ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-378-ES1-3 経口気管挿管患者に対する口腔ケア・オーラルマネジメント兵庫医科大学歯科口腔外科学講座岸本 裕充 気管挿管中の患者では,気管チューブの通過によって喉頭蓋と声門の閉鎖が困難になるため,口腔や咽頭の汚染物が気管に垂れ込むリスクが高まる.加えて,気管チューブが留置されると粘液線毛機能や咳嗽反射が障害され,またチューブの表面に細菌性バイオフィルムを形成しやすく,広義の誤嚥性肺炎とも言える人工呼吸器関連肺炎(VAP)が成立しやすい状況にある. したがって,口腔環境の悪化はVAPの重大なリスク要因であり,逆に口腔衛生を改善させると,VAPの発症予防に繋がるとされている.しかしながら,経口気管挿管中の患者では,気管チューブやバイトブロックの存在のため,口腔ケアが容易でない,というジレンマがあり,有効な口腔ケアのプロトコールの確立が望まれてきた. 口腔の専門家からのアドバイスとして,VAPの発症予防を目的とした口腔ケアにおいては,以下を意識すべきである.1)歯垢と舌苔はバイオフィルムの性質を有し,浮遊している菌よりも抗菌治療の感受性が低い.したがって,バイオフィルムの破壊には,ブラッシングのような物理的清掃が化学的清掃よりもベターである.2)口腔清掃後に,口腔咽頭の奥までしっかり吸引することは,元々歯垢や舌苔に含まれていて,口腔清掃時に飛散した菌の回収に必須である.洗浄の併用は,口腔咽頭の浄化には有効な手技であるが,気管チューブの留置や鎮静による咳嗽反射の低下によって,汚染物の不顕性誤嚥を生じるリスクを考慮して,実施の是非を検討すべきである.3)唾液分泌の低下に加えて,経口気管挿管中は閉口できないためにバイオフィルムが蓄積しやすいので,スプレーによる加湿と,開口状態の口にマスクを装着したり,粘膜面に湿潤ジェルを塗布することによる蒸発予防による保湿を考慮すべきである.4)予定手術後にICUに収容される患者には「周術期の口腔機能管理」を推奨している.術前の専門的歯面清掃によって歯肉縁上の歯垢を完全に除去できる.また,動揺歯の抜歯や固定などの歯科治療を併施することで,口腔環境を整備できる. オーラルマネジメントとは,口腔ケアだけでなく,的確な評価に基づいて歯科治療や患者教育なども提供する,という概念であり,VAPの発症予防にきわめて有用である.