ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-432-O20-1 アカクラゲ刺傷により高血圧性脳症を発症した5 歳男児金沢大学付属病院 集中治療部久保 達哉、余川 順一郎、相良 明宏、関 晃裕、北野 鉄平、佐藤 康次、越田 嘉尚、野田 透、岡島 正樹、谷口 巧【はじめに】日本では、沖縄に生息するハブクラゲ刺傷による死亡報告を認めるが、その他のクラゲ刺傷による重症患者の報告は少ない。今回アカクラゲ刺傷により高血圧性脳症を発症し、痙攣、意識障害を認めた患者を経験したので報告する。【症例】症例は5 歳男児。海水浴中にクラゲに刺された。受傷15 時間後、顔面の浮腫が出現し前医を受診した。アナフィラキシーの疑いで入院となり加療を受けた。受傷19時間後に痙攣が生じ、痙攣消失後も意識障害を認め当院に紹介搬送となった。来院時のバイタルサインは血圧166/137mmHgと高血圧であり、心拍数も150回/分と頻拍であった。意識レベルはGCSでE1V2M5と意識障害を認め、採血ではNa121mEq/Lと低Na血症を認めた。頭部MRIでは両側後頭葉にFLAIR で高信号域を認めた。以上により高血圧性脳症と診断し、血圧管理、低Na血症の治療および意識レベルのモニタリング目的にICU入室となった。Caブロッカーの持続静注により容易に降圧することができた。低Na血症に関しては3%NaClを用いて補正を行った。入院3日目に意識レベルの改善を認め清明となり、Ca ブロッカーも中止することができたため、入院4日目にICU を退室した。【考察】オーストラリア近海に生息するクラゲCarukia barnesi による刺傷では、交感神経刺激作用から急激な血圧上昇を生じることが知られている。しかし今回調べる限りではアカクラゲの有する毒素の生体に対する生理作用に関する報告は認めない。本症例では入院時の採血で、血中のアドレナリン、ドーパミンが上昇を認め、交感神経過緊張の状態にあったと考えられる。アカクラゲの毒素にはCarukia barnesiの毒素と類似した生理作用があることが推察された。結果、高血圧から高血圧脳症を発症し、痙攣意識障害を呈したと考えられた。【結語】アカクラゲの毒素で交感神経刺激され、急激な血圧上昇を来し高血圧性脳症を発症する可能性がある。口演 20 中毒・体温異常① 2月12日(金) 13:30~14:30 第12会場O20-2 一過性左心機能低下を併発した若年のIII度熱中症の1 例1)信州大学医学部付属病院 卒後臨床研修センター、2)信州大学医学部付属病院高度救命救急センター翁 佳輝1)、塚田 恵2)、一本木 邦治2)、小林 尊志2)、高山 浩史2)、嘉嶋 勇一郎2)、三山 浩2)、望月 勝徳2)、新田 憲一2)、今村 浩2)【はじめに】重度の熱中症では多臓器不全を来すことがあるが, 心筋障害を来す症例はまれである. 今回我々は熱中症を契機に逆たこつぼ型心筋症を併発した若年の熱中症症例を経験したので報告する.【症例】生来健康な15 歳男性. ラグビーの合宿中に気分不快を訴えて前医へ救急搬送された. 体温40℃, 腎機能不全, 肝機能障害,CK著明高値を示しており, III度熱中症の診断で補液にて加療開始された. しかし尿量は得られず, 肺水腫による呼吸不全が出現し,CHDFを開始した. その際, EF 20% 程度の心機能低下を認め, 循環, 呼吸補助目的に挿管管理の上, IABP 挿入され, 集中治療目的に当院へ転院搬送となった. 当院来院時に施行した心エコー上は心基部・心尖部以外の壁運動の著明な低下を認めた. 当院転院後徐々に尿量は得られるようになり, 第4 病日にCHDFを離脱, 心機能も次第に改善しEF 60%程度にまで回復したところで第6 病日にIABPを抜去, 第10 病日に抜管した. 第19 病日に非持続性心室頻拍が出現したが, 経過観察とした. 横紋筋融解症による筋力低下がありリハビリに難渋したが, 最終的には歩行可能なまでに回復し, 第23 病日に自宅退院となった.【考察】心機能低下について, ラットを用いた研究では外気温40℃以上の環境下では心房に比べて心室において, より高感度に心筋障害を来すとの報告がある. しかし, 本症例においては, 一度低下した心機能が正常にまで回復した経過, および壁運動異常の形態から熱中症に伴う逆たこつぼ型心筋症と考えた. 熱中症に伴う可逆性の心筋障害の症例は, 国内で4件, 国外でも3件の症例報告のみであり, 今回非常に稀な症例を経験したので報告する.O20-3 熱中症と診断された患者における血清procalcitoninの有用性の検討東千葉メディカルセンター児玉 善之、仲村 将高、島田 忠長、橋田 知明、小倉 皓一郎、平澤 博之【背景】夏場の熱発患者では,暑熱環境下にさらされた事実が先行した場合, しばしば熱中症と診断される.しかし,この熱中症と診断された患者の中には敗血症が潜在する可能性があり,敗血症の鑑別を常に考慮する必要がある. 一方, 敗血症の診断にはprocalcitonin(PCT)を測定する事が有用とされている.そこで今回,PCT 測定が熱中症患者における敗血症の検索に有用であるかどうかを検討した.【対象と方法】当施設において,2015 年7 月から8月までの期間に,初療時に熱中症と診断され入院加療を行った17 症例を後方視的に検討した.【結果】対象症例は全例暑熱環境にさらされた事実が先行していた. 年齢は63.7 ±21.3(mean ±SD)歳, 男女比は12:5 であり, 来院時の腋窩体温は38.0±1.3℃であった. 意識障害を呈したものは3例,shock を呈したものは3 例,急性腎不全,播種性血管内凝固症候群を合併したものはそれぞれ10例,4例であった.また,後に敗血症が判明した症例は4例(23.5%)であった.初療時,PCT 陽性群(カットオフ値:0.5ng/mL)において敗血症例は3例(42.9%)であり,PCT陰性群における敗血症症例数の割合(10.0%)との間に有意差は認められなかった(p=0.25).一方で, 初診時PCTのカットオフ値を2.0ng/mL と設定した場合には,PCT高値群の方が敗血症症例数の割合が有意に高かった(p=0.006).また,初療時PCT 値は, 敗血症症例が非敗血症症例に比較し有意に高かった(6.03±4.84 vs 0.41±0.48, p=0.002).【まとめ】当施設の検討でも熱中症と診断された患者には潜在的な敗血症が少なからず存在した. この敗血症を早期に鑑別するために,PCT値測定が有用であると考えられた.PCT 高値を呈する熱中症患者では, 感染症を早期に診断し, 抗菌薬治療などを早期に行う事が重要と思われた.