬物的な方法を中心に積極的な介入を行い、せん妄の発生割合が減少するか検討したい。