ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-425-O16-4 血液浄化を要した急性腎障害におけるICU死亡予測因子1)東京大学 医学部 救急部・集中治療部、2)東京大学 医学部 血液浄化療法部土井 研人1)、山下 徹志2)、野入 英世2)、松原 全宏1)、石井 健1)、矢作 直樹1)【背景・目的】ICUにおける急性腎障害(AKI)は高頻度に発症し、強い予後規定因子である。血液浄化を必要とする重症例(dialysisrequiring AKI)では死亡率は極めて高いが、このような重症AKIにおける予後予測因子を明らかにすることを目的とした。【方法】2013年10月~2015年3月の期間、東京大学医学部附属病院ICUにて持続的血液濾過透析(CHDF)を必要としたAKI症例において、血液浄化開始時における臨床パラメーターおよび新規バイオマーカー(血漿NGAL, HMGB1, NT-proBNP)を測定した。【結果】98症例(男:女=76:22、年齢65.5 ±15.1才)がエントリーされ、ICU 死亡率は34.7%、院内死亡率は46.3%であった。測定された項目のうち、血清クレアチニンは生存者において有意に高値であったが(生存2.7[1.9-3.4]mg/dl vs 死亡 3.2[2.2-4.8]mg/dl)、新規バイオマーカーは両群で差がなかった。多重ロジスティック回帰分析にて検討したところ、SOFA スコア、乳酸値、PTINRがICU 死亡と有意な関連を示した。この3 項目の組み合わせによる死亡予測は、ROC 解析にて曲線下面積0.828(0.731-0.896)と高い精度を示した。【結論】Dialysis-requiring AKI の死亡予測においては、単一バイオマーカーではなく多臓器不全の重症度を反映するパラメーターの組み合わせが有用である。O16-5 KDIGO による診断基準を用いた心臓手術後急性腎障害の発症に及ぼす術前・術中因子についての検討東北薬科大学病院 麻酔科長屋 慶、伊藤 洋介、宇井 あかね、吉田 明子心臓手術後に急性腎障害(AKI)を発症した患者では合併症が多く死亡率が高い。今回我々はAKI の診断にKDIGO(KidneyDisease : Improving Global Outcomes)のクレアチニン基準を用い心臓手術後AKI発症の危険因子について後ろ向きに検討した。【対象と方法】2010 年1 月~2014年12月に待機的に施行された心停止下心臓手術のうち透析、再手術症例を除く247 例。術後30日以内のAKI発症の有無と術前因子(年齢、性別、身長、体重、Body Mass Index[BMI]、既往歴、内服薬、推算糸球体濾過量[eGFR]、ヘモグロビン[Hb]、左室拡張終期径/収縮終期径[LVDd/LVDs]、左室駆出率[LVEF])、術中因子(術式、手術時間、人工心肺[CPB]時間、出血量、尿量)について検討した。統計学的方法はカイ二乗検定、対応のないt検定、多重ロジスティック回帰分析を用いp<0.05を有意差ありとした。【結果】AKI発症は104例(42%)であった。AKI発症の有無で比較し単変量解析でp<0.1であった因子のうち年齢≧ 80、BMI≧ 25kg/m2、末梢血管疾患/糖尿病の有無、非ステロイド抗炎症薬内服、eGFR< 60mL/分/1.73m2、Hb < 10g/dL、LVDd > 55mm、LVEF < 50%、術式(冠動脈バイパス術と弁同時手術)、手術時間≧ 300 分、CPB 時間≧120 分、出血量≧500g、尿量<500mL について多変量解析を行った。AKI発症の独立した因子は年齢、BMI、eGFR、術式、出血量であった。【考察・結語】心臓手術後のKDIGO分類によるAKI 発症率は20~50%といわれている。病因として術前の心不全、腎機能障害に加えてCPBによる低潅流、低体温、血液希釈、塞栓、手術侵襲による全身性炎症反応、種々の薬剤の影響などが考えられている。高齢、肥満、術前からの腎機能障害、術式、術中出血量がAKI発症の独立した危険因子であることが示され、概ね文献的報告と一致するものであった。出血量に関しては輸液・輸血量や術中循環動態などについての検討を行っていないため今後の検討が必要と思われた。O16-6 小児持続的血液濾過透析に併発する、無尿の是非1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部、2)東京都立小児総合医療センター 臨床工学センター宮原 瑤子1)、居石 崇志1)、渡邉 伊知郎1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、齊藤 修1)、新津 健裕1)、清水 直樹1)、吉田 拓司2)【背景】小児集中治療において持続的血液濾過透析(CHDF)は重要な治療手段である一方で、実施期間中にはしばしば無尿を経験する。無尿に至ることが予後に影響するかどうかについてはわかっていない。【目的】東京都立小児総合医療センター集中治療室(以下、当院PICU)においてCHDF実施中の無尿とその転帰について検討する。【方法】平成22年3月1日から平成27年8月31 日までに当院PICUでCHDFを実施した15歳未満の患者につき診療録を元に後方視的に検討した。【結果】対象者は112 名(年齢(中央値)8か月(日齢1~14歳)、体重6.3kg(2~60.5Kg)、適応 腎適応 81、非腎適応 31例)で、ICU滞在日数、CHDF実施期間、PIM2スコア、の平均値(標準偏差;範囲)はそれぞれ、34.6(37.3;2~266)日、15.3(17.7;1~94)日、16.6(20.7;0.4~99.2)%であった。またICU退室時の死亡率は40/112(35.7%)であった。12時間以上持続する無尿を認めたのは66例(59%)で、ICU退室時にもCHDF を離脱できなかったのは4 例(うち新規導入は2 例)であった。無尿期間の有無と転帰に関するχ 2値は20, p < 0.005 と無尿期間がある群で有意に死亡数が増加していた。また、ロジスティック回帰分析では無尿期間とPIM2 スコアでオッズ比> 1 と転帰と有意な関連性を示したが、性別・年齢・CHDF 実施期間では有意な関連性は示されなかった。同様にICU 滞在日数に関しても解析を行ったが、全ての項目に関して有意な関連性は示されなかった。【考察】無尿期間の有無や長さがICU退室時死亡に影響を与える可能性が示唆された。無尿の交絡因子として基礎疾患、重症度、血管作動薬やその時点での体液バランスなどの影響が考えられ、利尿剤使用の意義についても検討が必要と考えられた。本発表では、これらに加え、pRIFLEなどの腎機能評価もあわせて検討をすすめる予定である。