ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-512-DP4-1 小児患者のICU 間新幹線搬送の経験と考察1)あいち小児保健医療総合センター 救急科、2)あいち小児保健医療総合センター 集中治療科水野 光規1)、池山 貴也2)、池山 由紀1)、今井 一徳2)、丹羽 雄大2)、伊藤 友弥1)、伊藤 友理枝1)、石川 祥一朗1)【はじめに】新幹線は世界に誇る安全性と定時性、快適性を備えている。新幹線多目的室を利用した小児ICU(PICU)間搬送事例2 例を交え、新幹線によるICU 間転院搬送に関する考察を述べる。【事例1】0 歳7か月女児、劇症肝炎/ 肝不全。肝機能悪化のため生体肝移植適応と考え、東京都への緊急搬送となった。天候不良でヘリコプターは利用できず、新幹線搬送(N700系のぞみ号)に決定した。決定から1時間55分で当院を出発、移送中は新鮮凍結血漿輸血等を実施し当院出発から2 時間47 分で約400kmを移動した。東京駅にて受入側搬送チームに引き継いだ。【事例2】0歳6か月女児。0 歳3 か月時、百日咳に伴う急性呼吸不全で長期管理が必要となり体外式膜型人工肺(ECMO)を装着のまま当院より東京都まで大型救急車で搬送、ECMO 離脱に成功し人工呼吸のまま当院に予定搬送となった。公共空路搬送は各機関から利用不可との回答があり新幹線搬送(N700系のぞみ号)に決定した。人工呼吸、持続薬剤投与等を実施しつつ、東京駅から名古屋駅まで新幹線を利用、他は救急車にて搬送した。【考察】新幹線は、天候安定性が高く、比較的安定した電源供給が得られる、振動等のストレスが少ない、速い、比較的安い、資器材持込制限が比較的少ないなどの利点がある。一方、定期列車であるため一般旅客に対する配慮や、定時運行を妨げない十分な配慮、鉄道会社との連携に留意を要する。また酸素、大型手回り品など約款に許す範囲内とすること、駅や車内の電源設備利用に関してJR グループ内でも取扱いが異なること、新幹線多目的室の種類や特徴、エレベーターの大きさ等に配慮が必要であり、前述2 例は総合旅行業務取扱管理者資格を有する医師により旅程管理を実施した。殊に重症患者搬送は熟練を要すと考える。【まとめ】新幹線によるICU 間搬送は精度の高い搬送計画とその実施、列車による医療搬送の知識を要するが、有効な搬送ツールとなり得ることが示唆された。デジタルポスター 4 災害・病院前管理 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース4DP4-2 口頭指導の地域差は院外心停止の予後に関係する1)金沢大学医薬保健研究域医学系血液情報発信学(救急医学)、2)石川県立中央病院救命救急センター、3)金沢大学附属病院救命センター稲葉 英夫1)、太田 圭亮2)、明星 康裕2)、前田 哲生1,3)、後藤 由和1,3)、船田 晃3)【目的】口頭指導の地域差が院外心停止の予後に関係するか検討する。【方法】2007年から2011年までの総務省院外心停止データベースからバイスタンダーに目撃され、医師の関与なく病院へ搬送された院外心停止157,093 件を抽出した。各都道府県の口頭指導関連指標(口頭指導感度、受け入れ率、心肺蘇生自発性)と病院前救急医療システム関連指標(一次救命処置講習、人口高齢化率、救急車車両1 台あたりの救急出動件数、救急告示病院数、二次救命処置実施率)を算出し、entropy splitting 法により、各指標について、先進地域、標準地域、後進地域に分類した。各地域分類と機能良好1ヶ月生存との関係を分析後、個々の院外心停止の背景を含めた多変量ロジスティック解析を行い、口頭指導関連指標が院外心停止の予後と関係するかを検討した。【成績】すべての地域分類と院外心停止の予後を分析した結果、一次救命処置受講率とバイスタンダーCPRの自発性は院外心停止の予後に関係しなかった。他の地域分類と個々の院外心停止の背景を含めた多変量ロジスティック解析は、予後に関係することが知られている患者背景に加え、口頭指導感度(オッズ比:1.277; 1.131-1.441)と口頭指導受け入れ率(1.749; 1.554-1.967)が予後に関連することが明らかになった。病院前救急医療システムに関連する指標は予後と関連がなかった。【結論】目撃された院外心停止からの生存は、高い口頭指導感度と口頭指導受け入れ率を有する地域と関連がある。口頭指導の地域差を改善する施策が必要である。DP4-3 神奈川県における災害拠点病院ごとの小児災害医療リスクリソース比1)横浜市立大学 大学院医学研究科 救急医学、2)北里大学 医学部 産婦人科学産科学、3)北里大学 医学部 救命救急医学、4)横須賀市立うわまち病院 救命救急センター、5)横須賀共済病院 救命救急センター、6)日本医科大学武蔵小杉病院 救命救急センター問田 千晶1)、服部 響子2)、服部 潤3)、本多 英喜4)、内山 宗人5)、松田 潔6)、浅利 靖3,6)、安部 猛1)、森村 尚登1)【背景】近年、首都直下型地震による被災を想定した対策が検討されているが、地域毎の医療需給均衡に基づく検討は少ない。【目的】神奈川県内市区町村ごとの災害想定に基づき、小児に対する医療需要と医療供給力の比率(Medical Risk-Resource-Ratio; RRR)を算出し、各拠点病院における小児災害医療需給均衡のばらつきを調査すること。【方法】神奈川県地震被害想定調査報告書で示された都心南部直下地震の被災想定を用いて、神奈川県の被害を推定した。対象は神奈川県内の災害拠点病院33施設とした。神奈川県内の15歳未満の小児推定傷病者数/重症患者数/ICU入室患者数を災害医療需要とし、対象施設の小児用推定空床数/ 重症用病床空床数/ICU空床数を災害時医療供給力とした。発災直後の空症数は、病床利用率85%と仮定して算出した。各災害拠点病院における小児のRRR として、総傷病者RRR/重症患者RRR/ICU入室患者RRRを算出した。【結果】数値は、平均値(最小- 最大)で表記した。神奈川県の小児人口は1,168,050であり、小児推定総傷病者は8,391 人で、人口の0.7%であった。小児推定重症者数は、総傷病者数の5.4% にあたる449人であり、小児推定ICU 入室者数は65人であった。県内33の災害拠点病院において、小児用推定空床数は366、重症者病床数は20、ICU 病床数は11であった。27施設は、小児に対応可能なICU 病床は0 と推定された。小児総傷病者RRRは24(2-92)人/床、重症患者RRR は36(2-152)、ICU入室患者RRRは1(1-5)であり、施設間でばらつきを認めた。【考察】15 歳未満の小児では、発災直後の医療需要に対して病床数が絶対的に不足し、かつ災害拠点病院毎に医療需給均衡にばらつきがあることが明らかとなった。RRRは各病院の需給不均衡の程度を示すために有用であるが、需給不均衡を是正するための支援量や支援の優先度を説明することはできない。今後、必要支援量の割合や支援優先度の視点からデータを解析し報告する。