ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-502-O55-1 心臓血管外科手術後における急性期早期離床プロトコール改訂後の効果地方独立行政法人 大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター川上 友里絵、丸山 純治、山口 直樹、三浦 智美、植村 桜、亀井 靖子【目的】A病院では2013 年4 月より心臓血管外科手術後患者を対象に早期離床プロトコール(以下、旧プロトコール)を導入した。急性期の早期離床開始基準・中止基準を標準化した旧プロトコールを適応できた患者は、初回体位変換までの時間が有意に減少した。また、旧プロトコール運用によるインシデント報告はなく一定の安全性を獲得できた。しかし、旧プロトコールでは、安全性に配慮し開始基準を設定したため、対象患者のうちプロトコールを適応できた患者は44 名中20名で45.4%であった。2015年1月より早期離床を推進するため、開始基準のうち循環作動薬の使用状況を考慮したプロトコールに改訂した(以下、新プロトコール)。本研究では、新旧プロトコール適応群を比較し適応割合とその効果を比較検証した。【方法】新プロトコール導入後3カ月間、心臓血管外科手術後ICU に入室した患者を対象に基本属性、挿管期間、離床状態、入室期間等のデータを収集した。新プロトコール適応群と前回の研究で得られた旧プロトコール適応群の比較をX2検定、t検定、マンホイットニーのU検定で行った。本研究は、当院倫理委員会の承認を得た。【結果】新プロトコールは40 名中35 名で87.5%の患者に適応できた。新旧プロトコール適応群の基本属性に有意差はなかった。新プロトコールでの挿管時間は27.3± 51.7時間、初回体位変換までの時間は4.6 ±3.6時間、入室時間は45.7±59.9時間であり旧プロトコール適応群と有意差を認めなかった。インシデント報告は認めなかった。【考察】新プロトコールは開始基準を緩和したことにより、適応割合を拡大できた。重症な患者の適応が増えたが、旧プロトコール適応群と比較しても有意差を認めておらず、一定の効果と安全性を確保できたと考える。口演 55 鎮静・鎮痛・せん妄・早期離床④ 2月14日(日) 11:00~12:00 第12会場O55-2 心臓移植術後急性期の離床に関連する要因国立循環器病研究センター志村 ともみ、原田 愛子、古賀 麻位子、渡邉 裕美子、秦 広樹、藤田 知之、中谷 武嗣、小林 順二郎【背景】一般的な心臓外科手術と比べて症例数の少ない心臓移植においてはリハビリテーションに関する詳細な情報がいまだ少ないのが現状である。【目的】 心臓移植術後急性期のリハビリテーションの標準化を目指し当院で経験した心臓移植63 例を振り返り術後急性期の離床に関連する要因を明らかにする。【方法】対象:1999 年5 月から2014 年12 月までに、心臓移植を行った患者63症例のうち遠隔期の死亡症例を除いた61 例 。研究デザイン:後ろ向き観察研究。調査内容:端座位を離床開始の目安とし離床に関わる情報を診療録をもとに調査。 分析方法:データ解析にはSPSS Ver.22を使用し相関分析もしくはMann-Whitney検定を行った。倫理的配慮:本研究は院内の倫理委員会の承認を得たのちに行い、データは個人が特定されないように配慮した。オプティングアウトによる同意を得た。【結果と考察】術前因子として61 例中55 例が補助人工心臓を装着しており、術後離床までの時間に補助人工心臓装着の有無は関連はなかった。術中因子として手術時間、麻酔時間、術後の心係数が離床に関連していた。術後因子として抜管までに要した時間が離床に関連していた。また局所陰圧閉鎖療法使用群と非使用群、術後の低心拍出症候群の有無において離床開始時間に有意に差がみられた。これまでは体外式補助人工心臓が主流であり術前は病院での生活を余儀なくされていたが、植え込み型補助人工心臓の発展により、今後自宅での生活から心臓移植手術を受ける患者が増えてくる。心臓移植を受ける患者のバックグラウンドの変化に合わせて、離床に対する看護介入を行う必要がある。今回明らかになった要因をもとにアセスメントを行い効果的な介入を行うことが重要である。【結論】 心臓移植術後離床に影響を与えている要因は手術時間、麻酔時間、術後心係数 、低心拍出症候群の有無、挿管期間、局所陰圧閉鎖療法の使用の有無であった。O55-3 人工呼吸器離脱に難渋した心臓術後患者への継続的なリハビリテーションの試み大阪大学医学部附属病院 集中治療部中村 秋子、稲垣 範子、佃 順子【はじめに】術前からの身体活動能の低下、術後の心機能低下に伴うカテコラミンや人工呼吸器離脱困難を認める“遅延群”に該当する患者への看護介入を3 期に分けて振り返り、看護のポイントを検討した。【看護の実際】透析症例である60代女性患者は、AVR施行後MS による肺高血圧の状態が続き、今回MVR 施行後ICU入室。カテコラミン4 剤とIABPによるサポートが必要な状況で、持続透析も開始された。敗血症や胃出血等の合併症を認め、入室期間は約4ヶ月に及んだ。1期:術後急性期(手術直後からIABP 抜去まで一週間)重症管理に加え、術後一日からROM、ポジショニング、ストレッチが看護師主体で開始された。2 期:急性期・リハビリ停滞期(術後約12 週間頃まで)血行動態は安定せず、合併症治療や処置のため鎮静剤・カテコラミンの増減を繰り返した。毎日のカンファレンスでリハビリの実施や範囲が検討され、術前の身体活動能も考慮して“ADL の向上と端坐位の保持”がこの時期の目標と設定された。PTの介入も始まるが不安・苛立ちによりリハビリに対する拒否を強く示し、精神的支援や薬物治療が開始された。数分であっても端坐位を継続させるため、積極的な介入がされ、家族の治療参画を図る調整など看護師の役割が拡大した。3 期:回復への準備期(退室まで)“ 早く孫と会いたい”など自発的な対処の意欲が見られ、看護計画でも家人との面会方法に様々な工夫と提案がされた。間欠透析への移行、食事の開始、車椅子での散歩ができるようになり、ADLの拡大と共に精神状態も安定を見せた。【考察】人工呼吸器だけでなくCRRTやVAC など、必須の治療による拘束状態にもあったが、治療も離床も中断することなく並行して実施できたことが、離床の拡大へとつながったと言える。遅延群に該当する患者の離床計画には、術前の身体活動能を考慮した目標を多職種で共有し、2期3 期を家族と共に乗越えていくことが重要である。