ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-472-O40-1 高度救命救急センター初療段階におけるせん妄発症状況の実態調査(DTS・bCAMを使用して)1)山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター、2)亀田医療大学 成人看護学嶋岡 征宏1)、相楽 章江1)、田中 美知代1)、白石 知之1)、宇多川 文子1)、古賀 雄二2)【背景】ICUにおけるせん妄は急性疾患を原因とすることが多く、ICUに入室した時点ですでにせん妄を発症している可能性がある。しかし、救命センター初療段階におけるせん妄発症状況に関する調査は見当たらない。【目的】A 病院救命センター初療室に入室した患者を対象にせん妄評価を行い、救命センター初療段階におけるせん妄発症状況の実態を明らかにする。【方法】A 病院高度救命センター初療室を使用し、同意が得られた20 歳以上の患者80 名に対して初療室で、せん妄トリアージ評価としてDeliriumTriage Screen(DTS)を、せん妄評価としてBrief Confusion Assessment Method(bCAM)を使用し、前向きにせん妄評価を行った。両ツールの評価に必要なコミュニケーションが取れない患者は除外し、bCAM陽性群をせん妄ありと判断した。その後bCAM陽性群の特徴を調査するため、救急病棟入室後の経過をチャートレビューにより調査した。分析は、SPSSVer.20を使用して統計処理を行った。倫理的配慮として、実施施設の臨床研究センターの承認を得て実施した。【結果】bCAM陽性率は10%であった。bCAM 陽性群・陰性群の2 群間で検定を行った結果、[MAP]、[Ht]、[Hb]、[Alb]に有意差(p < 0.05)を認めた。bCAM陽性群のICU入室後の経過を調査すると、病棟入室後24時間以内にCAM-ICU陽性、不穏・危険行動の出現や抑制帯を装着した患者も認めた。【結論】救命センター初療段階でせん妄を発症している患者が存在することが明らかになった。せん妄を発症した患者は、ICU だけでなく初療段階からスクリーニングすることで十分な診断評価、適切な処置、潜在的な医学的疾患の早期発見につながることが示唆された。口演 40 鎮静・鎮痛・せん妄・早期離床③ 2月13日(土) 13:30~14:30 第11会場O40-2 集中治療室における急性腎傷害の発生とせん妄の関連についての検討1)JCHO 東京城東病院、2)東京医療保健大学大学院看護学研究科、3)武蔵野赤十字病院 集中治療室井手上 龍児1,2)、小林 圭子3)、楠 さくら3)【目的】急性腎不全に代表される腎機能障害は,せん妄の危険因子の一つと目されるが,明確な診断基準に基づく検討は未だ行われていない。本研究では,客観的な診断概念である急性腎傷害(Acute Kidney Injury: AKI)に着目し,ICUにおけるAKIの発生がせん妄のリスクを高めるかどうかを,後方視的コホート研究により調べた。また,ICUにおけるせん妄の危険因子の探索も併せて行った。【方法】単施設における2 年分の医療記録より,ICU 入室患者の背景や症状・処置に関する情報を収集した。事前の倫理審査において患者への直接的同意の取得は不要と判断されたが,施設のWebサイト上で研究計画を公開し,対象者が施設に連絡することによりデータの使用を拒否できる機会を設けた。収集した情報を基に,AKI および先行研究で明らかにされている既知の危険因子に関して患者を群別し,ICU入室後最初のせん妄発生をイベントとして,生存時間解析を行った。せん妄の危険因子の探索では,Cox 比例ハザードモデルに合計12 の変数を投入し,赤池情報基準(AIC)に基づく変数増減法を行った。解析にはR(ver. 3.1.2)を使用した。【結果】対象期間中のICU 入室患者のうち,115 症例が選定基準に合致し,そのうち43 例にせん妄が認められた。AKI の有無によるせん妄発生状況は図に示すとおりで,ログランク検定の結果,有意差は認められなかった(p = 0.69)。重度AKI(stage 3)とそれ以外に分けた場合も,両者の違いは有意ではなかった(p = 0.35)。既知の危険因子については,「年齢≧70歳」(p = 0.049)と「APACHE II score≧20」(p = 0.026)に有意差が認められた。Cox回帰による危険因子の探索では,「3次救急でのICU入室」(HR3.16, 95%CI: 1.42 ∽7.04),「APACHE II score≧ 20」(HR 2.37, 95%CI: 1.22∽ 4.58),「年齢≧70 歳」(HR 1.71, 95%CI: 0.92∽3.19の三つが抽出され,前二者が有意に高いハザード比を示した。O40-3 PRE-DELIRI modelにおけるせん妄予測の検討1)愛知医科大学病院 看護部、2)愛知医科大学病院 ICU、3)愛知医科大学 麻酔科学講座森 一直1)、黒澤 昌洋1)、中山 敬太2)、藤田 義人3)、畠山 登3)、藤原 祥裕3)【目的】 当院GICUは周術期集中治療室として周術期の患者を中心にケアを行っている。術後患者や呼吸不全、敗血症患者が多くせん妄発症には注意しなければならない。集中治療を受ける患者がせん妄となってしまうと、死亡率の上昇や入院期間の延長、長期的な認知障害、医療コストの上昇などを起こすため、CAM-ICUやICDSCによるスクリーニングが行われている。これらは、せん妄であるかどうかを判定するものであり、せん妄を予測できるものではない。今回、M van den Boogaard らが開発したPREDELIRICmodelを使用し、せん妄予測の検討を行ったため報告する。【方法】 2015年6月、7月にGICUに3日以上入室した患者で、CAM-ICU が陽性であった6 名と陰性であった6 名のPRE-DELIRIC model の予測率による比較検討した。PRE-DELIRIC model には10の要素があり、年齢、APACHスコア、入院形態、意識、感染、代謝性アシドーシス、鎮静剤使用、モルヒネ使用、尿素濃度、緊急入院から予測率を算出した。予測率は「DeliriumICU」アプリを使用し計算を行い、倫理的配慮としては、患者が特定されないようにデータ収集を行った。【結果】「DeliriumICU」アプリを使用し予測率を算出した結果、CAM-ICU陽性であった6名の予測率は41%、39%、71%、63%、31%、70%であり、CAM-ICU 陰性であった6 名の予測率は13%、18%、48%、5%、26%、15%であった。【考察】 CAM-ICU陽性であった6名と陰性であった6名とを比較した結果、陽性であった6名はすべて30%以上であったのに対し、陰性であった6 名の中で5 名が10%代であり、1名が48%であった。これらのことから PRE-DELIRIC modelによる予測率が高ければCAM-ICUが陽性となる傾向にあり、CAM-ICU陽性となる前から早期にせん妄予防の介入が出来ると考えられた。【結論】 PRE-DELIRI modelにおけるせん妄予測は、早期にせん妄予防の介入につながることが示唆された。