ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-516-DP6-1 急性期脳梗塞の患者が胆嚢癌をともなったTrousseau症候群であった1 症例1)潤和会記念病院 集中治療部、2)潤和会記念病院 麻酔科濱川 俊朗1)、立山 真吾2)、中村 禎志2)、成尾 浩明1)Trousseau症候群(TS)は,悪性腫瘍が原因の血液凝固亢進で脳梗塞となり,神経症状を生じる傍腫瘍性神経症候群のひとつである.意識障害と片麻痺で救急搬送された患者が本症候群だった症例を経験したので報告する.【患者】60 歳代女性【主訴】意識レベル低下,右片麻痺.【既往歴】なし.【服薬歴】なし.【現病歴】車の運転席に座って意識朦朧としていたのを発見され,当院に救急搬送された.【所見】JCS:1,右不全片麻痺,失語【血液検査】白血球数:10230/μL,血色素量:14g/dL,血小板数:21万/μL,総ビリルビン:0.9 mg/dL,AST:57U/L,ALT:43U/L,γGTP:155U/L,ALP:485U/L,LDH:519U/L,PT秒:15 秒,PT 活性:57%,PT-INR:1.4,APTT:22 秒,フィブリノーゲン:213mg/dL,トロンボテスト:36 %,D- ダイマー:57μ g/mL,FDP:120 以上μ g/mL,CRP:2.3mg/dL,CA19-9:10600U/mL,AFP:5.2ng/mL【頭部MRI】右小脳半球,両前頭葉皮質,放線冠,左頭頂葉皮質等に急性期梗塞が散在.【心電図】正常範囲.【胸腹部CT】胸部:両肺に多発性結節.肝臓:不整な低信号腫瘤が多数.胆嚢:底に不整な壁肥厚.肝門部周囲に腫大リンパ節が多数.【診断】多発性脳梗塞.胆のう癌.多発リンパ節,肝臓,肺転移,凝固線溶系亢進.多発性両側性脳梗塞に胆嚢癌をともなっており,凝固線溶系の亢進を認めたためTSと診断した.【考察】TS にともなう癌の多くは,固形癌で婦人科系悪性腫瘍が最多である.脳梗塞を起こしやすい原因としては,脳はトロンボプラスチンが豊富に存在し,トロンビンの拮抗因子であるトロンボモジュリンが乏しいため,血管内凝固異常症の標的臓器となりやすいとされている.また,担癌患者のD- ダイマーの上昇が,TS の予測因子とされている.治療は原疾患の治療と抗凝固療法が中心となる.【結語】心電図が正常で,多発性両側性の急性期脳梗塞を認めた場合は,TSを疑い悪性腫瘍の検索を行う必要がある.デジタルポスター 6 神経① 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース6DP6-2 CT ガイド下マーキング中に発症した空気塞栓症に対し高圧酸素療法を含めた集学的治療が奏功した一例刈谷豊田総合病院山添 大輝、三輪 立夫、三浦 政直、永森 達也、堀 智音、野村 祐子、鈴木 あさ美、青木 優祐、山内 浩揮、中村 不二雄【症例】75 歳男性【現病歴】転移性肺腫瘍に対し前医で術前CTガイド下マーキング施行された。穿刺直後は問題なかったが、穿刺針抜去後に咳嗽を認め、意識レベル低下、両側上下肢麻痺となった。CT 検査にて下行大動脈内に大量の空気と後頭葉にも数カ所空気を認め空気塞栓症と診断した。穿刺から約3 時間30 分後、高圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy;HBOT)目的に当院へ転院搬送となった。【入院時現症】意識:GCS E4V5M6軽度傾眠、右上下肢に不全麻痺を認め、歩行は困難であった。CT 再検では血管内の空気は消失し頭蓋内に明らかな低吸収域は認めなかった。【入院後経過】来院70分後に第1種装置にて初回HBOT(2気圧60 分)を施行し、脳保護目的にエダラボンを開始した。HBOT 後意識レベルは改善したが、同日夜間に全身性強直性痙攣を認め、気管挿管人工呼吸管理としフェニトインにて鎮攣した。第3病日に人工呼吸器離脱しHBOT再開し以降連日計6回施行した。徐々に右上下肢不全麻痺は改善を認め、初回痙攣後は痙攣発作を認めなかった。右上下肢の不全麻痺はさらに改善し立位歩行が可能となり肺腫瘍根治術目的に第7 病日に転院した。【考察】本例での空気塞栓症の発生機序は、穿刺によって気道系と肺血管に交通が生じ咳嗽による気道内圧上昇で肺血管内に空気が流入したと考えられた。本症におけるHBOTは、高気圧下での血管内気泡の縮小効果と、血中の酸素分圧を上昇させ虚血組織の酸素化の改善を期待し施行した。痙攣重責発作により挿管管理が一時的に必要となったがHBOTを完遂できた。使用できたのは第1種装置に限られたことや転院後であり早期の施行とはいえないなど問題点は多数あったが予後を改善する一因となりえたと考えられた。【結語】空気塞栓症に対し高圧酸素療法を含めた集学的治療が奏功した一例を経験した。問題点や文献的考察も含め報告する。DP6-3 外傷性脳損傷後に重篤な脳梗塞を来し症候性脳血管攣縮が疑われた一例京都大学 医学部附属病院 初期診療・救急科下戸 学、鈴木 崇生、角田 洋平、播摩 裕、森 智治、趙 晃済、大鶴 繁、西山 慶、佐藤 格夫、小池 薫外傷性脳血管攣縮は脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に起こる脳血管攣縮よりも一般的に症状が軽く、重篤な症状を呈するのはまれである。今回我々は外傷性脳損傷後に中大脳動脈領域の広範な脳梗塞を来した症例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は49 歳男性。統合失調症で精神科病院入院中に痙攣発作を起こし、頭部を打撲した。その後意識清明となったため水中毒との診断で経過観察されていたが、翌日に昏睡状態で発見されたため当院に転院搬送となった。来院時は呼吸不全とショックを認め、昏睡状態であった。頭部CTにて両側前頭葉の脳挫傷、右硬膜下血腫とくも膜下出血を認めた。また胸部CTにて両肺下葉に粒状影を認め、肺炎による敗血症性ショックと診断した。頭部MRIおよびMRAでは動脈瘤や脳梗塞を認めず外傷性脳損傷として保存的加療の方針とし、集中治療室に入室して敗血症性ショックの加療を開始した。第4病日には呼吸状態は改善し、ショックを離脱して従命可能となったが、左上下肢麻痺が認められた。第5病日の頭部CTにて右中大脳動脈領域の脳梗塞とmidline shiftを認めた。CT angiographyで右中大脳動脈の閉塞や狭窄部位が認められなかったため外傷性脳損傷後の一過性血管攣縮による脳梗塞と診断し、緊急減圧開頭術を施行した。術後の全身検索では明らかな塞栓源は認めなかった。術後経過は良好で、左上下肢麻痺は残存するものの装具を用いて介助で歩行可能なまでに改善し、第62 病日にリハビリテーション目的で転院となった。頭部外傷後脳梗塞の報告は比較的少なく、集中治療室で適切な観察とモニタリングを行うにより早期発見して原因を鑑別し、適切な治療を行う必要がある。