ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-408-O8-1 間欠的騒音はラットモデルにおいてストレス反応を生じる1)筑波大学 人間総合科学研究科 救急・集中治療医学、2)筑波大学附属病院 看護部星野 晴彦1)、下條 信威1)、櫻本 秀明2)、卯野木 健2)、大内 玲1)、吉野 靖代1)、松石 雄二郎1)、Jesmin Subrina1)、河野 了1)、水谷 太郎1)【背景・目的】ICU環境下ではアラーム音、医療スタッフ間の会話など24時間にわたり騒音が発生する。その平均音量は57.6db、最大音量が90dbと報告され、患者にストレスを生じ、認知機能低下との関連が指摘されている。先行研究では、ラットに対し90db 程度の騒音を連続的に曝露させた際、ストレス反応の指標であるコルチコステロンの上昇、作業記憶の低下が示された。しかし、90db以下の連続音量では、ストレス反応が認められなかった。一方、ICU環境では最大音量はストレスになり得る音量だが、平均音量は低いため、生体のストレスになり得るかは不明である。本研究ではラットモデルにおいてICU 環境を想定した間欠的な騒音がストレス反応を生じるか否かを検討し、併せて作業記憶に与える影響も評価した。【方法】ラットを対照群、連続騒音群、間欠騒音群の3群に分け、防音箱内で24時間観察した。騒音の音量は先行研究から90dbとし、間欠的騒音のプロトコールは事前実験の結果に基づき、騒音30秒・無音3分を繰り返した。騒音曝露後に、作業記憶の変化をY-mazeテストにより評価した。その後、採血しコルチコステロンを測定した。結果】血中コルチコステロンは対照群と連続騒音群・間欠騒音群の間で有意差を認めた(p<0.05)。連続騒音群と間欠騒音群の間には有意差を認めなかった。3群間にY-mazeテストで有意差は認められなかった(p=0.41)。【考察】ラットのストレス反応の指標であるコルチコステロンの上昇は、間欠的騒音がストレス反応を生じることを示唆する。作業記憶において、本実験で有意差が生じなかった理由は、騒音の影響以外に行動テストの方法が不適切であった可能性がある。今後は他の行動実験手法も用いて記憶への影響を評価する。【結論】ラットモデルにおいてICU 環境を模した間欠的騒音は連続的騒音と同様にストレス反応を生じる。口演 8 鎮静・鎮痛・せん妄・早期離床① 2月12日(金) 13:30~14:30 第6会場O8-2 ミダゾラムは末梢性ベンゾジアゼピン受容体を介してマクロファージの免疫応答を調節する。1)大阪大学 医学部 附属病院、2)大阪大学 医学部 麻酔集中治療医学大田 典之1)、山本 俊介1,2)、堀口 祐2)、藤野 裕士2)、内山 昭則1)【目的】ベンゾジアゼピン系薬物はGABA受容体と関わる中枢性ベンゾジアゼピン受容体(CBR)を介して神経系に作用する。ベンゾジアゼピンの作用部位として末梢性ベンゾジアゼピン受容体が存在することが知られている。一方でベンゾジアゼピンは免疫細胞に対する作用も報告されているが、その作用メカニズムは不明であった。本研究ではマクロファージ細胞株(RAW264)を用いてミダゾラムの作用メカニズムを解析し、末梢性ベンゾジアゼピン受容体を介して作用することを見出した。【方法と成績】マウスのマクロファージ細胞株RAW264.7を対象とした。マクロファージをLPSで刺激すると細胞上の副刺激分子(CD80, CD86)の発現が上昇し、炎症性サイトカインのIL-6の産生が亢進した。マクロファージをミダゾラムで処理するとこれらの活性化の反応の全てが抑制された。マクロファージにはGABA受容体とPBRのmRNA の存在が確認された。次にマクロファージに対するCBR とPBR リガンドの反応を検討すると、ミダゾラムと同様の抑制性変化を起こすのはPBR リガンドであり、CBRリガンドでは生じなかった。最後にミダゾラムはPBR を介してマクロファージに作用することを分子レベルで証明するためにPBRに対するsiRNAをマクロファージに導入してPBR の発現を低下させたノックダウンマクロファージを用いた解析を行った。PBRノックダウンマクロファージではミダゾラムによる副刺激分子の発現と炎症性サイトカインの産生の抑制が解除された。【結論】本研究からベンゾジアゼピンが免疫細胞にCBR ではなくPBR を介して作用することが初めて明らかになった。O8-3 重症患者におけるスボレキサントのせん妄発症に与える影響1)自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科 集中治療部、2)東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻増山 智之1)、吉田 直人1)、飯塚 悠祐1)、小室 哲也1)、神尾 直1)、小林 雅矢1)、八木橋 智子1)、笹渕 裕介2)、讃井 將満1)【背景】重症患者において, 非ベンゾジアゼピン系不眠症治療薬であるスボレキサントのせん妄発症に与える影響は不明である. 今回我々は, 重症患者におけるスボレキサントとせん妄発症の関連について検討した.【方法】本研究は, 2015 年1 月から6 月, 当院ICUに72時間以上入室しせん妄評価をされた患者121 例を対象とした後向きコホート研究である. せん妄発症前にスボレキサントが投与された患者を投与群, せん妄発症前に投与されていない患者を非投与群とした.せん妄評価はCAM-ICUを用いた.【結果】対象121例の男女比は89:32, 年齢の中央値は72歳, 入室の67.8%は心臓血管外科術後, APACHE2スコアの中央値は18点,全体のせん妄発症割合は52.9%であった. スボレキサント投与群23例と非投与群98 例を比較した. 入室時における両群間の患者背景に有意差を認めなかった. ICU 入室後, せん妄発症までの人工呼吸器時間は投与群で長く, プロポフォールの使用頻度は投与群で高かった(それぞれ, 3.65 日 vs. 1.26 日; p=0.04, 60.9% vs. 25.5%; p < 0.01). 投与群で17.4%, 非投与群で61.2%の患者がせん妄を発症した(オッズ比 0.14[95% CI, 0.03-0.45]; p < 0.01). ロジスティック回帰を用い危険因子で補正しても, スボレキサントはせん妄発症の減少と関連を認めた(オッズ比 0.14[95% CI, 0.04-0.47]; p < 0.01). Kaplan-Meier法によるせん妄発症日数の中央値は,投与群が12.9日, 非投与群が4.58 日, logrank 検定による7 日時点での非せん妄患者割合はそれぞれ85.6%, 30.6%でスボレキサントはせん妄発症頻度を有意に減少させた(χ 2=17.3, P < 0.01).【結論】ICU入室患者において, スボレキサントはせん妄発症の減少と関連を認めた. 今後のさらなる前向き研究が望まれる.