ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-465-O36-4 妊娠中に皮膚筋炎に伴う急性間質性肺炎が発症した一例関西医科大学附属枚方病院麻酔科総合集中治療部正司 智洋、梅垣 岳志、穴田 夏樹、安藤 亜希子、右馬 猛生、甲斐 慎一、岡本 明久、西 憲一郎、廣田 喜一、新宮 興【要旨】妊娠経過中の皮膚筋炎に伴う間質性肺炎を発症した報告は僅かである。今回、妊娠後期に皮膚筋炎に伴う急性間質性肺炎を発症し妊娠継続が困難と判断した症例を経験したので報告する。【症例】これまでに3 回分娩されているが特に妊娠経過に問題はなかった。妊娠28週より労作時の呼吸困難を自覚するようになった。妊娠30 週に急速に呼吸困難が増悪し入院となった。roomair でSpO2 90% で両下肺野に捻髪音をみとめ、KL-6 986 と上昇していた。胸部CT では両肺に気管支血管束周囲の浸潤影、汎小葉性スリガラス影、結節の広がりがあり間質性肺炎を指摘された。CK 26、ALD 7.4 でありclinically amyopathic dermatomyositis(CADM)を疑った。症状の増悪が短期間に進行性に認められたためステロイドパルスがすぐに開始された。ステロイドパルス2日目にはHugh-Jones class V となり、免疫抑制剤の投与が回避困難と予想されたため緊急帝王切開を行った。胎児は1550g、Apgar 8 点/9点であった。ステロイドパルスによる症状改善を認められず、また、CT 上間質影は増加したため免疫抑制剤(シクロスポリン、シクロホスファミド)治療が開始された。抗ARS抗体陽性、抗Jo-1抗体陽性であったため後に間質性肺炎先行型の皮膚筋炎と判断された。免疫抑制剤開始二週間後には間質性肺炎の陰影改善傾向が確認された。この頃より酸素投与減量が可能となり現在免疫抑制剤による治療が継続されている。【考察】皮膚筋炎における間質性肺炎の予後因子として抗ARS抗体陽性は良好とされている。ただし、急速に進行する間質性肺炎では呼吸器症状発現から1 から2ヶ月の間に致死的転帰に至る可能性があることを常に念頭に置いて治療にあたる必要がある。妊娠経過中に皮膚筋炎に伴う間質性肺炎の発症を疑った場合、発症早期に妊娠継続の中止と早期の免疫抑制剤治療開始が母体救命に必要な判断となることが考えられた。O36-5 妊娠関連の非典型溶血性尿毒症症候群(atypical HUS)の1 例1)旭川医科大学病院 卒後臨床研修センター、2)名寄市立総合病院 救命救急センター、3)旭川医科大学病院 救命救急センター菅原 梨香1)、丹保 亜希仁2)、川田 大輔3)、中嶋 駿介3)、柏木 友太3)、小林 厚志3)、西浦 猛3)、岡田 基3)、小北 直宏3)、藤田 智3)非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は,志賀毒素によるHUS とADAMTS13 活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)以外の血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy; TMA)で,微小血管性溶血性貧血,血小板減少,急性腎障害を3主徴とする疾患である。今回,周産期に発症したaHUSを経験したので報告する。【症例】32歳女性(経妊0回)。妊娠36週0日,体調不良を自覚したが受診しなかった。36週3日,前期破水のため前医入院,同日経膣分娩に至った。分娩後,弛緩出血となり出血性ショックを来し輸血,子宮動脈塞栓術を施行した。血液検査では溶血性貧血,血小板減少,肝酵素上昇を認めた。また,無尿となり持続血液濾過透析が導入された。周産期における肝酵素上昇,溶血性貧血,血小板減少よりHELLP症候群,急性妊娠脂肪肝の疑いで集中治療室管理となったが,改善が乏しいため産褥3日目に当院へ転院搬送となった。当院血液検査でも溶血性貧血,血小板減少,肝酵素上昇,腎不全,播種性血管内凝固(DIC)を認めた。血液検査及び周産期であることを考慮しHELLP症候群,急性腎不全,DICと診断し,持続血液濾過透析,輸血療法などの支持療法を開始した。しかし,治療開始後も全身状態や検査所見の改善に乏しく,HELLP 症候群としては病状が遷延している印象であった。溶血性貧血,血小板減少,腎障害からTMA と考え,血漿交換・ステロイドパルス療法を施行した。計7回の血漿交換を施行し,溶血性貧血,血小板数は徐々に改善を認め,産褥20日目に集中治療室退室となった。産褥23日目より尿量が増加し,産褥30日目に血液透析を離脱,産褥51 日目に退院となった。TMA から疾患を鑑別した結果,ADAMTS13 活性低下はなく,志賀毒素も陰性であり,aHUS と診断した。周産期に溶血性貧血,血小板減少,急性腎不全を来す疾患としてaHUSも念頭に置き,適切な施設での早期治療介入が必要である。O36-6 過去3 年間に集中治療管理を要した周産期患者の検討東京医科大学 麻酔科学分野柿沼 孝泰、山本 亜矢、西山 遼太、沖田 綾乃、清川 聖代、金子 恒樹、浜田 隆太、西山 隆久、今泉 均、内野 博之【はじめに】近年の我が国の周産期医療では、厚生労働省より母体安全の提言がなされるなど、周産期妊産婦死亡の減少が掲げられている。欧米では周産期合併症患者は集中治療管理を要することが多く本邦でも同様と考えられ周産期死亡を予防する上で集中治療の果たす役割は大きい。今回我々は、当院で過去3年間に周産期に集中治療管理を受けた症例について検討したので報告する。【対象】2012 年4 月から2014 年3月までの3 年間に当院で集中治療室管理となった周産期症例18例を検討した。【結果】症例は、前置胎盤6 例、常位胎盤早期剥離3例、弛緩出血2例、先天性凝固異常症(プロテインC 欠乏症、プロテインS欠乏症)2例、産道裂傷1 例、子宮破裂1 例、敗血症1例、肺梗塞症1 例、深部静脈血栓症1 例であった。平均ICU 滞在日数は3.3 日、最長12 日、平均在院日数は17.9日、最長は59日であった。母体の予後は全て良好で、児の予後不良は全前置胎盤の1例のみであった。【考察】2010年から妊産婦の全例登録がはじまり4 年間で約200症例が集積され2013 年度は43 例妊産婦死亡が報告されている。原因は、産科的出血、脳出血・梗塞、羊水塞栓症、心血管疾患、肺血栓塞栓症、感染症と様々で、当院の集中治療管理症例も多様であった。産科的DICなどの周産期合併症は、急速発症・進行性であるが適切な治療で母体予後は良好といわれる。当院においても適切な集中治療により、殆どの症例は3 日以内に症状改善し予後良好であった。【結語】当院における集中治療管理を要した周産期患者3 年間の検討をした。周産期合併症は様々であるが適切な治療で母体予後は比較的良好であった。