ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-503-O55-4 成人男性における電気刺激を用いたトレーニング中の筋肉酸素化状態および換気状態の変化1)東海大学医学部付属病院看護部、2)東海大学健康科学部看護学科、3)東海大学情報教育センター中岡 正昭1)、沓澤 智子2)、栗田 太作3)【背景】ICU 入室患者の筋力低下予防には、随意的な運動を早期から施行していくことが必要であるが、困難なことが多い。近年、電気刺激により筋肉収縮を起こさせる筋電気刺激(以下EMS)を用いたリハビリテーションが、術後患者や高齢者の筋力低下に効果を示すと報告されている。EMS をICU 入室中の急性重症患者へ適用できれば、筋力低下を予防でき、早期離床に結びつく可能性が高い。しかしながら、急性重症患者へEMSを適用するためには、筋肉や呼吸・循環に及ぼす影響を検討していく必要がある。【目的】健常成人男性(20~30 歳代)に、両下肢全体にEMS を施行し、両下肢の筋肉酸素化状態と換気にどの程度の影響を及ぼすかを検討した。【方法】対象は健常成人男性7名(25.4±2.8歳)。ベルト型電極をウェスト、膝上、足首につけ、EMS機器(AUTOTENS PRO リハビリユニット)を用いて20Hz の指数関数的漸増波パルスで3 秒の刺激、2 秒間休止の刺激様式で、15 分間のEMSを行った。刺激強度は筋肉収縮が目視できる最低強度とした。EMS中の外側広筋と腓腹筋の筋肉酸素化状態を近赤外分光法(NIRO-200)で測定した。換気は鼻カニューラを装着し、呼吸圧(鼻カニューラ内の圧)の変化から、呼吸数、換気量相当を算出した。【成績】腓腹筋と外側広筋の筋肉酸素化状態は、ほとんどの被験者でEMS開始後1 分30 秒で総ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンが低下し、3分にかけて増加し、その後ほぼ一定の値を示した。EMS中の呼吸数、吸気換気相当量は、安静時に比べ、平均で10%程度の増加率であった。【結論】本研究での刺激による筋収縮は、筋肉酸素化状態の変化から、軽い運動強度のトレーニングに相当すると考えられ、換気への影響も小さいことが示された。ICU入室患者に対しても、安全に使用できる可能性が高いと考えられた。O55-5 脳卒中急性期患者の肩関節外旋制限の発生要因の検討1)徳島大学大学院 医歯薬学研究部 保健科学部門看護学系、2)徳島大学病院南川 貴子1)、市原 多香子1)、日坂 ゆかり1)、原田 路可2)、田村 綾子1)【目的】先行研究で脳卒中発症後1週間で麻痺側の肩関節外旋制限が出現する実態が明らかとなった1)。そこで本研究では、脳卒中発症後1~2 日目から1 週間の片麻痺患者の麻痺側肩関節の関節可動域変化について麻痺の程度、麻痺の左右差、NIHSS 重症度別の影響要因について明らかにし、今後の看護支援の一助とする。【方法】研究期間は2012年4 月~2013年2月、対象者は1施設のStroke Care Unitに初発脳卒中(脳出血・脳梗塞)で入院した急性期の片麻痺のある患者26 名であった。大学病院臨床倫理審査委員会で承認の後、本人及び代諾者に研究及び発表についての許可を口頭・文書で得て行った。上肢麻痺のBurnnstrome stage 別、麻痺側別、NIHSSの重症度別による関節可動域の比較を行った。分析はMann-WhitneyのU 検定を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】対象者26 名の内訳は、脳出血10 名/ 脳梗塞16 名、右麻痺10 名/ 左麻痺16 名、上肢のBurnnstrome stage 別はI~III が15名/IX~XI が10 名、NIHSS1~11 点13 名/12~25 点13 名であった。肩関節外旋の1 週間の関節可動域は、Burnnstrome stage がI~IIIで有意に2.3 度低下し、IX~XIは1.8 度低下であった(p=0.046)。麻痺側の左右差、NIHSS重度別の有意差は認めなかった。【考察】脳卒中急性期の患者でBurnnstrome stageI~IIIの重症群に、入院後1週間で肩関節の可動域制限が出現した。この要因は、治療の伴う上肢の抑制や輸液ライン挿入、安全柵の使用が考えられ、発症超急性期から24時間ケアにあたっている看護師が、肩関節の外旋制限予防の支援を積極的に行う必要性が示唆された。なおこの研究は、科学研究費 24593299 と23390503 の支援を受けて行った。1)Takako Minagawa, Ayako Tamura et al, Increasing upper-limb joint range of motion in post-stroke hemiplegic patients bydaily hair-brushing. British Journal of Neuroscience Nursing , 11(3),112-117, 2015O55-6 食道癌患者における周術期サポートチーム(POST)運用の効果岩手医科大学附属病院 集中治療部赤澤 里美、小沢 由佳、伊藤 富佐恵、佐藤 美樹、石森 由樹、高橋 弘江、秋山 有史A病院の集中治療部(以下ICU)では、独自の離床開始基準・中止基準(以下基準)を作成・導入し、早期にリハビリテーション(以下リハ)を開始して離床開始までの日数と在院日数の短縮につながったことを発表した。合併症の減少とさらなる早期退院を目指し、食道癌患者への周術期サポートチーム(Peri Operative Suppot Team 以下POST)の導入が開始となった。今回、このPOST 導入が術後経過に与えた効果を明らかにしたいと考えた。【対象】1.基準導入前の患者30 名(A 群)と基準導入後の患者30名(B群)、POST導入後の患者30名(C群)の属性、年齢、術式、術後合併症、離床日数、術後在院日数を比較検討した。【倫理】医師と共に術前に患者と家族へ患者の説明を行い、研究に協力しない場合でも診療、看護に不利益はないことを説明して文書で同意を得た。【方法】1、医師や看護師、理学療法士や言語療法士などチーム全体で患者をサポートするための周術期管理プログラムを作成した。2、術前にPOST外来受診日を設け、ICU看護師が患者、家族に急性期リハの重要性や離床訓練の進め方などを動画により説明した。3、医師や理学療法士、言語療法士と連携し、プログラムに沿って術後1病日目からICU内で理学、嚥下リハを実施した。【結果、考察】ABC群で合併症に有意差はみられなかった。平均術後在院日数はA群よりB・C 群ともに短縮した。POST導入後、術前から患者自身が周術期の状況を想像し、目標を共有し患者が手術を自主的に捉えられるようになったと考える。このことが、過大侵襲術後の集中治療の時期から多職種と連携し離床訓練、嚥下リハが確実に進められる足掛けとなり、平均術後在院日数の減少につながったと示唆される。