ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-469-O38-4 腫瘍随伴性抗NMDA受容体脳炎に対して集中治療管理を要した2 症例1)神戸大学附属病院 麻酔科、2)神戸大学附属病院 集中治療部白川 尚隆1)、三住 拓誉2)、藤本 大地1)、西村 太一1)、巻野 将平1)、長江 正晴1)、小幡 典彦1)、江木 盛時2)、出田 眞一郎1)、溝渕 知司1)【背景】抗NMDA受容体脳炎では無反応期、不随意運動期において意識障害や呼吸抑制を認める。今回我々は抗NMDA受容体脳炎と診断され、ICU管理を要した2 症例を経験したので報告する。【症例1】37 歳女性。気分高揚、多弁を主訴に近医で抗精神病薬を処方されるも、次第に傾眠傾向となり前医入院となった。入院翌日に呼吸停止を認め挿管管理となり、精査の結果右卵巣腫瘍を認め抗NMDA受容体脳炎が疑われ当院転院となった。転院当日に右卵巣摘出術を行いICU入室となった。翌日より大量グロブリン療法とジアゼパムなどを用いた抗痙攣療法を行ったが、呼吸抑制、意識障害が遷延し、7 日目に気管切開を施行した。30日目より意思疎通可能となったが睡眠時の無呼吸発作が遷延し、42 日目に呼吸器管理のまま一般病棟へ転棟となった。後日抗NMDA 受容体抗体陽性が判明した。【症例2】24歳女性。意味不明な言動を主訴に前医入院となり、抗精神病薬が開始された。SpO2低下を伴う痙攣発作を認め精査の結果前縦隔腫瘍を認めたため、抗NMDA 受容体脳炎が疑われ当院転院となった。転院当日に縦隔腫瘍摘出術を行い、術後呼吸器管理としICU入室となった。症例1 同様に免疫療法、抗痙攣療法を行ったが、無呼吸、意識障害が遷延したため人工呼吸管理とし8 日目に気管切開を施行した。意識状態の改善は認めなかったが、自発呼吸が徐々に出現し18 日目に呼吸器を離脱、22日目に一般病棟転棟となった。後日抗NMDA受容抗体陽性が判明した。【考察】抗NMDA受容体脳炎は比較的予後良好の疾患であるが、その中でもICU管理が必要なかった症例は予後良好と言われている。ICU管理が必要な理由として、遷延する意識障害、痙攣発作、呼吸抑制が挙げられる。痙攣発作は薬物抵抗性を示すことが多いが、本2症例はコントロール可能であった。呼吸抑制に関しては、症例1 では転院まで睡眠時のみ呼吸抑制が遷延したが、症例2 では遷延することはなかった。O38-5 脳出血患者の急性期血圧管理と予後の検討1)飯塚病院 救急部、2)飯塚病院 脳神経外科山田 哲久1)、名取 良弘2)、今本 尚之2)、村上 信哉2)【はじめに】脳出血の急性期治療において血圧管理は重要である。脳卒中治療ガイドライン2015 でも早期に収縮期血圧を140mmHg未満に下げることを考慮すると記載されている。今回当院で経験した脳出血患者の血圧と予後の関係を検討した。【対象・方法】当院脳神経外科に2010 年1 月から2013 年12 月までに脳出血で入院した患者は780例であった。その中で発症から24時間以内に当院に来院した患者で、発症前のmRSが2 以下で来院24 時間以内に手術を行なわず積極的治療を行った症例を対象とした。対象患者を退院時のmRSで予後良好(0~2)と予後不良(3~6)に分けて年齢、性別、身長、体重、BMI、既往歴、内服歴、来院時の血圧、来院1 時間後の血圧、来院6 時間後の血圧、来院24 時間後の血圧に関して診療録から後方視的に比較検討した。【結果】対象は459例であった。平均年齢(±標準偏差)は69.7(±12.8)であり、男女比は257:202 であった。統計学的に有意差があったものは、年齢、体重、BMI、腎機能障害、来院1時間後の拡張期血圧、来院6時間後の収縮期血圧と来院24時間後の収縮期血圧であった。その他の因子には有意差はみられなかった。【考察】脳出血患者の予後を左右因子は年齢、腎機能と来院6時間後と24時間後の収縮期血圧であった。6時間後や24時間後に血圧を下げていればよいのではなく、来院直後から降圧治療を開始し、その結果6時間後に血圧が下がっている症例は予後が良好と考えられる。【結語】脳出血患者の血圧管理に関して検討した。来院から6 時間以内に血圧を下げることが重要である。O38-6 可逆性脳血管攣縮症候群におけるプロポフォールの有効性1)東海大学 医学部 脳神経外科、2)東海大学 医学部付属 八王子病院 脳神経外科長田 貴洋1)、下田 雅美2)、堀田 和子1)、重松 秀明1)、松前 光紀1)【目的】可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)は雷鳴様頭痛と多発性の分節状の血管攣縮を特徴する症候群で、近年MRIによる診断能力が向上し、徐々に二次性頭痛の原因の一つとして知られつつある。しかし脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、posteriorreversible encephalopathy syndorome(PRES)などを合併することがあり、随伴する重篤な頭痛は難治性で治療に難渋することが多い。今回、脳虚血に対する脳保護効果や抗痙攣作用を有するpropofolを低用量持続投与し、その有効性を検討した。【方法】対象は、重篤な頭痛を伴ったRCVS の8 例で、propofol を低用量(30-50mg/hr)持続点滴し、その症状の変化や合併症などを含めて評価した。Propofol 以外の治療としては、脳血管攣縮に対してはくも膜下出血後の脳血管攣縮と同様に塩酸ファスジルやシロスタゾール、高血圧に対してはニカルジピンなどのCa blocker、鎮痛剤としてはマグネシウム製剤の静脈点滴やNSAIDsなどを使用した。【結果】症例は26 歳から52 歳で、男性1 例、女性7 例で産褥期発症が3 例であった。片頭痛の既往が3 例認めた。雷鳴性頭痛以外の症状としては、てんかん発作が2例、TIAが2例であった。画像所見はMRIでPRESが2例、cortical SAHが1例認め、MRAではほぼ全例に中大脳動脈、後大脳動脈を中心に多発性、分節状の脳血管攣縮を認めた。TIAを繰り返す例もあったが、脳梗塞いたる症例はなかった。白質病変の増加は認めたが、再出血などの合併症はなく、全例で良好な結果を得た。鎮痛に関しては、マグネシウム製剤やNSAIDsでの効果は一過性で、再発を来たす傾向にあった。一方、propofol 投与例では、全例で痛みの軽減を認め、半数例で頭痛の消失を得た。【結論】propofol はRCVS の脳虚血に対する脳保護効果や抗痙攣作用に加え、随伴する難治性で重篤な頭痛に対しても良好な効果を示した。RCVSに対しpropofolの低用量持続投与は有効な治療法と考えられた。