ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-486-O47-1 敗血症の新しいバイオマーカーとしてのプレセプシンの有用性の検討1)札幌医科大学医学部麻酔科学講座、2)札幌医科大学医学部救急医学講座高度救命救急センター、3)札幌医科大学医学部集中治療医学東口 隆1)、高橋 科那子3)、佐藤 昌太2)、数馬 聡3)、木井 菜摘1)、片山 洋一3)、吉田 真一郎3)、巽 博臣3)、升田 好樹3)、山蔭 道明1)【背景】敗血症の補助診断として、多様なバイオマーカーが存在するが、確実に診断できる検査は存在しない。本邦で2002年に発見され、2013年から測定可能となったプレセプシンは、食細胞が細菌等を貪食する際に、菌体とともに取り込まれたCD14が細胞内消化を受けて分泌される、可溶性N末端部からなるタンパクである。敗血症患者の血中で高値となり、病態とよく相関するといわれているが、腎不全時に高値となる報告もあり、診断的意義は確立していない。われわれは、プレセプシンの敗血症における有用性を明らかにするために後ろ向き観察研究を行った。【方法】2014年5月から2015年8月までの16か月間に当院ICUに入室した患者で、80人延べ120回の採血結果から、同時に測定されたプレセプシン、プロカルシトニン、CRP、Cr、eGFR値を記録し、年齢、性別、身長、体重、ICU入室理由となった疾患、敗血症の有無、SIRSの有無、入室時のSOFAスコア、APACHEII スコアをもとに、疾患の違い、非腎不全例における敗血症重症度の違い、非感染例における腎不全の有無で、プレセプシンの値が異なるかを検討した。また、敗血症診断におけるROC曲線を求め、AUCからカットオフ値を算出した。【結果】プレセプシン値の疾患別の比較では、敗血症群と腎不全群で有意に高値となった。非腎不全患者では、感染症を有しSIRS を呈する群ほど高値であった。非感染症例では、慢性腎不全のある患者で高値となり、急性腎不全の患者では高値の傾向はあるものの有意差はなかった。敗血症診断におけるプレセプシンのカットオフ値は803 μg/ml となり、先行論文に近い値となった。【結語】プレセプシンは敗血症の有無および重症度診断に有効であるが、慢性腎不全がある場合は信頼性が低いため判断には注意を要する。口演 47 感染・感染対策③ 2月14日(日) 11:00~12:00 第4会場O47-2 プレセプシンと腎機能との相関及び基準値の妥当性の検討大分大学 医学部附属病院 麻酔科・集中治療部大地 嘉史、佐々木 美圭、荻原 洋二郎、牧野 剛典、古賀 寛教、安田 則久、後藤 孝治、北野 敬明【はじめに】プレセプシン(Presepsin; PSEP)は細菌感染症に特異的なバイオマーカーとして近年注目されている.一方で,腎機能障害時は偽陽性を示すことが知られており,実際の臨床では腎機能を加味して評価する必要がある.今回,腎機能マーカー(血清クレアチニン値(Cr),血清シスタチンC 値(CysC))とPSEPの相関を検討し,従来のPSEPの基準値(500 pg/ml)の妥当性を検討した.【対象と方法】当院ICUで加療した43 症例,186検体(感染症有 12 症例,47 検体,感染症無 31 症例,138 検体)を対象とし,後方視的にデータを抽出した.PSEP と同時に測定したCr,CysC に対して単回帰分析を行い,相関を検討した.次にPSEP の基準値を500 pg/mlとして腎機能毎に感度,特異度を検討した.腎機能はeGFR 29ml/min 以下(高度障害群),eGFR30~59 ml/min(中等度障害群),eGFR 60 ml/min以上(正常群),CysC 1.1 mg/l 以上(CysC高値群),CysC 1 mg/l 以下(CysC正常群)にそれぞれ分類した.【結果】PSEP とCr,CysC はいずれも有意な相関を示した(Cr: p < 0.01,寄与率r2 0.28,CysC: p<0.01,寄与率r2 0.40).感度,特異度の検討では高度障害群で感度 90.9 %,特異度 14.3 %,中等度障害群で感度 80 %,特異度71.4 %,正常群で感度 71.4 %,特異度 91.7 % であった.CysCを用いた分類ではCysC 高値群で感度 76.5 %,特異度 60 %,CysC正常群で感度 80 %,特異度 98.1 %,陽性的中率 88.9 %,陰性適中率 96.9 %であった.【考察】PSEPはCr,CysCと有意な相関を示し,特にCysC とより強い相関を認めた.PSEP 500 pg/ml を基準値とした場合,腎機能障害が高度になるほど偽陽性率が増加するため,より腎機能を考慮した評価が不可欠である.一方で,CysCがほぼ正常値であれば,PSEPは従来の基準値で良好な感度,特異度を得られることから,腎機能評価にCysCを用いたうえでPSEPを利用することでバイオマーカーとしての有用性がより高まると考えられた.O47-3 侵襲性肺炎球菌感染症においてプレセプシンが陰性であった1 症例広島市立広島市民病院 麻酔集中治療科田窪 一誠、亀山 実季、青山 文、鷹取 誠【緒言】新規敗血症マーカーであるプレセプシン(以下P-SEP)はグラム陰性菌、陽性菌によらず敗血症診断に有用なマーカーであることが期待されている。今回当院救急外来を受診し敗血症が疑われた78 例のうち血液培養が陽性化した症例で起因菌別(グラム陽性菌 vs グラム陰性菌)のP-SEP、プロカルシトニン(以下PCT)の中央値比較を行ったところ、P-SEP(1043pg/ml vs933pg/ml)で有意差が認められなかったのに対し、PCT(1.31ng/ml vs 15.80ng/ml)では有意差が認められた(P < 0.05)。当院における検討でもP-SEPは起因菌によらず診断に有用なマーカーである可能性が示唆されたが、このうち血液培養で肺炎球菌が検出された患者においてPCT陽性であるにも関わらずP-SEPの上昇が認められなかった症例を経験したので報告する。【症例】47歳女性。意識障害、著明な項部硬直を主訴に当院救急外来を受診した。来院後の血液培養、髄液培養より肺炎球菌が検出され、DICを呈しており、侵襲性肺炎球菌感染症として治療を開始した。来院時PCT は10.73ng/mlと高値であったのに対し、P-SEPは257pg/mlとカットオフ値以下であり両者の値には乖離が認められた。【考察】P-SEP の上昇が認められなかった原因として、侵襲性肺炎球菌感染症における菌体内毒素であるPneumolysin やPAF(platelet activating factor)受容体が関与する重症化の病理学的機序とP-SEP の産生機序が異なることが考えられた。P-SEPは多くの場合敗血症診断において有用であると考えられるが、侵襲性肺炎球菌感染症が疑われた場合のP-SEP 値の評価には注意が必要である可能性がある。