ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-456-O32-1 小児のVeno-arterial extracorporeal membrane oxygenation(V-A ECMO)における心房/ 心室ベントに関する検討1)静岡県立こども病院 循環器集中治療科、2)静岡県立こども病院 循環器科、3)静岡県立こども病院 心臓血管外科赤木 健太郎1)、三浦 慎也1)、中野 諭1)、濱本 奈央1)、大崎 真樹1)、小野 安生2)、坂本 喜三郎3)【背景】小児におけるveno-arterial extracorporeal membrane oxygenation(V-A ECMO)は、循環不全時の機械的補助手段として確立しているが、心機能が極めて悪い場合などには心室が流入血液を処理しきれず左室減圧(ベント挿入)が必要となる。しかしながらECMO 補助中のベント挿入に関する報告はほとんどない。【目的】ベント挿入が必要となったECMO 患児の臨床像を明らかにする。【方法】2007 年8 月から2015 年6 月に当院循環器集中治療室でV-A ECMO 管理を行った小児心疾患患児75 例のうち、左房もしくは左室へのベント挿入を要した例につき後方視的に検討した。【結果】ベント挿入は7 例(9%)、年齢2 歳2ヶ月(生後0 日~20歳)、体重9.3kg(2.4kg~47.3kg)。疾患は無脾症候群、心室中隔肺動脈閉鎖、両大血管右室起始症、大動脈弁狭窄症、Ebstein 奇形、心筋炎2例で、ECMO補助時の血行動態は二心室循環5 例、単心室循環2 例であった。ECMO導入理由は人工心肺離脱困難2 例、循環不全3例、ECMO-CPR2 例。ECMO 導入からベント挿入までの時間は4 日(0~15 日)。ベント挿入理由は心室機能低下5 例、重度肺うっ血2 例。挿入部位は左房2例、左室5 例(うち1 例は右室型単心室)。2 例でベント追加のため開胸ECMOへの切り替えを要した。ECMO 離脱は2 例(0日目、4日目にベント追加)、LVAD への変更も2例(後に1例は離脱、1 例は心移植)、3 例が死亡。肺うっ血進行のためベントを追加した2 例はいずれもECMO離脱不可であった。合併症として左房ベント内の血栓を1例に認めた。【考察と結語】ECMO補助中に約10%で心房/心室ベントの追加を要した。また単心室血行動態であっても心室ベントを要するケースがあった。ベント追加後にECMO離脱できた症例は早期に介入が行われていたが、肺うっ血の臨床所見が進行してから追加した症例は離脱不可であった。心機能低下が著しい、もしくは改善が乏しい場合、時期を逸せずにベント追加を判断するべきである。口演 32 小児・新生児② 2月13日(土) 13:30~14:30 第7会場O32-2 静肺コンプライアンスはECMO離脱の指標になりうる~新生児呼吸不全のECMO 中にCstを測定した4 例の経験~長野県立こども病院総合周産期医療センター新生児科小田 新、中村 友彦ECMOはその侵襲性の高さにより、早期導入、早期離脱を決断することが肝要である。ECMO導入基準は様々な指標が提唱され、コンセンサスを得ているが、離脱基準については明確なものは無い。当科では原則的に72時間という期限を設定してECMO管理を行っていた。今回、ECMO施行中に、ベッドサイドで呼吸機能検査装置を用い、経時的に静肺コンプライアンス(Cst)を測定し、ECMO 離脱の指標になりえた症例を経験したので報告する。2011 年9月から2015年8 月までの間に、4例が出生後の呼吸不全のためにECMO を導入された。呼吸不全の原因疾患は羊水過小に伴う肺低形成(Potter症候群)が2例、先天性横隔膜ヘルニアが1 例、胎便吸引症候群が1 例であった。それぞれHFO+NO 使用下に、Oxygenation Index が40 以上で改善が見られないため導入となった。1 例目の左横隔膜ヘルニアの症例はCst が0.05ml/kg/cmH2O(以下単位省略)と極めてCstが悪く、72時間後も改善が無く、死亡した。2例目はPotter症候群で、経時的にCstの改善が認められ、48 時間後にCst が0.22 となり離脱できた。3 例目の胎便吸引症候群の症例は積極的な呼吸理学療法により72 時間後にCstが0.32まで改善し離脱となった。4例目のPotter症候群の症例は72時間後にCstが0.19まで改善し離脱を試みたが、離脱できなかった。しかし経時的にCstの改善がみられていたことから、例外的に96 時間までECMO 管理を延長し、Cst が0.24 となり離脱に成功した。離脱できた3 例は現在も生存している。症例数は少なく、呼吸ECMOに限定してはいるが、ECMO 離脱の客観的指標にCst が利用可能であることが示唆され、その数値は0.2 ml/kg/cmH2O以上がひとつの基準となりうると考えられた。O32-3 当院のECMO患者の長期フォローの現状と課題1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部、2)東京都立小児総合医療センター 臨床工学技士室宮下 徳久1)、新津 健裕1)、居石 崇志1)、渡邉 伊知郎1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、齊藤 修1)、清水 直樹1)、吉田 拓司2)【背景】小児ECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)患者の治療品質の向上のためには、退院時転帰のみならず長期転帰の分析が必要であるが、わが国においてそのまとまった報告はない。【目的】当院におけるECMO患者の長期フォローの状況についての現状を把握し、その問題点を探ること。【方法】2010年3 月当院開設以来のECMO 患者の診療録を後方視的に分析し、その離脱・生存例に対して1 年後のフォローおよび神経学的フォローの有無、発達心理検査や画像検査などの実施状況、後遺症の有無を検討した。【結果】ECMO 症例51例(2015年8 月現在においてECMO 離脱後1年以上経過している症例)。年齢の中央値6か月、ECMO 適応は循環25 例、呼吸16 例、ECPR(Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation)10 例。VV-ECMO 9 例、VA-ECMO 45 例(重複あり)。うち26 例がECMO を離脱し、生存退院した。8 例は1 年未満にフォローアップを逸脱し、残る18 例のうち発達、神経学的フォローを受けているものは11例、発達心理検査を受けたものは3例、頭部MRI検査を受けたものは6例であった。フォロー中、10 例は精神運動発達遅滞、麻痺、てんかんなど神経学的後遺症を有していた。【考察】当院において、ECMO患者のフォローについて極めて短期間でフォロー終了している症例が存在し、またフォロー方法についても統一されていない。逸脱例に高次機能障害などの神学的障害が潜在的に有している可能性、画像検査により器質的障害を見逃している可能性等、検討すべき点は多岐にわたると考えられた。小児ECMO患者の治療品質の向上のためにフォローアップ体制の統一が必要と考えられた。