ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-375-LS31広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門救急医学/広島大学病院高度救命救急センター・集中治療部志馬 伸朗 抗菌化学療法の適正使用管理(antimicrobial stewardship)は、ほぼ全てのICU が抱える重要な課題である。ICU 患者の約半数が何らかの感染症を併発しており、予防投与も含めるとICU患者の3/4が何らかの抗菌薬投与を受けているとの報告がある[EPICII研究]。そのため抗菌療法が個々の患者診療並びに病院全体に及ぼすインパクトは十分に大きい。ICU患者は重症であるが故に、感染症治療を失敗しないことを第一義として広域/多剤抗菌薬投与が行われる傾向が強い。しかし周知の通り、抗菌薬は諸刃の剣であり、耐性菌感染症や抗菌薬関連有害事象(腎傷害、アレルギー、関連腸炎など)の危険因子となり、逆に生命予後を悪化させる危険性を孕んでいる。したがって、如何にすれば最小限の抗菌薬で最大の感染症治療アウトカムが得られるのかを常に意識しながら抗菌薬を使用しなければならない。 抗菌薬適正使用の鍵は、適切な初期抗菌薬の選択とde-escalationにあるだろう。本講演においては、とりわけICUで問題となる敗血症性ショックや人工呼吸器関連肺炎などを中心に、1)初期抗菌薬投与に際しての抗菌薬選択と処方のポイント、2)微生物学的検査およびバイオマーカ(とりわけプロカルシトニン)を利用した抗菌薬の早期中止あるいは狭域化のポイントについて、筆者の経験や実例を挙げながら検討してみたい。 本講演が、個々のICU における抗菌化学療法実践の改善のためのヒントとなることを願っている。ランチョンセミナー 31 2月14日(日) 12:20~13:20 第11会場ICUにおけるantimicrobial stewardshipの実践LS32名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野松田 直之【はじめに】集中治療のアイデンティティとして,炎症と自律神経を制御することは不可欠である。患者が既に全身性炎症や持続的交感神経緊張にある場合,集中治療の門が開かれる。炎症管理の一つとしての敗血症は,現在,病態生理学的解釈と観察管理項目の整理により,既に死亡しないレベルに当講座の理念は発展した。一方で,既に全身予備力が低下している場合,自力生活が困難な場合,治療費や生活能力不能を含めた社会的背景がある場合などの看取り領域にも,全身性炎症や敗血症が合併する。全身性炎症や敗血症の治療においては,初期診療の段階から急性腎傷害や血管内皮細胞傷害などの生体内後遺症を残さない管理が期待される。本講演では,炎症期間短縮のための病態生理学的管理バンドルを「2016年度版全身性炎症管理バンドル」として整理する。【講演内容】敗血症管理バンドルをMain 7(M7)& Sub 6(S6)として日本救急医学会で公表したのは2012年である。その後,2013 年にM13S6バンドルに増量し,管理における取捨選択とアセスメント記載などから,病態生理学的教育を再編成し,毎年の改定を重ねている。全身性炎症管理M13 & S6 バンドル2016として,以下のメインブランチ13 項目の解釈と考察を行う。1. BlueRevolution NAGOYA: 接触感染予防策への創造,2. 炎症と虚血の評価:Alert Cell activity・CRP 波形下面積理論,3.Early GoaldirectedNutrition NAGOYA経腸栄養ブランチ,4.殺菌的抗菌薬の使用ブランチ:起炎菌の定期的解析と抗菌薬のPK/PDの実施,5.原尿管理ブランチ:腎臓の病態生理に則った腎臓管理・肝腎エコー管理,6.血液浄化ブランチ:CHF・PMX-DHPの適正使用,7. 鎮痛・鎮静バンドル:MERIT NAGOYA trial,8.末梢気道開放バンドル:HFNC とBiPAP の有効利用・PEEP 実践主義,9.輸液適正化ブランチ:波形解析とエコーに基づく輸液管理,10.カテコラミン選択ブランチ:ノルエピネフリン使用基準・エピネフリンチェレンジテスNAGOYA 2016,11.血管内皮保護ブランチ:AT 活性アプローチ法・血小板数アプローチ・皮膚CRT アプローチ法・Passive Leg アプローチ法, 12. 超急性期免疫管理バンドルM7,13. 急性期リハビリテーション進展ブランチ。【結語】集中治療には,「急性期診断学」と「急性期治療学」の能力を発展させ,瞬間における対応改善能力を育成することが不可欠である。このために必要な病態生理学的事象と治療を,新規に整理する方針としたい。ランチョンセミナー 32 2月14日(日) 12:20~13:20 第12会場全身性炎症管理バンドル2016:病態生理学的診断と治療