ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-430-O19-1 ICU に入室した血液悪性腫瘍患者の予後因子についての検討倉敷中央病院 麻酔科入江 洋正、大竹 孝尚、楠 宗矩、河合 恵子、新庄 泰孝、古谷 明子、生津 綾乃、日野 真彰、山形 淑、山下 茂樹【はじめに】血液悪性腫瘍患者のICUでの予後は、他疾患に比べ悪いと報告されている。その因子はいくつかの報告はあるが、当施設の特徴である造血幹細胞移植(HSCT)の影響については明らかにされていない。当ICUに入室した血液悪性腫瘍患者の予後因子についてHSCT の有無を踏まえ検討した。【対象と方法】2009年1 月1 日から2015年2 月28日までの6年2ヶ月の間に、血液内科入院中にICU 管理が必要となった血液悪性腫瘍患者137 例を対象とした(年齢61 歳[49-69 歳](中央値[四分位範囲])、男: 女=88 例:49例。急性白血病44 例、悪性リンパ腫41 例、骨髄異形成症候群24 例、多発性骨髄腫9 例、慢性白血病6 例、その他13 例)。予後因子をロジスティック回帰分析で検討した。【結果】ICU 入室原因は、呼吸不全67例(49%)、敗血症33例(24%)、腎不全12例(9%)、中枢神経障害6 例(4%)、心停止後6 例(4%)、その他13 例(10%)で、ICU 滞在期間は6 日[3-15 日]であった。ICU死亡、ICU 退室後の院内死亡、退院後死亡、生存はそれぞれ52 例(38%)、33 例(24%)、20 例(15%)、32 例(23%)であった。ICU 死亡の予後因子(オッズ比: 95% 信頼区間)は、人工呼吸器使用(14.5:5.16-40.5)、ICU 入室時の総ビリルビン1.2mg/dL 以上(3.27:1.30-8.20)、HSCT 後(2.63:1.03-6.72)であった。ICU 退室後の総死亡(退室後院内+ 退院後死亡)については予後因子を見出せなかった。【考察とまとめ】血液悪性腫瘍患者のICU での予後はやはり悪く、HSCTは独立した予後因子であった。他の因子はこれまで報告されているものと大きく変わらなかった。一方でICU退室後の死亡も多く、原疾患の増悪など、検討した因子以外が影響している可能性が考えられた。口演 19 重症度・予後評価 2月12日(金) 11:00~12:00 第12会場O19-2 ICU 入室を要した血液内科患者の予後規定因子に関する検討東京大学医学部附属病院 救急部・集中治療部上田 吉宏、前田 明倫、浅田 敏文、比留間 孝広、松原 全宏、土井 研人、中島 勧、矢作 直樹【背景】血液内科疾患を有した患者のうちICU への入室を要した患者の死亡率は40~60%と報告され、その予後は概して悪い。しかし血液内科疾患そのものの予後が急性期の予後とは必ずしも相関せず、可逆的な病態も存在しうる。急性期予後の予測因子を特定することで、適切な病状説明や集学的治療の適否の判断などに寄与できる可能性がある。【方法】2009年1月から2015 年5月の期間で当院のICU に入室となった4642 症例のうち、血液内科患者101 症例を対象としてretrospective study を行い、ICUmortality あるいは Hospital mortalityに関与する因子を検索した。【結果】ICU入室の要件となった主病態は呼吸器疾患(42例)、敗血症(24例)、心血管疾患(19例)の3つが多く、その他腎障害や中枢神経障害などが少数を占めた。101症例のICU mortalityは39.6%、Hospital mortalityは54.5%で、過去の報告と類似するものであった。生存群と死亡群で背景となる因子を解析したところ、年齢・性別・血液内科的な基礎疾患・移植歴の有無などに差は見られず、一方ICU入室時のAPACHEII・SAPSII・SOFAといった各重症度スコア、不全臓器の数、入院からICU 入室までの期間、入室の要件となった病態(呼吸器疾患と敗血症で予後不良)、人工呼吸管理の有無、入室日と5 日目のSOFAスコアの差(ΔSOFA)、出血イベントの有無、CRRT 実施の有無などが予後を規定しうる因子として挙げられた。これらの因子のうち、多変量解析ではSAPSII スコア(Odds Ratio 1.06;95% CI 1.01-1.13;P=.027)、不全臓器数(Odds Ratio 1.94;95%CI 1.02-3.71;P=.045)、Δ SOFA(Odds Ratio 1.57;95%CI 1.22-2.00;P< .001)の3因子がICU mortalityの予後因子として特定された。【考察】今回の解析により、背景疾患よりも病態悪化の原因やその重症度といったICU 入室時の状態、またはICU 入室後の経過が短期予後に影響しうると考えられた。O19-3 電子スピン共鳴装置を用いた周術期酸化ストレスのリアルタイム評価と術後重症度,合併症との関連大分大学 医学部 麻酔科学講座小山 淑正、松本 重清、荻原 洋二郎、牧野 剛典、甲斐 真也、安部 隆国、古賀 寛教、安田 則久、後藤 孝治、北野 敬明背景:周術期に生じる過剰な酸化ストレスの制御は予後を改善する上で極めて重要であるが,リアルタイムで酸化ストレスを評価する方法がないことが問題となっている.そこで我々は電子スピン共鳴(ESR)装置により,採血後すぐに結果の得られる,血漿ビタミンCラジカル(VCR)に注目してきた.血漿にDimethyl sulfoxide(DMSO)を添加すると検出されるVCR(VCR/DMSO)強度の測定により抗酸化物質であるビタミンC 濃度の推定が可能である.今回,術後ICU 入室となる患者の血漿VCR/DMSO の測定を行い,術後の重症度や合併症発生との関連を検討した.方法:倫理委員会の承認後,同意の得られた術後ICU入室予定の全身麻酔施行患者(40 名)を対象とした.手術前後に採血を行い,ESR 装置を用いて血漿のVCR/DMSO強度を測定した.統計解析は対応のあるT検定を用いて,術前後の測定値の比較を行い,Spearmanの順位相関係数を用いて,術前後のVCR/DMSO強度とICU入室日のSOFAスコア,APACHE IIスコア,National Surgical Quality Improvement Programが定義した術後30日以内の合併症の発生数の相関を検討し,p<0.05で有意とした.結果:VCR/DMSO強度は術後に有意に減少した.術前VCR/DMSO強度はICU 入室後の因子との相関は認めなかった.一方で,術後VCR/DMSO強度はSOFAスコア,APACHE II スコアと負の弱い相関(r=-0.33)を示し,合併症の発生数とは負の相関(r=-0.40)を認めた.結語:術後VCR/DMSO強度は減少,すなわち,手術により過剰な酸化ストレスが生じていると考えられた.術後のVCR/DMS 強度を測定することにより,ICU 入室患者の重症度,合併症の発生を予測できる可能性が示唆された.