ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-458-O33-1 集中治療室における黄色ブドウ球菌菌血症患者の予後因子の検討広島大学大学院 救急医学京 道人、木田 佳子、大下 慎一郎、鈴木 慶、山賀 聡之、廣橋 伸之、志馬 伸朗【背景】敗血症はICUにおける死因の多くを占める.その中でもMSSA,MRSAといった黄色ブドウ球菌は主要な原因菌として重要である. しかし予後因子については十分な検討が行われていない.【目的】ICU患者における黄色ブドウ球菌菌血症(以下SABと略す)の予後因子について検討すること.【方法】当院ICUにおける, 2013 年1 月から2015 年6 月の血液培養検査で黄色ブドウ球菌陽性であった患者32名について, 年齢,性別,既往歴,血清学的検査,APACHE II スコアと予後との相関について後方視的に検討した.【結果】男性22名女性10名,平均年齢61±16歳,ICU在室日数22±21日であり,14名(44%)が死亡した.感染focusは,筋・軟部組織が最も多く9 例(28%), 肺・胸腔7 例(22%), 骨5 例(16%), 中心静脈カテーテル4 例(13%), 皮膚, 心臓, 腹腔が各3 例(10%)であった.経過中に3例(10%)が脳梗塞を合併した.死亡群は生存群に比べ,入室時PT-INR 高値(p=0.001),APACHE II高値(p=0.027)で,院内発症が多く(p=0.029),抗菌治療期間が短く(p=0.003),de-escalationが少なく(p=0.0037),DM合併が少なかった(p=0.009). 単変量解析では, PT-INR > 1.42%, APACHE II > 29.5,院内発症,肺・胸腔感染症が,有意な予後不良因子であった.年齢, 性別で補正した多変量解析では, PT-INR> 1.42(HR, 41.7; 95%CI, 5.00-333; p=0.0005),肺・胸腔感染症(HR, 10.0; 95%CI, 1.59-62.5; p=0.014)が,独立した予後不良因子であった.【結語】PT-INR> 1.42,肺・胸腔感染症は,ICU患者におけるSAB の予後不良因子となる可能性が示唆された.口演 33 感染・感染対策① 2月13日(土) 11:00~12:00 第8会場O33-2 2015年度の敗血症性ショックのICU死亡の原因解析名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野海野 仁、山本 尚範、日下 琢雅、東 倫子、眞喜志 剛、田村 有人、江嶋 正志、沼口 敦、角 三和子、松田 直之【はじめに】敗血症性ショックの治療において,当講座では独自に作成した「敗血症管理バンドル」を診療の質の向上に役立てている。当講座はこれまで100%の敗血症性ショックを目標としてきたが,2015年度より急峻な死亡率の増加を認めた。敗血症性ショックにおけるPreventable Sepsis Death を後方視的に評価した。【方法と結果】2015 年4 月1 日から2015 年6 月31 日までに入室した敗血症ショック患者のうちICU 内で死亡した群に対して後方視的に解析した。2015年4月以降に敗血症性ショックとして6例のICU内死亡を認めた。年齢は,67.8±8.2歳,男女比は3:3であった。平均APACHEIIスコアは36.0±7.0,平均在室日数は29.0 ±17.0 であった。感染臓器としては,腹部臓器障害が2 例,軟部組織感染が2例であり,深部真菌感染症が6 例中2例に認められた。ICU在室日数の優位な延長が確認された。当講座の「敗血症診療バンドル」のブランチ遵守評価では,殺菌的抗生剤の併用,乳酸クリアランスおよびドブタミン使用禁止の項目で各1例,腎代替療法適応評価,早期経腸栄養および早期リハビリテーションの項目で各2例に不履行を認めた。これらの患者においては,好中球/ リンパ球数比が持続高値を示しており,自己免疫を回復させることができない状況にあった。【結語】敗血症性ショックの治療成績が低下した原因として,管理背景を考察した。これらは,免疫機能が回復しにくいことを特徴とし,原因微生物の分布に差異を認め,死亡率の上昇に関与したと評価された。O33-3 名古屋大学救急・集中治療部における侵襲性アスペルギルス感染症の現状と未来名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野塩屋 悠斗、東 倫子、海野 仁、日下 琢雅、山本 尚範、田村 有人、江嶋 正志、角 三和子、沼口 敦、松田 直之【はじめに】侵襲性アスペルギルスは,免疫低下状態に合併する傾向があり,予後は原疾患の治療に大きく影響を受ける。侵襲性アスペルギルス感染の集中治療管理を評価し,今後の展望を明確とする。【症例】24年5月から27年5月までの3年間で,侵襲性アスペルギルス症として6 例を診断した。症例は,男性5 例,女性1 例の平均年齢62.8(51~74)歳であり,基礎疾患は,血液腫瘍3例,重症肝不全3例だった。血液疾患の3例は,好中球減少症,ステロイドや免疫抑制剤の投与中などを満たしていた。一方,肝不全の3例は上述の項目を満たさず,明確には免疫抑制状態と予測できなかった。全例において,β-Dグルカンは陽性であり,診断時に153±68 pg/mLであった。胸部CT像では,結節影,浸潤影,空洞病変,スリガラス状陰影などの多彩な画像所見だった。全例にボリコナゾールを投与し,さらに3例にはキャンディン系を併用した。しかし,症状の改善は認めず,ICU滞在の30.8±12日に全例が死亡退院となった。【結語】当講座の管理において,侵襲性アスペルギルス症の治療成績は極めて悪いと評価された。アスペルギルスに対して,抗真菌薬の効果を最大限に引き出す方法を考案する必要がある。現状のガイドライン治療のレベルでは,重症侵襲性アスペルギルス症を根治できないと評価した。重症肝不全は,アスペルギルス感染症のリスク因子になると評価した。