ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-519-DP7-4 急性腎傷害患者におけるCHDF 補充液の電解質組成の検討大阪大学医学部附属病院 麻酔・集中治療部阿部 隆一郎、内山 昭則、酒井 佳奈紀、井口 直也、藤野 裕士【目的】本邦では急性腎傷害(AKI)に対するcontinuous hemodiafiltration(CHDF)のための補充液は存在せず、慢性腎不全が適応である補充液が広くICUでも流用されている。我々はCHDF中の電解質変動を後方視的に調査し、AKIに対するCHDFにおける理想的な電解質組成について推察を行った。【対象】2012 年6 月から2015 年4 月までの間に当院ICU に入室し、CHDF を開始後から連続して5 日以上施行した症例(108 例)のうちAKI に対しCHDF を施行した症例を対象とした。慢性透析患者、血液検査結果の揃わない患者は除外した。【方法】検査結果が得られた30例についてCHDF導入直前と導入後5日目の電解質値及びpHを比較した。5 日間に必要とした電解質補正量(NaCl、NaHCO3、KCl、K2PO4、グルコン酸Ca、CaCl2、MgSO4)を後方視的に調査した。【結果】30症例中19 例が心臓外科術後急性腎傷害の症例であった。CHDF の使用時間は83 ± 12 時間、使用した補充液は56±21Lであった。Naは140±5.8 mEq/lから137±2.9mEq/lに低下(p<0.01)し、Pは4.9±1.1mg/dlから3.3±1.2mg/dlに低下(p<0.01)した。Caは9.3±0.9mg/dlから9.7±0.9mg/dlに上昇(p=0.045)した。Cl、K、HCO-、pHについては有意な変化はなく、Mgは検査データが揃わず、検討できなかった。KCLによる補正は21例で必要であり、投与量は68±82mEqであった。NaHCO3を投与したのは9例、MgSO4を投与したのは13例、10%NaClを投与したのは2例、K2PO4、CaCl2 は各1例に投与した。グルコン酸Ca を投与した症例は認めなかった。【結論】現行の補充液の電解質組成は概ね適切であると考えられる。本院の使用法では理想的には、Na:140.7mEq/l、K:3.2mEq/l、P:1.8mg/dl、Ca3.0mg/dlとするのがより適正と推察された。DP7-5 非昏睡性急性肝不全に対する持続緩徐式Plasma Filtration with Dialysis(PDF)の有用性1)滋賀医科大学救急・集中治療部、2)滋賀医科大学麻酔科、3)滋賀医科大学救急集中治療学講座橋本 賢吾1)、藤井 恵美1)、宮武 秀光1)、今宿 康彦2)、山根 哲信1)、田畑 貴久3)、辻田 靖之1)、高橋 完1)、萬代 良一1)、江口 豊3)我々はPlasma Filtration with Dialysis(PDF)を考案した。急性肝不全(ALF)を対象に多施設共同研究を施行し、本年3 月1 日から保険収載された。共同研究者の谷口らはPDF を持続緩徐式(cPDF)としALFに有効であることを報告した。一方、重症敗血症や敗血症性ショックからのALF は著しく死亡率が高いことから、予後改善のためには急性血液浄化法を駆使する必要があるものと考えられる。今回、敗血症を含む非昏睡性ALF にcPDF を施行し、後ろ向きに検討したので報告する。対象症例は、2012年5月より2014年12月までの当院集中治療室にて非昏睡型急性肝不全(正常肝で8週間以内にPT<40%,PT-INR>1.5)に対しcPDFを行った20例(男女比9/11)である。基礎疾患は敗血症10例、術後肝不全7例、心原性・出血性ショック3 例で、施行前のAPACHE 2 スコアーは28.3 ± 5.1 点、SOFA スコアーは13.9 ± 3.8 点であった。施行条件は、Hemofilter としてアスブミン(Alb)篩係数0.3の血漿分離膜であるEvacure EC-2A(川澄化学)を用いて、CHDF用のベッドサイドコンソールを用いてQb 80ml/min、Qf とQdが400ml/hとし、輸液ポンプ一台を追加して新鮮凍結血漿を120ml/hで補充した。除水は280ml/hまで可能で、血中のAlb値に応じて25%Albを適時追加とした。一回の施行期間は1 本のEvacure EC-2A で最大48 時間まで施行可能である。28日生存率は60%で、MELDスコアーによる層別解析では、19点以下では60%、20-29点で50%、30-39点で71%であった。以上より、cPDF は重篤な非昏睡型急性肝不全に対し有用であるものと考えられる。 今後症例を重ねて検討していく。DP7-6 腎移植の周術期管理において高クロール血症が移植腎に与える影響の検討聖路加国際病院 麻酔科 集中治療室岡田 修、片山 正夫、宮坂 勝之、青木 和裕、橋本 学、藤田 信子、篠田 麻衣子、篠浦 央、岡部 宏文、米倉 なほ【背景】近年、高クロール血症の術後腎機能への影響が報告されている。当院における腎臓移植レシピエントの輸液管理は、高カリウム血症を回避するため生理食塩水が基本となる事が多く、さらに腎臓の血流を維持する目的に移植前に大量に輸液する。このため周術期において高クロール血症を来しやすい状況であると思われる。【目的】術中の高クロール血症が移植された腎機能にあたえる影響を検討する。【対象】2011 年8 月から2015 年3 月までに当院で行った生体腎移植症例(レシピエント)22 症例。【方法】術前、術中、術後のクロール値と2か月後の移植腎機能(eGFR)との関係を後ろ向きに検討した。【結果】22症例(女性4 例)の年齢は53 ± 9.7 歳であった。術前のクロール値は104 ± 4.8mEq/L、術直後は109 ± 5.2mEq/L と上昇を認めた(P < 0.001)。2 か月後のeGFR は47 ± 11.7ml/min/1.73m2であった。術前後のクロール値の上昇幅、術中の最高値、術後の値と2 か月後のeGFRの間に相関関係は認められなかった。【結語】腎移植レシピエントの術前後において統計学的有意差をもってクロール値の上昇を認めたが、2か月後の腎機能にクロールの値による影響は認められなかった。