ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-480-O44-1 重症急性膵炎の経過に影響を与える因子についての検討済生会千里病院 千里救命救急センター鈴木 銀河、佐藤 諒、高萩 基仁、森田 幸子、澤野 宏隆、林 靖之、甲斐 達朗【はじめに】重症急性膵炎は急性膵炎診断基準、予後因子、CT gradeによって診断される。しかし重症と分類される中には実際に集学的治療を必要としない症例も多い現状がある。今回我々は当センターで5 年半の間に経験した重症急性膵炎82 症例について臨床的検討を行った。【目的】重症急性膵炎の経過に影響を与える因子について検討する。【対象】当センターで2010 年4月1 日から2015年7月31日までに重症急性膵炎と診断した82症例。【方法】経過中に人工呼吸器管理を必要とした群としなかった群に関して、その要因について年齢、性別、採血データなど14項目を因子として多変量ロジスティック回帰分析を行った。【結果】人工呼吸器管理を必要とした症例は15例(18.3%)であった。そのうち28 日以内に死亡した例は2 例(2.4%)であった。人工呼吸器が必要となる要因について解析を行ったところ、年齢(p=0.030%、オッズ比1.456、95% 信頼区間(以下CI)1.036~2.046)、来院後24 時間時点での輸液量(p=0.029、オッズ比1.001、95%CI1.000~1.001)、血清総Ca濃度(p=0.019%、オッズ比0.034、95%CI0.02~0.569)、血小板減少率(p=0.040%、オッズ比1.232、95%CI1.010~1.503)が優位な因子として検出された。cut off 値はそれぞれ70.5 歳(感度40.0%、特異度76.1%)、7365ml(感度80.0%、特異度85.1%)、8.65mEq/L(感度71.6%、特異度73.3%)、35.2%(感度66.7%、特異度85.1%)であった。【考察】重症急性膵炎における炎症の強さが血清Ca 濃度や血小板減少率に影響している可能性があり、血管透過性が亢進することで必要な輸液量が増加し、呼吸状態が悪化することで人工呼吸器が必要となり易いものと考えられる。【結果】重症急性膵炎の経過中に人工呼吸器管理が必要かどうか予測する上で、年齢、輸液量、血清Ca 濃度、血小板減少率が有用かもしれない。口演 44 消化器② 2月13日(土) 13:30~14:30 第13会場O44-2 重症急性膵炎に対するrenal replacement therapyの効果 - 多施設観察研究-1)大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター、2)慶應義塾大学医学部、3)独立行政法人国立癌研究センター、4)広島市立広島市民病院、5)関西医科大学、6)東京大学医学部附属病院、7)飯塚病院、8)武蔵野赤十字病院、9)産業医科大学、10)自治医科大学附属さいたま医療センター澤野 宏隆1)、堀部 昌靖2)、佐々木 満仁3)、後藤 隆司4)、池浦 司5)、濱田 毅6)、尾田 琢也7)、安田 英人8)、真弓 俊彦9)、讃井 將満10)【背景】重症急性膵炎ではしばしば腎機能障害を合併してrenal replacement therapy(RRT)が施行される。また、サイトカインを除去する目的でnon-renal indication のrenal replacement therapy が施行されることがあるが、その有効性は確立していない。今回、44施設による後方視的多施設共同研究にて退院時転帰、感染合併率、侵襲的処置施行におけるRRTの効果を検討した。【結果】検討期間は2009年1月から2013年12月で、全1159例のうち全てのデータを収集できた1097例を対象とした。そのうちnon RRT群は838 例、non-renal indication RRT 群は97 例、renal indication RRT 群は162 例で、APACHE2 score はそれぞれ10.9±6.3、16.0±8.0、20.7±7.94(p<0.001)、予後因子数は2.4±1.9、4.2±2.2、5.5±2.0(p<0.001)とnon RRT群、non-renal indication RRT群、renal indication RRT 群の順に有意に重症度が高かった。死亡率はそれぞれ5.6%、16.5%、44.4%、感染合併率は8.2%、17.5%、30.9%、侵襲的処置施行率は13.1%、23.7%、36.4%といずれもnon RRT 群、non-renal indication RRT 群、renal indication RRT 群の順に転帰が不良であった。次にnon-renal indication症例におけるRRTの効果を評価するため、3群間で各種因子を調整し多変量解析を行った。その結果、non-renal indication RRT群はnon RRT群に対して死亡率でOdd 比1.64(95%CI 0.76-3.44; p=0.21)、感染合併率でOdd比1.03(95%CI 0.51-2.00; p=0.94)、侵襲的処置施行率でOdd比1.21(95%CI 0.65-2.23; p=0.53)といずれも有意差を示さなかった。【結論】今回の検討では重症急性膵炎の治療においてRRTはより重症例で導入されており、その転帰も不良であることが判明した。また、重症急性膵炎の転帰改善においてnon-renal indicationによる RRT導入の有効性は認められなかった。O44-3 感染性膵壊死の診断におけるプレセプシン測定の有用性金沢大学 附属病院 集中治療部関 晃裕、佐藤 康次、越田 嘉尚、野田 透、岡島 正樹、谷口 巧【緒言】感染性膵壊死は急性膵炎に続発して発症し、死亡率の高い重篤な病態である。しかし、感染性膵壊死の診断において白血球数, CRP, プロカルシトニン(PCT)など既存の炎症マーカーの有用性は低いと報告されている。そこで重症急性膵炎後に感染性膵壊死を発症した一例と未発症の一例において近年注目される新規感染症マーカーであるプレセプシンを測定し、その推移を比較し有用性について検討を行った。【症例1】76歳男性。胆石性膵炎にてICU入室。入室時の予後因子6 点、CT grade2 であった。入室時のプレセプシンは1150pg/mlであった。大量補液、膵局所動注療法およびCHDF にて加療を行い、全身状態は安定したがday7のプレセプシンは4480pg/mlと上昇した。以後プレセプシンは緩徐に低下傾向を示したが、day35においても1980pg/ml と高値であった。同時期に39度台の発熱を認め、感染性膵壊死を疑いEUS-FNA下に経胃的ドレナージ術を施行し、ドレナージ排液の培養よりEnterococcusを検出した。経過のPCTは入院時3.82ng/ml と高値であったが以後低下し、感染性膵壊死発症時は0.17ng/mlと陰性であった。【症例2】37歳男性。アルコール性膵炎にてICU入室。入室時予後因子3点、CTgrade3であった。 膵局所動注療法およびCHDF にて加療を行った。入室時のプレセプシンは846pg/ml であった。day3 にプレセプシンは1170pg/ml と上昇したが、day7には474pg/mlと入室時未満まで低下した。全身状態も良好であり、day12にICU退室し、一般病棟へ転棟、後日退院となった。PCT は入室後に2.15ng/ml まで上昇し、退室時には0.17ng/ml と陰性であった。【考察/ 結語】症例1 ではプレセプシン高値が持続し、感染性膵壊死を発症した。プレセプシンが速やかに低下した症例2と比較し対照的な経過となった。プレセプシンはPCTなどの既存の血液マーカーと比較しより鋭敏に感染性膵壊死を感知し、的確なドレナージ時期の指標となり得る可能性が示唆された。