ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-495-O51-4 日本外傷データバンクを用いた外傷患者における開胸心マッサージの有効性の検討東京医科歯科大学 医学部附属病院 救命救急センター遠藤 彰、白石 淳、大友 康裕【目的】外傷患者における開胸心マッサージの有効性について検討した。【対象と方法】2014 年12 月までに日本外傷データバンクに登録され、緊急室で蘇生が行われた症例を対象とした。転帰は生存退院とした。欠測値を多重補完し、開胸心マッサージ群(開胸群)を、年齡・性別・受傷年・時間帯・受傷メカニズム・病院前/ 病着時のvital sign・部位別AIS・ISSなどをもとに算出した傾向スコアをもとにマッチさせた通常蘇生群(閉胸群)と比較した。【結果】緊急室で蘇生を行った8345例のうち、2951例(35.4%)で開胸心マッサージが行われていた。マッチング後、開胸群と閉胸群共に1949例ずつを比較した。年齡(Median[1st , 3rdIQR])は52[34, 69]歳、ISSは34[25, 50]であった。95.4%が鈍的外傷で76.1%は来院時心肺停止であった。生存退院は開胸群1.1%、閉胸群2.9% で、開胸群が有意に低かった(p< 0.001)。サブグループ解析では腹部AIS≧ 4 の群(OR 0.8[0.2, 3.8])で腹部AIS≦3 の群(OR 3.2[1.9, 5.6])よりも転帰を改善させる可能性が考えられた(p for interaction = 0.104)。腹部AIS≧ 4 の患者のうち開胸心マッサージが施行されたのは52.6%であった。腹部骨盤AIS≧4かつ胸部AIS≦ 3で開胸心マッサージが施行された患者のうち大動脈遮断が併施されたのは57.2% であった。【考察・結語】開胸心マッサージは全体では予後を悪化させた。現在のガイドラインでは受傷機転と心停止時間が適応の項目とされているが、本検討では解剖学的要因が転帰に影響する可能性も示唆された。開胸の利点として蘇生と同時に胸部下行大動脈アクセスによる下流の一時的な出血コントロールが可能であることが挙げられるが、その施行率は高くなかった。O51-5 当院における肋骨骨折と肺炎の関係性についての検討日本海総合病院 呼吸器外科高森 聡、金内 直樹、渡辺 光、鈴木 香菜【背景】肋骨骨折後の肺炎がどのような背景因子によって生じるのかを検討した。【対象および方法】10年7月から15年6月までに当院を受診し胸部X線、CTを用いて肋骨骨折の診断で入院となった217例(男149 例.女68例.)を対象とした。そのうち硬膜外麻酔使用74 例、血胸合併98 例、気胸合併89 例、胸腔ドレーン挿入54例、脳卒中例30例(外傷性脳卒中14例、脳卒中既往16 例)、多発外傷105例であった。気管挿管に至ったのは3例で、内訳は、フレイルチェスト1例、膿胸術後1例、肺炎に伴うARDS1例であった。肺炎は、喀痰増量などの臨床所見を伴い、採血上感染徴候を認め、抗生剤による加療を開始したものと定義し、入院時検査で明らかに肺炎を合併している症例は除いた。方法は後ろ向き研究で、これらの背景因子を用いて単変量解析、多変量解析を行った。【結果】年齢の中央値65 歳[17~96 歳]。 在日数の中央値は9 日[1~388 日]であった。肋骨骨折の中央値の本数3 本[1~18 本]。肋骨骨折に対しては全例保存的加療で対処可能であった。肺炎合併は死亡退院 1 例を含む18例(0.083%)であった。肋骨骨折後の肺炎合併で、単変量解析を行うと血胸合併14 例(6.45%)、合併なし4 例(1.84%)で有意差を認めた(p=0.0054)。同様に気胸合併12 例(5.53%)、合併なし6 例(2.76%)と有意差を認めた(p=0.0253)。肋骨骨折3 本以上で肺炎合併15 例(6.91%)、肋骨骨折3本未満で肺炎合併3 例(1.38%)と有意差を認めた(p=0.0054)。多変量解析を行うと肋骨骨折本数3本以上(p=0.0345)、血胸(p=0.1024)、気胸(p=0.1250)と3本以上の肋骨骨折は独立した肺炎のリスク因子になるという結果であった。一方、性別、年齢、脳卒中例では有意差は認めなかった。【結語】肋骨骨折に関しては保存的加療で十分対応可能である。しかし、3本以上の多発肋骨骨折は肺炎感染の重要なリスク因子になる可能性があり、十分に注意して経過を観察する必要がある。O51-6 外傷性脳内出血症例と鑑別が困難であったAOAVMの検討北海道大学大学院 医学研究科 侵襲制御医学講座救急医学分野澤村 淳、水柿 明日美、村上 博基、方波見 謙一、前川 邦彦、小野 雄一、宮本 大輔、和田 剛志、早川 峰司、丸藤 哲【目的】外傷性脳内出血症例は被殻・淡蒼球や皮質下出血など画像上高血圧性脳内出血との鑑別が困難なことが多い。今回我々は重症頭部外傷患者における外傷性脳内出血の検討を行い、AOAVM(Angiographycally occult arteriovenous malformation)の文献的考察を加えて報告する。【方法】北海道大学病院先進急性期医療センターに救急搬送された外傷患者を対象とした。期間は2000年1月1日から2013年12 月31日まで、診療録ベースで検索した。【結果】32例の患者が抽出された。男性21 名、女性11名で平均年齢は44.6 歳であった。ISS 平均値が29.3 点と高値の高エネルギー外傷であった。SOFA スコアが平均5.07、来院時の急性期DICスコアが平均3.8であった。来院時GCSは平均8.4 点と16例が8点以下の切迫するDであった。9例で開頭血腫除去術が施行された。1 例で血腫の病理検査からAOAVM と診断した。【考察】AOAVM とは脳動静脈奇形のうち脳血管撮影検査で出血の原因となる異常所見を認めず、手術や剖検で血管腫を検出し得た症例をいう。AOAVMの発症様式は脳内出血・てんかんが多い。CTでは不均一に造影される高吸収域として認められ,MRIではT1・T2強調で低・無信号域の所見を認める。術前にAVMが認識できない状況で、手術を行わなければならないため、対処困難な出血に遭遇する危険があり、注意が必要である。【結語】若年発症例や高血圧の既往のない外傷性脳内出血症例では、AOAVMを鑑別診断の一つとして考慮し、開頭血腫除去術の際には血腫の病理検査を施行すべきである。