ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-389-AW3-3 全身炎症の早期における情動変化の解析~全身炎症モデルラットの扁桃体ドパミンの動態~1)名古屋大学 医学部 附属病院 麻酔科、2)名古屋大学大学院 医学系研究科 麻酔・蘇生医学市川 崇1)、西脇 公敏2)【目的】 敗血症は感染症を原因とする全身炎症反応症候群であり、脳を含めた様々な臓器に障害を引き起こす。敗血症性脳症(SAE:sepsis-associated encephalopathy)は他の臓器障害よりも早期に起こりやすく、その臨床症状の中心はせん妄である。せん妄の発生要因には情動の易変動性が関与し、情動反応の処理は、扁桃体が主要な役割を担うことが知られている。しかし、全身炎症の早期における情動変化のメカニズムは明らかになっていない。本研究の目的は、全身炎症を引き起こしたラットの扁桃体ドパミンの動態を調査し、SAEの病態の一端を明らかにすることである。【方法】 SD系雄ラットにLPS(10 mg/kg, 20 mg/kg)を1回腹腔内に投与し、全身炎症モデルを作成した。LPS 投与後、予め全身麻酔下にて扁桃体に埋め込んだprobeとマイクロダイアライスシステムを接続し、同部位でのドパミン量を経時的に測定した。またオープンフィールド試験にてラットの活動性を評価した。【結果】 扁桃体ドパミンの放出量は、LPS20 mg/kg 投与群において、投与直後より著しく増加し、120分後にピークに達した。その後、いったん減少したが、180 分後に再び有意な増加がみられ、緩やかに減少した。一方、対照群および10 mg/kg投与群ではドパミン放出量の増加を認めなかった。オープンフィールド試験では、LPS投与群(20 mg/kg)において対照群と比較して投与直後から有意に活動性が低下し、180 分後には全く活動しなくなった。【結論】 ラット扁桃体において、全身炎症の早期からドパミン放出量が増加し、ラットの活動性が低下することが明らかになった。SAE の早期における情動の易変動性には、扁桃体ドパミンの動態が関与している可能性がある。AW3-4 くも膜下出血後の Goal Directed Therapy1)東京女子医科大学東医療センター 救急医療科、2)山口大学 医学部 脳神経外科、3)長崎大学 医学部 脳神経外科、4)日本医科大学 医学部 高度救命救急センター、5)東京医科歯科大学 医学部 脳神経外科磯谷 栄二1)、米田 浩2)、堀江 信貴3)、横堀 將司4)、小幡 佳輝5)[背景]くも膜下出血後の循環管理としては、triple H療法が有名であるが、現在に至るまでこの治療法の検証は行われていない。[目的]多施設共同前向きコホート研究であるSAH PiCCO study は、2009年10月に始まり2012年4 月に終了し、現在その成果が英文雑誌上で紹介されている。SAH PiCCO study によって明らかとなったくも膜下出血後の循環動態に基づく新たなGoalDirected Therapyを提唱する。[方法]破裂脳動脈瘤の止血術後に、PiCCO plus モニタリング下に循環動態管理を行った。患者基本情報以外に、PiCCO plus モニタリングで得られる指標について検討を行った。これらのデータは、SAH PiCCO データバンクに登録された。[結果]本多施設共同研究には、9 施設から計204例の登録が行われた。59%の患者にはtriple H療法が施行され、35%の患者に遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia; DCI)が発症した。Triple H 療法施行群、非施行群間で、DCIの発症率に有意差はなかった(Tagami T. et al. Neurocrit Care 2014)。DCI 発症の危険因子を検索したところ、低心臓拡張末期容量(GlobalEnd-diastolic Volume Index; GEDI)、高末梢血管抵抗係数(Systemic Vascular Resistance Index; SVRI)、低心拍出量係数(CardiacIndex; CI)であった(Yoneda H. et al. Stroke 2013)。GEDI を822ml/m2 以上に保つことで、DCI の発症率は有意に減少し、GEDI を921ml/m2 以下に保つことで、肺水腫の発症率は有意に減少した(Tagami T. et al. Crit Care Med 2014)。[結語]以上の結果から、我々はtriple H 療法に代わる新たなgoal directed therapy として、くも膜下出血後にはGEDI を822ml/m2 以上921ml/m2 以下に保つことで、DCIの発症を抑制するとともに、肺水腫の合併を低下させることができると提唱する。