ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-391-AW4-3 プレセプシン(可溶性CD14)は小児敗血症において細菌感染症に特異的とは言えない日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野平林 茉莉奈、澤田 奈美、伊原 慎吾、堀 智志、山口 順子、小豆畑 丈夫、木下 浩作【目的】近年敗血症に特異性の高いバイオマーカーとして、プレセプシンが報告された。成人救急医学分野では、救急外来受診時のプレセプシン値が敗血症患者の予後予測因子として有用である可能性が示唆されている。小児重症患者は、ウイルス感染による敗血症様症状を呈し、細菌感染症との鑑別に苦慮する症例をたびたび経験する。しかし、小児敗血症に対するプレセプシンの有用性に関する報告は少なく、我々はプレセプシンが小児敗血症において、入院時に細菌感染症とウイルス感染症を鑑別出来るかについて検討した。【方法】期間は2014 年6 月から2015 年7月の1年間とした。対象は、当ICUに入院した16 歳未満の小児で、ICU入院時に敗血症が疑われた症例とした。方法は診療録を後方視的に検討した。ICU 入院初日に測定したプレセプシンのカットオフ値は基準値の500pg/ml とした。また、血液培養陽性もしくは各種感染臓器の培養陽性の場合に、細菌感染症による敗血症とした。予後予測因子として、小児予測死亡率(PIM2:Pediatric index of mortality)を適用した。【結果】対象症例は19 例であった。プレセプシン陽性例は5 例で、平均値は725pg/ml(最小値 609 pg/ml、最大値 918 pg/ml)であった。そのうち、細菌感染症による敗血症と診断出来た症例はなかった。PIM-2 の平均値(最小値、最大値)は、プレセプシン陽性例は20.8%(2.6%、56.8%)、プレセプシン陰性例は7.4%(0.8%、46.5%)であった。【考察】プレセプシン陽性症例において、全例で細菌感染症は認めなかった。プレセプシンは小児敗血症症状を呈する患者に対し、細菌感染症に特異的とは言えず、ウイルス感染症との鑑別は出来ないと考えられる。しかし、プレセプシン陽性例は予測死亡率が高く、予後予測因子に成りうる事が示唆された。AW4-4 重症敗血症に対するストレス潰瘍予防の効果1)東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学、2)自治医科大学、3)東京医科歯科大学笹渕 裕介1)、松居 宏樹1)、Alan Lefor2)、伏見 清秀3)、康永 秀生1)【目的】Surviving Sepsis Campaign Guidelines において、出血リスクのある重症敗血症患者に対するストレス潰瘍予防が推奨されているが、重症敗血症患者での出血予防の効果を調べた研究はない。一方、ヒスタミンH2レセプター阻害薬やプロトンポンプインヒビターによるストレス潰瘍予防は肺炎やClostridium difficile 腸炎を増やすと報告されている。この研究の目的は重症敗血症患者に対するストレス潰瘍予防の効果を検討することである。【方法】厚生労働科学研究DPC データ調査研究班データベースを利用して2010年7 月から2013年3 月の期間526病院に重症敗血症で入院した70,862 名を対象とした。傾向スコアによってそれぞれ17,239 人の入院2日以内にストレス潰瘍予防を投与された患者と投与されなかった患者とをマッチングした。【結果】マッチングを行った群で比較すると、ストレス潰瘍予防を受けた患者は受けなかった患者と比較して30日以内の消化管出血が減少(0.4% vs.0.6%, p=0.019)したが、30 日以内の死亡は差がなかった(16.4% vs. 16.2% p=0.715)。一方ストレス潰瘍予防を受けた患者は受けなかった患者と比較して入院後肺炎が増加(4.0% vs. 3.3%, p=0.001)したが、Clostridium difficile腸炎の罹患は差がなかった(1.4%vs. 1.3%, p=0.346)。【結論】重症敗血症患者におけるストレス潰瘍予防による消化管出血のリスク低減効果はごくわずかであること、肺炎のリスクが増加することから、出血リスクのない患者におけるルーチンでのストレス潰瘍予防の必要性は乏しいと考えられる。