ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-509-DP2-4 敗血症性ショックによるARDSに対し早期のECMO 導入および腹臥位療法により良好な転帰を得た一例奈良県立医科大学 救急医学 高度救急救命センター原 悠也、淺井 英樹、多田 祐介、川井 廉之、福島 英賢、奥地 一夫【背景】急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome; 以下ARDS)は敗血症などを契機に発症し、重症化すれば死亡率は20%を越える重篤な疾患である。今回、敗血症性ショックからARDS に陥った症例に対し、発症早期より体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation; 以下ECMO)を用い、腹臥位療法を併用し救命し得た1例を経験したので報告する。【症例】73歳、女性。突然の呼吸困難で前医を受診した。前医到着時、ショックを呈しており、同院処置中より呼吸状態が徐々に悪化したため、人工呼吸管理が開始された。胸腹部単純CT 検査にて、両側肺野に広範なスリガラス影と浸潤影、腎周囲に脂肪識の混濁を認めたため、尿路感染症を契機とした敗血症性ショックおよびARDS と診断され、当院へ搬送された。当院到着時、脈拍149/min、血圧71/49mmHg、SpO286%(バッグバルブマスク補助換気下、酸素10l/min)、ジャクソン・リース回路にて用手換気としても、P/F ratio 90まで酸素化低下を認めた。当院にて再度胸腹部造影CT検査を施行すると、前医で認めた両側肺野のスリガラス影は、背側優位の広範な浸潤影へと変化していた。ECMOの適応と判断し、発症から6時間後に導入した。ECMO導入後、呼吸状態は改善を認め、第4 病日に気管切開術を施行、第5病日より腹臥位療法を追加した。第7病日、体位変換の一環として端座位を施行した。第10 病日、ECMO を離脱、第11 病日、人工呼吸器を離脱した。第18 病日、前医へ再転院となった。【考察】ARDSに対するECMOの使用は近年広く普及しており、ECMO管理中の腹臥位療法が有効であるという報告もある。しかし、ECMO導入の適応疾患や適切な開始時期は明らかでない。本症例のように敗血症性ショックを呈し急激な呼吸不全、ARDS が進行する重症例では、早期にECMO導入を考慮し、腹臥位療法をはじめとする理学療法を含めた集学的治療を開始することが重要である。DP2-5 ARDSを合併した有瘻性膿胸に対しVV-ECMO管理下にEWSによる気管支充填術を行い救命できた1 例1)JA広島総合病院 呼吸器内科、2)JA広島総合病院 救急・集中治療科近藤 丈博1)、櫻谷 正明2)、吉田 研一2)【症例】48歳女性、拒食症にて近医通院中。【現病歴】呼吸苦、咳のため近医受診、胸部レントゲンにて右胸水を認め、当院紹介。【経過】CTにて膿胸が疑われ、高度の低酸素血症が見られたためICU 入室とし、人工呼吸器管理とした上で、局所麻酔下胸腔鏡にて膿胸のドレナージを施行した。その後ドレナージチューブを留置したが持続性のエアリークが見られ有瘻性膿胸と診断した。ICU入室後6 日目に急激な酸素化の悪化を認め、肺炎、ARDS の合併と診断、VV-ECMO による呼吸管理開始とした。胸腔ドレナージ不良となったためチューブの入れ替えを行ったところ出血が見られたため、止血、膿胸掻爬、リーク部処理目的に緊急手術となった。右肺上、中葉を中心に多数のリーク部位を認め、外科的処置は不可能と判断、止血を行った上でドレナージチューブを再留置して手術終了した。その後気瘻に対しVV-ECMO 下にEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)による気管支充填術を施行したところ、気瘻の改善見られ、酸素化安定、VV-ECMO 導入から3 週間ほどで離脱となった。その後人工呼吸器からも離脱、ICU から一般病棟へ転棟後、胸腔ドレナージチューブも抜去可能となり、有瘻性膿胸の改善が見られた。入院から97日目に自宅退院となった。【考察】我々は今回、ARDSを合併した有瘻性膿胸に対しVV-ECMO管理下にEWSによる気管支充填術を行い救命できた1例を経験したので文献的考察を交え報告する。DP2-6 Respiratory ECMOにおける離脱基準の検討1)東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学 医学部 救急医学講座萩原 祥弘1)、清水 敬樹1)、小野 将平1)、鈴木 茂利雄1)、荒川 裕貴1)、濱口 純1)、金子 仁1)、光銭 大裕1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【背景と目的】呼吸不全に対するVV-ECMO の離脱基準に明確なものは存在していない。自己肺の改善は胸部X 線像などの画像評価、1 回換気量や肺コンプライアンスなどの呼吸機能評価、動脈血液ガスや水分バランスの評価などを総じて行い,最終的にsweep gasの供給を止める“ 離脱トライアル”を試みるのが一般的である。離脱トライアル中に患者のSpO2,PaCO2,呼吸数,呼吸様式などを監視することになるが,中には頻呼吸・努力呼吸・気胸併発となる者もおり,患者への侵襲を考慮すると離脱トライアルを行なう前段階として何かしらの指標が必要と考えた。【対象と方法】今回我々はVV-ECMOの脱血cSvO2(%)とVO2ECMO[人工肺からの酸素付加量=(1 - cSvO2)× Hb(g/L)× ECMO 流量(L/min)× 1.36]の関係性に着目し,その比をECMO weaning index(以下EWI)と称した。「EWI = cSvO2/VO2ECMO > 1 となった時に離脱トライアルが成功する」という仮説をもとに,2014年4月~2015年8月でEWIの推移が記載されたVV-ECMO症例を後方視的に集計し離脱の成否をまとめた。【結果】7 症例が集計され,離脱トライアル成功5 例,失敗2 例であった。成功群(平均値1.11, 中央値1.13)と失敗群(平均値1.02,中央値1.02)に有意差は認めず,仮説は証明出来なかった。失敗群では(1)EWI=1.00で酸素化は保たれたが,換気能が保てなかった例,(2)EWI=1.04,体重30kg であった例が含まれた。【考察】現行のEWI では換気能の改善は評価困難である。また酸素消費量が体重換算であることからもEWI式に体重に関連した項を付すべきである。今後更に症例を集積し修正を加え検討していくことで,EWIがVV-ECMOのweaning期における有用な離脱基準の一つとなり得ると考えた。