ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-518-DP7-1 AN69ST膜を用いたCHDF 施行例の検討1)東京大学医学部付属病院 救急部・集中治療部、2)東京大学医学部付属病院 腎臓・内分泌内科、3)東京大学医学部付属病院 血液浄化療法部吉本 広平1)、土井 研人1)、松浦 亮2)、吉田 輝彦2)、小丸 陽平2)、野入 英世3)、矢作 直樹1)【初めに】AN69ST膜は従来のヘモフィルターと比較し、炎症性メディエーター吸着特性により敗血症に対する救命率が改善することが期待されている。【対象と方法】2014 年8月~2015年8 月に当院ICUに入室し、AN69ST膜あるいはPS膜を使用した後希釈法CHDF を施行された106 名(男82)延べ357 例を対象とした。まず357 例をPS 膜使用群(PS 群)とAN69ST 膜使用群(AN 群)に分け、膜・回路寿命について検討した。さらに106名をPS 群とAN 群に分け、28日死亡率に与える使用膜の影響を二項ロジスティック解析を用いて検討した。【結果】解析対象となった症例は、年齢65.9 ± 14.8歳、第1 病日SOFA score 10.4 ± 4.1 であり、PS群82例(延べ309例)、AN群17例(延べ48例)であった。患者背景のうちAN群はPS群に比較し有意に高齢であり(70.4±7.3vs 65.0 ± 15.8, P = 0.03)、重症度は高値であった(SOFA score 12.6± 3.6 vs 10.0± 4.0, P = 0.01)。濾過透析条件に関して2 群間で血液浄化量と施行時間に有意な差は認めず、Kaplan-Meire法による生存分析においても膜・回路寿命に有意差は見られなかった(χ+ = 0.59, P = 0.44)。2群間で28日生存率に有意差は認めず(P = 0.55)、AN膜使用を説明変数とした28 日生存率に対するオッズ比(OR) は、第1 病日SOFA score・年齢で補正後も有意ではなかった(OR = 1.05, 95%CI 0.32 - 3.44)。一方、AN 群のAPACHEII score は32.7 ± 10.2 であり、実際の28 日生存率は予測生存率に比し有意に高値であった(P < 0.01)。【結論】AN69ST膜とPS膜で膜・回路寿命に有意差は認めなった。また従来の報告と同様にAN群の救命率はAPACHEII scoreによる予測生存率に対し高値であったが、同時期に施行されたPS群と比較し救命率に有意差はなく、AN69ST膜の救命率向上への寄与は不明であった。症例数の制限から本研究では十分な交絡因子が考慮されておらず、症例集積を経て今後さらなる検討が必要である。デジタルポスター 7 腎臓・腎機能・血液浄化① 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース7DP7-2 重症敗血症に対するAN69ST膜による持続血液濾過透析の有用性の検討1)小倉記念病院 麻酔科・集中治療部、2)小倉記念病院 救急部近藤 香1)、宮脇 宏1)、鴛渕 るみ1)、隈元 泰輔1)、栗林 淳也1)、角本 眞一1)、中島 研2)、瀬尾 勝弘1)2014年6月より、サイトカイン吸着能に優れたAN69ST膜が重症敗血症に対して使用できるようになった。今回、重症敗血症に対するAN69ST 膜による持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)の有用性を検討した。【対象】2013 年1 月から2015 年7 月の期間中に、重症敗血症でCHDF を24 時間以上施行した、AN69ST 膜使用群(A 群)12 例、Polymethylmethacrylate(PMMA) 膜使用群(P 群)15 例を後ろ向きに検討した。【方法】CHDF 開始前のAcute Physiology and Chronic HealthEvaluation(APACHE)II スコア、CHDF 開始前から治療開始後72 時間以内のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア、平均血圧ならびにカテコラミンインデックス(CAI)を比較した。【結果】治療開始前のAPACHE IIスコア、SOFAスコアとも2 群間で有意差はなかった。治療開始後のSOFAスコアは、A群のみ48・72 時間後で有意に低下し、2 群間でも48・72 時間後でA群が有意に低くなった。平均血圧は、A群において開始36時間以降で治療開始前より有意に高く、18・36・72時間後でA群の方がP 群より有意に高かった。CAIは、A群において開始12時間以降で治療開始前より有意に減少し、P群では治療開始72時間後のみ治療開始前より有意に減少したが、すべての時点で群間に有意差はなかった。バソプレシンを使用した症例が各群3例ずつあり、いずれも72時間以内に中止されていた。エンドトキシン吸着療法が21例(A群8例、P群13例)に施行されていた。【考察・結語】治療開始前の重症度スコアや血圧、CAIには有意差がなかったが、治療開始12時間以降、A群のCAIは有意に減少し、36時間以降、平均血圧も有意に高くなった。また、SOFAスコアも48時間以降A群で有意に低下した。P群では治療前後で血圧に有意差なく、72 時間後CAI が有意に減少した。AN69ST膜使用によるCHDFは、重症敗血症に対し、PMMA膜使用によるCHDF より早期にショックを離脱できる可能性がある。DP7-3 SIRSに対して使用したAN69ST膜のサイトカイン除去効果の検討1)東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学医学部救急医学講座金子 仁1)、清水 敬樹1)、萩原 祥弘1)、濱口 純1)、荒川 裕貴1)、光銭 大裕1)、笠原 道1)、鈴木 茂利雄1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【背景】AN69ST膜は重症敗血症および敗血症性ショック時のサイトカイン吸着能を伴う持続緩徐血液濾過膜であり,SIRS への抑制効果が期待される.最近臨床応用が可能となったため,各臨床症状と各サイトカイン吸着能についてはデータを蓄積する必要がある.【方法】全身性炎症反応症候群(SIRS)と判断し,AN69ST膜を使用した急性血液浄化療法を実施した症例を対象とした.血液浄化開始前および24 時間後の各サイトカイン値(IL-1 β,IL-6,IL-8),重症度指標(APACHE II,SOFA)を算出できた症例を検討した(N=4).SIRSに至った原因は,慢性膵炎急性増悪,原因が同定できなかった敗血症,グラム陰性桿菌腹腔内感染症,嫌気性菌による膿胸であった.【結果】各症例の血液浄化開始前のAPACHE II,SOFA はそれぞれ7~37,10~18に分布している症例群であった.24時間後のAPACHE IIおよびSOFAはそれぞれ平均4.3,2.6上昇した.血液浄化開始前の各サイトカイン値は,IL-1 β : 感度以下~1150 pg/mL,IL-6:370~462,000 pg/mL,IL-8:38.5~92,000 pg/mL であった.24 時間後の変化はIL-1 β平均29pg/mL 上昇,IL-6 平均44,418 pg/mL 低下,IL-8 7,860 pg/mL 低下を認めた.膵炎ではIL-1 β 6.0 pg/mL,IL-6 1,162.7 pg/mL の上昇を認めた.【考察】AN69ST膜による血液浄化を実施した症例では,APACHE II,SOFAの上昇を認めた症例でも,IL-6,IL-8の低下を認めた.この結果は本膜の一部サイトカインに対する良好な吸着特性を示しているものと考えられる.IL-1βの結果からAN69STには吸着出来ないサイトカインに対する対応の必要性も示唆される.